ヨーガスートラと瞑想 – 三昧(サマーディ)への段階的なアプローチ

ヨガを学ぶ

ヨーガの深淵なる探求の道標、パタンジャリの『ヨーガスートラ』。この聖典は、単なる健康法を超え、自己の本質へと深く潜りゆくための哲学体系を提示しています。現代社会において、私たちは情報過多と目まぐるしい変化の波に翻弄され、心の静寂を見失いがちです。そんな時代だからこそ、ヨーガスートラの瞑想、特に最終目標である三昧(サマーディ)への段階的なアプローチは、私たちに内なる平和と叡智を取り戻すための灯台となるでしょう。

この記事では、ヨーガスートラが示す瞑想の道筋を、初心者の方にも理解できるよう、専門的な知識を織り交ぜながら、段階的に解説していきます。ヨーガ哲学の奥深さに触れ、瞑想を通して自己変革を目指す旅に、共に足を踏み出してみましょう。

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ヨーガスートラとは – 古代インド哲学の結晶

『ヨーガスートラ』は、紀元2世紀頃、賢者パタンジャリによって編纂されたと伝えられる、ヨーガ哲学の根本経典です。サンスクリット語で書かれた短い सूत्र (スートラ、 सूत्रम् スートラム)と呼ばれる सूत्र (スートラ、 सूत्रम् スートラム)形式で構成されており、その数は195のスートラからなります。

ヨーガスートラが成立した背景には、古代インドの多様な思想潮流が深く関わっています。ヴェーダ聖典に代表されるバラモン教の儀式主義、ウパニシャッド哲学の梵我一如思想、仏教の瞑想実践、数論哲学の二元論的宇宙観など、様々な要素が複雑に絡み合い、ヨーガ哲学の土壌を形成しました。

特に、数論哲学はヨーガスートラの思想的基盤として重要です。数論哲学は、世界をプルシャ(純粋意識)とプラクリティ(物質原理)という二つの原理から説明します。プルシャは変化せず、永遠に純粋な意識であり、プラクリティは絶えず変化し続ける物質的な世界です。私たちの苦しみは、プルシャがプラクリティと自己同一化してしまうことから生じると考えます。ヨーガの目的は、この誤認を解消し、プルシャ本来の純粋性を回復すること、つまり解脱(カイヴァリヤ)を目指すことにあります。

ヨーガスートラは、この解脱に至るための具体的な方法論、八支則(アシュタンガ・ヨーガ) を体系的に示しています。八支則とは、ヤマ(禁戒)、ニヤマ(勧戒)、アーサナ(坐法)、プラーナーヤーマ(呼吸法)、プラティヤハーラ(感覚の制御)、ダーラナ(集中)、ディヤーナ(瞑想)、サマーディ(三昧)の八つの段階からなる実践体系です。

 

八支則と瞑想の位置づけ – 三昧への道

ヨーガスートラにおいて、瞑想は八支則の第七段階であるディヤーナ、そして最終段階であるサマーディとして位置づけられています。しかし、瞑想は決して孤立した実践ではなく、八支則全体を通して段階的に深まっていくものです。

ヤマ(禁戒) と ニヤマ(勧戒) は、社会生活や自己の内面における倫理的な基盤を築きます。非暴力(アヒムサー)、正直(サティヤ)、不盗(アスティヤ)、不淫(ブラフマチャリヤ)、不貪(アパリグラハ)というヤマ、そして清浄(シャウチャ)、満足(サントーシャ)、苦行(タパス)、学習(スヴァディヤーヤ)、自在神祈念(イシュヴァラプラニダーナ)というニヤマを実践することで、心のざわつきを鎮め、瞑想に適した心の状態を準備します。

アーサナ(坐法) と プラーナーヤーマ(呼吸法) は、瞑想のための身体的な準備を整えます。安定した快適な姿勢(アーサナ)を保つことで、身体的な苦痛による集中力の散漫を防ぎます。また、呼吸法(プラーナーヤーマ)によって、生命エネルギーであるプラーナをコントロールし、心を静め、集中力を高めます。

プラティヤハーラ(感覚の制御) は、内なる世界へ意識を向けるための重要な段階です。五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を通して外界に向かいがちな意識を内側に向け、感覚の対象から意識を解放します。これにより、瞑想への準備がさらに深まります。

ダーラナ(集中) は、瞑想の直接的な準備段階です。意識を一点に集中させる訓練を行います。集中対象は、呼吸、マントラ、チャクラ、イメージなど、様々なものが考えられます。ダーラナによって、散漫になりがちな心を一点に留める力を養います。

ディヤーナ(瞑想) は、ダーラナによって培われた集中力をさらに深め、持続させる段階です。集中が深まり、対象との一体感が生まれてきます。ヨーガスートラでは、ディヤーナを「タトラ プラティヤイカターナター ディヤーナム(ヨーガスートラ 3-2)」と定義しています。「タトラ」は「そこで」、「プラティヤイカターナター」は「意識の流れが一つの対象に途切れることなく向けられること」を意味します。つまり、ディヤーナとは、意識が瞑想対象に持続的に向けられ、途切れることのない状態を指します。

そして、瞑想の最終段階が サマーディ(三昧) です。サマーディは、瞑想が極限まで深まり、瞑想者、瞑想対象、瞑想行為の区別がなくなる状態、つまり主体と客体が完全に融合した状態です。ヨーガスートラでは、サマーディを「タデヴァールタマトラニルバーサム スヴァルーパシューニャミヴァ サマーディヒ(ヨーガスートラ 3-3)」と定義しています。「タデーヴァ」は「それ自体が」、「アルタマトラニルバーサム」は「対象だけが輝き現れること」、「スヴァルーパシューニャミヴァ」は「自己の本質が空になったかのよう」を意味します。つまり、サマーディとは、瞑想対象のみが純粋に輝き現れ、自己意識が消え去ったかのような状態を指します。

 

三昧への段階的なアプローチ – 実践のヒント

ヨーガスートラが示す瞑想、特に三昧への道は、決して容易なものではありません。しかし、焦らず、段階的に実践を積み重ねることで、誰でもその恩恵を享受することができます。初心者の方が瞑想を実践する上で、いくつかのヒントを段階的にご紹介しましょう。

 

第一段階:準備段階 – 心身を整える

  • ヤマ・ニヤマの実践: まずは、日常生活においてヤマ・ニヤマの教えを意識することから始めましょう。例えば、日常生活で暴力的な言動を慎み、 सत्य (サティヤ) 嘘をつかないように心がけるだけでも、心の状態は大きく変化します。

  • アーサナ: 瞑想に適した姿勢を身につけましょう。最初は、楽な姿勢で座ることから始め、徐々に坐法を深めていくと良いでしょう。椅子に座って行う瞑想でも効果はあります。

  • プラーナーヤーマ: 簡単な呼吸法から始めましょう。例えば、腹式呼吸や片鼻呼吸法などは、心を落ち着かせ、集中力を高めるのに役立ちます。呼吸に意識を向けるだけでも、瞑想の導入になります。

 

第二段階:集中力を養う – ダーラナの実践

  • 呼吸瞑想: 最も基本的な瞑想方法の一つです。呼吸の感覚に意識を集中させます。呼吸の出入り、鼻孔を通過する感覚、お腹や胸の動きなどを観察します。

  • 一点集中: 呼吸以外にも、一点を集中する対象を見つけてみましょう。例えば、ロウソクの炎、曼荼羅、特定の言葉(マントラ)など、自分が集中しやすい対象を選びます。

  • 集中の訓練: 集中が途切れても、決して責めないでください。意識が散漫になっていることに気づいたら、ただ落ち着いて、再び集中対象に意識を戻しましょう。

 

第三段階:瞑想を深める – ディヤーナの実践

  • 観察瞑想: 集中が安定してきたら、対象への観察を深めていきましょう。呼吸瞑想であれば、呼吸の質、リズム、深さなどを詳細に観察します。

  • ヴィパッサナー瞑想: 仏教に由来する瞑想法ですが、ヨーガ瞑想にも応用できます。 自身の内なる現象(感情、思考、感覚など)を客観的に観察します。

  • 超越瞑想: マントラを繰り返し唱えることで、意識を深い静寂へと導く瞑想法です。

 

第四段階:三昧を目指す – サマーディへの道

  • 瞑想の継続: 三昧は、長年の瞑想実践の積み重ねによって、自然と訪れるものです。焦らず、毎日の瞑想を継続することが大切です。

  • 委ねる心: 三昧は、努力によって到達できるものではありません。瞑想実践を通して、自我を手放し、大きな力に委ねる心を持つことが重要です。

  • 日常生活への応用: 瞑想で得られた心の静けさや明晰さを、日常生活に活かしましょう。瞑想は、日常生活と切り離されたものではなく、日常生活をより豊かにするためのものです。

 

実践における注意点 – 焦らず、継続する

瞑想は、即効性のあるものではありません。効果を焦らず、長期的な視点で実践を続けることが重要です。

  • 指導者の重要性:可能であれば、経験豊富な指導者の指導を受けることをおすすめします。正しい瞑想法を学び、疑問点を解消することで、安全かつ効果的に瞑想を深めることができます。

  • 無理のない実践: 最初から長時間の瞑想を行う必要はありません。短い時間から始め、徐々に時間を伸ばしていくと良いでしょう。

  • 自分に合った瞑想法: ヨーガには多様な瞑想法があります。色々な瞑想法を試してみて、自分に合った瞑想法を見つけることが大切です。

  • 休息も重要: 瞑想と同じくらい休息も重要です. 心身が疲れているときは, 無理に瞑想を行うのではなく, 十分な休息を取りましょう.

 

まとめ – 三昧への道は誰にでも開かれている

ヨーガスートラが示す瞑想、そして最終目標である三昧は、特別な人にだけ開かれた道ではありません。誰でも、段階的なアプローチと継続的な実践によって、内なる平和と叡智の光に触れることができます。

現代社会は、ストレスや不安に満ち溢れています。ヨーガスートラの瞑想は、そのような時代を生きる私たちにとって、心の避難場所、そして自己変革のための強力なツールとなります。

この記事が、ヨーガスートラの瞑想、そして三昧への段階的なアプローチへの理解を深め、 당신의 (ヴァシェ) あなたの瞑想実践の一助となれば幸いです。焦らず、一歩ずつ、内なる平和への旅を歩んでいきましょう。

 

 

ヨガの基本情報まとめの目次は以下よりご覧いただけます。

 

 


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。