サーンキヤ哲学とヨーガスートラ – 二つの流れが織りなす、深遠な世界観

ヨガを学ぶ

古代インドの深淵なる叡智、ヨーガ。その実践の根底には、長きにわたり培われてきた哲学的な思想が脈々と流れています。特に、ヨーガの重要な経典である『ヨーガスートラ』を理解する上で、切っても切り離せない関係にあるのが「サーンキヤ哲学」です。

まるで絡み合う二本の糸のように、サーンキヤ哲学とヨーガスートラは互いに影響を与え合い、深遠な世界観を織りなしてきました。この記事では、その複雑でありながらも美しい関係性を、初心者の方にもわかりやすく紐解いていけたらと思います。

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サーンキヤ哲学:世界を読み解く、古の地図

サーンキヤ哲学は、インド哲学の中でも最も古い学派の一つとされています。その起源は紀元前7世紀頃にまで遡るとも言われ、ヴェーダ聖典の奥義を解き明かす中で形成されてきました。

この哲学の根本にあるのは、「世界はどのように成り立っているのか?」という根源的な問いです。サーンキヤ哲学は、この問いに対し、極めて緻密な分析をもって答えます。

中心となる概念は、「プルシャ」と「プラクリティ」です。

  • プルシャ(純粋意識): 変化することのない、純粋な意識。観察者であり、経験の主体。

  • プラクリティ(根本原質): 物質世界の根源となるもの。三つのグナ(性質)から構成される。

 

三つのグナとは、以下の通り。

  • サットヴァ(純粋性): 光明、調和、喜びをもたらす性質。

  • ラジャス(活動性): 動き、情熱、苦しみをもたらす性質。

  • タマス(不活発性): 闇、無知、停滞をもたらす性質。

プラクリティは、この三つのグナの組み合わせによって、様々な現象を生み出します。私たちの心や身体、そして外界のあらゆるものは、このプラクリティの展開によって生じたものだと考えられているのです。

サーンキヤ哲学は、この世界を、プルシャとプラクリティの相互作用によって展開する壮大なドラマとして捉えます。プルシャは、プラクリティが生み出す世界を観察し、経験しますが、それ自体は変化しません。

 

ヨーガスートラ:実践への道標

一方、『ヨーガスートラ』は、2世紀頃にパタンジャリによって編纂されたとされる、ヨーガの実践に関する経典です。ここでは、心の働きを制御し、苦しみから解放されるための具体的な方法が示されています。

ヨーガスートラは、サーンキヤ哲学の世界観を基盤としています。つまり、プルシャとプラクリティの区別を明確に認識し、プラクリティが生み出す心の動き(思考、感情、感覚など)から、プルシャを解放することを目指します。

そのために、ヨーガスートラでは「八支則」と呼ばれる8段階の実践が提示されています。

  1. ヤマ(禁戒): 社会生活における倫理的な行動規範。

  2. ニヤマ(勧戒): 個人生活における内面的な浄化。

  3. アーサナ(坐法): 安定した快適な座り方。

  4. プラーナーヤーマ(調気法): 呼吸のコントロール。

  5. プラティヤーハーラ(制感): 感覚の制御。

  6. ダーラナー(集中): 心を一箇所に集中させること。

  7. ディヤーナ(瞑想): 対象への深い瞑想。

  8. サマーディ(三昧): 対象との一体化、至福の状態。

これらの実践を通じて、徐々に心の働きを鎮め、最終的にはプルシャ本来の純粋な意識を回復することを目指します。

 

二つの流れの交差点:苦からの解放

サーンキヤ哲学とヨーガスートラは、それぞれ異なる側面から、人間の苦しみからの解放を目指しています。

サーンキヤ哲学は、世界を構成する原理を理解することで、苦しみの原因を根本から断ち切ろうとします。「なぜ私たちは苦しむのか?」という問いに対し、それはプラクリティの働きによるものであり、プルシャは本来、苦しみとは無縁であると説きます。

一方、ヨーガスートラは、具体的な実践を通じて、心の働きを制御し、苦しみから解放される道を示します。サーンキヤ哲学の理論的な理解を基盤としつつ、八支則の実践によって、段階的に心の浄化を進めていくのです。

この二つの流れは、まるで川が合流するように、互いに補完し合い、深遠な世界観を形成します。サーンキヤ哲学は、ヨーガの実践に理論的な裏付けを与え、ヨーガスートラは、サーンキヤ哲学の理解を深めるための実践的な方法を提供するのです。

 

現代における意義:自己との対話

現代社会は、情報過多、ストレス、競争など、私たちを苦しめる要因に満ち溢れています。このような時代において、サーンキヤ哲学とヨーガスートラの教えは、私たちに「自己との対話」の重要性を示唆していると言えるでしょう。

日々の忙しさの中で、私たちはつい、自分の内面を見つめることを忘れがちです。しかし、サーンキヤ哲学とヨーガスートラは、私たちに立ち止まり、自分の心と向き合うことの大切さを教えてくれます。

  • 自分は何者なのか?

  • 何に苦しみを感じているのか?

  • どうすればその苦しみから解放されるのか?

これらの問いに対する答えは、私たち自身の内側にあります。サーンキヤ哲学とヨーガスートラの教えは、その答えを見つけるための、古くて新しい地図となるでしょう。

この深遠な世界観は、決して一朝一夕に理解できるものではありません。しかし、少しずつでも学びを深めていくことで、私たちの人生に新たな視点と、より深い安らぎをもたらしてくれるはずです。

まるで、暗闇の中で灯る、かすかな光のように。それは、私たち自身の内なる叡智を呼び覚ます、静かなる導きとなることでしょう。

 

 

ヨガの基本情報まとめの目次は以下よりご覧いただけます。

 

 

 


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。