過去も未来も存在しない?ヨガが教える「今、ここに生きる」ということ
窓の外を流れる風景を眺めながら、あなたはどんなことを考えていますか?
コーヒーを飲みながら、過ぎた夏の楽しい出来事を思い出し、ほっこりとした気持ちになる。 仕事へ向かう電車の中で、週末の予定に胸を躍らせる。 大切な人に送るメッセージの内容を考えながら、自然と笑みがこぼれる。
日常の些細な瞬間の中に、私たちは過去や未来への思いを巡らせ、一喜一憂しています。 しかし、少し立ち止まって考えてみてください。それは本当にあるのかと。
「過去」はもう過ぎ去ったものであり、私たちがどんなに思い悩んでも、変えることはできません。 そして、「未来」はまだ見ぬ世界であり、どうなるか誰にもわからない、不確かなものです。そしてまた、それは頭の中にしかないことです。ここで取り出して触ることはできません。
では、本当の意味で私たちが生きることができるのはいつでしょうか?
そうです。「今、この瞬間」だけです。
古代インドの賢者たちは、このシンプルな、しかしながら深遠な真理に気づき、ヨガという実践体系の中にそのエッセンスを織り込みました。それは、何千年もの時を超え、現代社会を生きる私たちへのメッセージとして、脈々と受け継がれているのです。現代ではヨガスタジオがあり、スポーツジムでもヨガのプログラムが行われています。形は変わってきているとは思いますが、受け継がれているのです。
私たちの心は、放っておくと、まるで落ち着きのない蝶のように、過去や未来へと飛び回ってしまいます。 過去の失敗を悔やんでみたり、過去の成功体験にしがみついてみたり。 未来への不安に駆られたり、まだ見ぬ幸せを夢見ては、心が乱される。 そして、その度に心が揺り動かされ、私たちは本当の安らぎを得ることができません。まるで荒波にもまれる小舟のように。
ヨガの教えは、この心の蝶を「今、ここ」という花の上にそっと休ませるための、穏やかで効果的な方法を教えてくれます。 それは、決して特別なものではありません。日常生活の中で、ほんの少し意識を変えるだけで、私たちは「今、ここに生きる」ことを実践できるのです。それがヨガの実践でもあります。
たとえば、アーサナ(ヨガのポーズ)を実践している時、私たちは自分の呼吸に意識を集中します。 身体の動きと呼吸を調和させながら、一つひとつの動作を丁寧に行う。 指先から足先まで、身体の隅々へと意識を向ける。 その時、私たちの意識は「今、この瞬間」に存在し、雑念に邪魔されることなく、純粋な集中状態に入ることができます。
ヨガの時間を通じて、スッキリした気分や肩の荷が降りるような状態になるのは「今、この瞬間」に存在しているからです。
また、瞑想も「今、ここに意識を向ける」ための強力なツールです。 静かに目を閉じ、呼吸に意識を集中することで、心の動きが徐々に静まっていくのを感じられるでしょう。 雑念が湧いてきても、それは自然なことだと受け止め、無理に抑え込もうとするのではなく、ただ淡々と観察し受け流し、再び呼吸へと意識を戻していく。 このようなトレーニングを続けることで、私たちは心の波を静め、穏やかで安定した状態を保つことができるようになるのです。
瞑想をすることで「今、この瞬間」しか存在しないことに気付いていきます。
「今、ここに生きる」ことは、一見すると簡単なことのように思えるかもしれません。 しかし、情報が洪水のように押し寄せ、常に時間に追われている現代社会においては、意識的に努力をしないと、なかなか実現できないことでもあります。
しかし、ヨガの実践を通して、私たちは「今、この瞬間」を味わい尽くすことができるようになります。 鳥のさえずり、風の音、太陽の温かさ。 コーヒーの香り、一口ごとに広がる美味しさ。 五感を研ぎ澄まし、当たり前の日常の中に隠されている、小さな奇跡に気づくことができるようになるでしょう。
そして、この「今、ここ」を大切に生きることこそが、私たちの人生をより豊かで意味のあるものへと変えていく、確かな一歩となるのです。
そのためのプラクティスがヨガであり、またヨガのプラクティスを通じて「今、この瞬間」を気づくことができます。
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