ヨーガスートラの実践:日常生活にアヒンサーと智慧を織り込む

ヨガを学ぶ

ヨーガスートラは、数千年の時を超えて現代に生きる私たちに、心の静寂と真の自己の発見という普遍的なテーマを提示しています。この聖典は、単なる哲学的な探求の書ではなく、日常生活に智慧を織り込み、より調和のとれた生き方へと導く実践的な手引書です。特に、アヒンサー(非暴力)の概念は、ヨーガスートラの実践において重要な位置を占めており、日々の選択や行動を通して体現されるべき根本的な原則です。本稿では、ヨーガスートラの教えを日常生活にどのように応用し、アヒンサーの精神を育むことができるのかを、より深く考察していきます。

 

ヨーガスートラの基盤:心の静寂と自己認識

ヨーガスートラの核心は、「ヨーガとは、心の働きの止滅である(Yoga citta vritti nirodhah)」という一節に凝縮されています。この言葉は、心が絶えず変動し、過去の経験や未来への不安、無数の思考によって絶え間なく掻き乱されている状態から解放されることこそが、ヨーガの目的であることを示唆しています。心の静寂を得るためには、自己認識を深め、心の働きを理解する必要があります。

心の働き(Vritti)を理解することは、ヨーガスートラの実践における第一歩です。ヨーガスートラは、心の働きを以下の5つに分類しています。

  1. プラマーナ(正しい知識): 直接的な知覚、推論、信頼できる情報源からの知識など、客観的な真実に基づいた認識。

  2. ヴィパルヤーヤ(誤った知識): 誤解、錯覚、先入観など、真実とは異なる認識。

  3. ヴィカルパ(想像): 言葉や概念に基づいて作り上げられたイメージや思考。存在しないものを存在するかのように認識する。

  4. ニドラー(睡眠): 意識が活動を停止し、休息している状態。

  5. スムリティ(記憶): 過去の経験や知識を思い出すこと。

これらの心の働きは、私たちを苦しみや混乱に陥れる可能性があります。例えば、誤った知識は誤った判断を招き、想像は現実との乖離を生み出します。ヨーガスートラは、これらの心の働きを理解し、制御することで、心の平穏を取り戻すことを目指します。

 

アヒンサー:生命尊重の精神

ヨーガスートラにおいて、アヒンサーはヤマ(禁戒)の最初に挙げられています。ヤマは、他者との関わり方における5つの倫理的な指針であり、アヒンサーはその根幹をなすものです。アヒンサーは、単に物理的な暴力を避けること以上の意味を持ち、言葉、思考、行動において、あらゆる生命を尊重し、傷つけないことを意味します。

アヒンサーの実践は、自己認識から始まります。自分の内なる暴力性、例えば、怒り、憎しみ、嫉妬、自己批判といった感情に気づき、それらを手放す努力をすることが重要です。また、他者に対する批判的な思考や言葉を慎み、共感と理解の心を持つように努めることも、アヒンサーの実践に繋がります。

 

日常生活におけるヨーガスートラの実践:アヒンサーを体現する

ヨーガスートラの教えは、日常生活のあらゆる場面で実践することができます。以下に、具体的な例を挙げながら、アヒンサーの精神をどのように日常生活に取り入れることができるのかを考察します。

  • 食事: アヒンサーの観点から、菜食主義を選択することは、動物への暴力行為を減らすことに貢献します。しかし、菜食主義が必ずしもアヒンサーの実践と一致するわけではありません。例えば、環境負荷の高い食品を選んだり、過剰な食品廃棄をしたりすることは、間接的に他の生命を傷つける行為に繋がる可能性があります。アヒンサーを実践するためには、食品の生産過程、環境への影響、そして自分の健康状態を考慮し、倫理的な選択をすることが重要です。

  • 言葉: 言葉は、人を励まし、勇気づけることもできますが、傷つけ、苦しめることもあります。アヒンサーの実践においては、言葉を選ぶ際に慎重になり、相手を尊重し、思いやりのある言葉を使うように心がけることが重要です。また、噂話や陰口を慎み、建設的な対話を心がけることも、アヒンサーの実践に繋がります。

  • 消費: 私たちの消費行動は、地球環境や社会に大きな影響を与えます。アヒンサーの実践においては、必要以上のものを求めず、持続可能な製品を選び、リサイクルやリユースを心がけることが重要です。また、フェアトレード製品を選ぶことで、発展途上国の生産者を支援し、貧困や搾取といった社会的な暴力に対抗することができます。

  • 人間関係: 人間関係は、喜びと成長の源泉となることもありますが、同時に、摩擦や衝突を生み出すこともあります。アヒンサーの実践においては、相手の立場を理解し、共感する心を持つことが重要です。また、意見の相違があった場合でも、感情的にならず、冷静に話し合い、解決策を探ることが、アヒンサーの実践に繋がります。

  • 自己との対話: アヒンサーは、他者だけでなく、自分自身に対しても実践されるべきものです。自己批判や自己否定的な思考は、自分自身を傷つける暴力行為です。アヒンサーの実践においては、自分自身を優しく労わり、肯定的な言葉をかけることが重要です。また、自分の弱さや欠点を受け入れ、成長の機会として捉えることも、アヒンサーの実践に繋がります。

 

ヨーガスートラの実践における心の態度

ヨーガスートラの実践は、単なる行動の変更だけでなく、心の態度を変えることをも意味します。心の態度を変えるためには、以下の3つの要素が重要です。

  1. ヴィヴェーカ(識別): 真実と虚偽、善と悪、重要と不重要を見分ける能力。

  2. ヴァイラーギャ(離欲): 快楽や物質的なものへの執着を手放すこと。

  3. アビヤーサ(練習): 継続的な努力と実践。

これらの要素を意識しながらヨーガスートラの実践に取り組むことで、より深く、そして持続的な変化を体験することができます。

 

まとめ:ヨーガスートラは、生き方そのもの

ヨーガスートラの実践は、容易ではありません。私たちの心は、長年の習慣やパターンによって深く刻み込まれており、それを変えるには時間と努力が必要です。また、日常生活においては、様々な誘惑や困難に直面し、ヨーガスートラの教えを実践することが難しい場面もあります。

しかし、困難に直面したとしても、諦めずに実践を続けることが重要です。ヨーガスートラは、自己変革のプロセスであり、一夜にして成し遂げられるものではありません。焦らず、気長に取り組み、小さな進歩を喜び、困難を乗り越えるたびに、自己成長を実感することができます。

ヨーガスートラは、単なるヨガの哲学書ではなく、日常生活の中で智慧を生かし、より充実した人生を送るための羅針盤となるものです。アヒンサーの精神を日常生活に取り入れ、自己認識を深め、心の態度を変えることで、私たちは、より平和で、調和のとれた生き方を実現することができます。ヨーガスートラは、単なる知識ではなく、生き方そのものなのです。この古代の智慧を現代の生活に活かし、アヒンサーの精神を育むことで、私たちは、自分自身だけでなく、周囲の世界をも変えていくことができるでしょう。

 

 

ヨガの基本情報まとめの目次は以下よりご覧いただけます。

 

 


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。