ヴェーダ哲学とウパニシャッド哲学:古代インド思想の二つの潮流

ヨガを学ぶ

 

ヴェーダ哲学とウパニシャッド哲学:古代インド思想の二つの潮流 – 儀式から内観へ、深化する精神世界の探求

ヨガ、瞑想、輪廻転生…。現代社会においても、人々の心を惹きつける、これらの思想の源流を辿ると、古代インドの叡智体系である「ヴェーダ哲学」とその深奥を極める「ウパニシャッド哲学」にたどり着きます。

今回は、古代インド思想の二つの大きな潮流である、ヴェーダ哲学とウパニシャッド哲学について、その歴史的背景、思想内容、そして、相互関係を少し掘り下げて解説していきます。

 

1. ヴェーダ哲学:神々への賛歌と宇宙の秩序 – 古代インド文明の礎

紀元前1500年頃、インド・アーリア人と呼ばれる人々が、中央アジアからインド北西部へと移住してきました。彼らは、自然崇拝を基盤とした多神教を信仰し、神々への賛歌や儀式をまとめた聖典群を編纂しました。これが「ヴェーダ」であり、古代インドの宗教、哲学、文化の基盤となりました。

「ヴェーダ」は、サンスクリット語で「知識」を意味し、以下の4つのサンヒター(本集)から構成されます。

  • リグ・ヴェーダ: 最も古いヴェーダ聖典。インドラ、アグニ、ヴァルナといった神々への賛歌、宇宙創造神話、祭祀の方法などが記されています。

  • サーマ・ヴェーダ: リグ・ヴェーダの賛歌を旋律に合わせて歌い、祭祀で用いるための聖典です。

  • ヤジュル・ヴェーダ: 祭祀の儀礼と呪文をまとめた聖典です。

  • アタルヴァ・ヴェーダ: 日常生活における呪法、病気治療、魔除けなどを扱う、より実践的な聖典です。

ヴェーダ哲学の中心は、神々への供犠(ヤグニャ)でした。祭火(アグニ)を媒介として、神々に捧げ物をすることで、宇宙の秩序と調和(リタ)を維持し、人々の繁栄を祈願しました。ヴェーダの宗教は、祭祀を司る司祭階級(バラモン)を中心とした社会構造を生み出し、後のヒンドゥー教へと発展していく基盤となりました。

 

2. ウパニシャッド哲学:内なる探求と梵我一如 – 意識の深淵へと向かう

紀元前800年頃から、ヴェーダの宗教観は、外的な儀式中心から、内面的な探求へと変化していきます。この時代の思想を代表するのが、「ウパニシャッド」と呼ばれる哲学書群です。

「ウパニシャッド」とは、「師の近くに座ること」を意味し、師と弟子の対話を通して、宇宙の根本原理である「ブラフマン」、そして、人間の魂である「アートマン」の本質が探求されます。

ウパニシャッドは、アートマンとブラフマンは、本質的に同一であるという、「梵我一如」の思想を説きます。私というのは認識している主体であり認識対象にはならない、という考えとなります。よって私を認識することはできない、と。この思想は、後のヨガ、そして、ヒンドゥー教の根幹をなす、重要な思想となります。

ウパニシャッド哲学は、ヴェーダの祭祀中心の宗教観を批判し、内面的な探求と精神的な解放を重視しました。それは、古代インド思想における大きな転換点であり、人間の意識の深淵へと向かう、新たな章の始まりでした。

 

3. ヴェーダとウパニシャッド:相互関係と影響 – 連続性と革新

ヴェーダ哲学とウパニシャッド哲学は、一見、対照的な思想体系のように見えますが、実際には、密接な関係があり、互いに影響を与え合っています。

ウパニシャッドは、「ヴェーダーンタ」(ヴェーダの終焉)とも呼ばれ、ヴェーダの最終的な目的である、解脱(モークシャ)を達成するための、より深遠な教えを説くものとして位置づけられています。

ウパニシャッドは、ヴェーダの祭祀や神々を否定するわけではありません。むしろ、それらを、より高次な真理を理解するための、象徴的な表現として解釈しました。(否定しているとも言われます)

例えば、ヴェーダの祭火(アグニ)は、ウパニシャッドでは知識や悟りの象徴として捉えられます。

ヴェーダ哲学とウパニシャッド哲学の関係は、伝統と革新、連続性と断絶という、複雑な様相を呈しています。しかし、両者は、古代インド思想の重要な二つの潮流として、後のインド哲学、宗教、そして文化に多大な影響を与えました。

 

4. ヴェーダ哲学とウパニシャッド哲学:現代社会へのメッセージ

ヴェーダ哲学とウパニシャッド哲学は、数千年の時を超えて、現代社会を生きる私たちにも、多くの示唆を与えてくれます。

ヴェーダ哲学は、自然への畏敬の念、宇宙の秩序と調和を重視する精神、そして、共同体における儀式の重要性を教えてくれます。

一方、ウパニシャッド哲学は、自己探求、内面的な成長、そして、物質世界を超えた精神的な価値観の重要性を強調しています。

現代社会は、物質的な豊かさや科学技術の発展の一方で、精神的な空虚感や不安を抱える人が少なくありません。ヴェーダ哲学とウパニシャッド哲学は、私たちが、物質主義的な価値観を超え、心身の調和、そして、より高次な意識へと向かうための、ヒントを与えてくれるのではないでしょうか。

 

古代インド思想の深淵を探求する旅

ヴェーダ哲学とウパニシャッド哲学は、古代インドの人々の精神世界、宇宙観、そして、生命観を理解するための、重要な鍵となります。これらの哲学体系を探求することで、私たちは、ヨガや瞑想といった、現代社会においても広く実践されている、インド発祥の精神的な実践の根源に触れることができるでしょう。

古代インドの叡智は、時代を超えて、現代社会を生きる私たちに、多くの示唆を与えてくれます。それは、私たちが、より豊かで、意味のある人生を創造するための、貴重な指針となるはずです。

 

 

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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。