ヨガとは古来インドに伝わる伝統的な修行法です。
そもそもは「解脱」を目的としたものです。
解脱とは苦しみからの解放という意味合いもありますが、ヨガ的には輪廻転生の輪から抜け出すことを指します。
なぜ、輪廻の輪から抜け出したいのでしょうか。
それはこの世界にいる私が本質ではなく、解脱することで真の私と合一していくことになるからです。
ヨガではこれを梵我一如と言い、宇宙の根本原理のブラフマンと個人の根本原理であるアートマンの同一であると説きます。
輪廻転生から抜け出すのが解脱ですので、この世界で輪廻を繰り返すことは苦しみにあたります。
(なので解脱には苦しみからの解放と言われることもあるのです)
修行を通して解脱を目指す、その方法のひとつにヨガがあります。
仏教なども解脱を目指すタイプの修行のひとつとも言えます。
ヨガの八支則
ヨガというとアーサナ(ヨガポーズ)を連想することが多いと思います。
古代インドでの発祥では「行動規範」「アーサナ」「呼吸法」「集中法」「瞑想法」とそれぞれ実践していきます。
ヨガの根本経典のひとつであるヨーガ・スートラに詳しく記載されております。
ここでは詳しくは説明しませんが、以下の8つの項目を実践します。
- ヤマ:禁戒 →守るべきこと
- ニヤマ:勧戒 →実践すべきこと
- アーサナ:坐法 →ポーズ
- プラーナヤーマ:調気 →呼吸法
- プラティヤハーラ:制感 →感覚を制御していくこと
- ダーラナー:集中 →集中力のトレーニング
- ディヤーナ:瞑想 →瞑想の実践
- サマーディ:三昧 →解脱へ
関連記事:ヨガで成長するための8ステップとなる「ヨガの八支則」をざっくりと学ぶ
では次にヤマ・ニヤマの「行動規範」について書いていきます。
なぜ、解脱に向けて行動規範がなぜ必要なのでしょうか。
それはこの行動規範が欠落するとアーサナがうまく進まなくなってしまうのです。
行動規範について
ヨガの哲学は、個人の内面の発展をさせることで、外界と調和を促進します。
内側を整えることで、外側との折り合いもつけていくのです。
本来は修行法でしたが、今では健康を促進する方法として親しまれています。
ヨガ哲学の考え方も生活に取り入れることで幸福度も上がることになるということで、積極的にヨガライフを送る人もいます。
その基本をなすのが行動規範です。
ヤマ・ニヤマとなります。
ヤマ(守るべきこと)は以下の5つになります。
- アヒンサー:非暴力、暴力を振るわないこと
- サティヤ:正直にし、嘘を言わないこと
- アスティヤ:盗まないこと
- ブラフマチャリヤ:性欲、睡眠欲、食欲を制御すること
- アプリグラハ:必要以上に貪らないこと
ニヤマは日常生活で心がけると良いことですね。これらを実践することがニヤマになります。
- シャウチャ:清潔にすること、清潔さを保つこと
- サントーシャ:足るを知ること、知足
- タパス:苦しみや苦難を受け入れること
- スワディヤーヤ:ヨガの教典を学ぶこと
- イーシュヴァラ・プラニダーナ:神への献身、目の前にあるあらゆること・起こること全てに身をゆだねること
けっこう当たり前のことしか書かれておりません。
徹底的に実践することは不可能ですが(まったく殺生しない生活は不可能ですよね)、それなりに現代の社会でも通じる規範に思います。
暴力を振るったり、盗んだり、欲望に任せて欲しがったりということに躊躇する人が多く、なるべく犯さないように生活していることでしょう。
ヤマ・ニヤマはこの当たり前を実践していくということです。
スワディヤーヤ(教典を学ぶ)というのはヨーガ・スートラとバガヴァッド・ギータを読むことです。
ご興味のある方は読んでみてください。
ヨーガ・スートラではアーサナに関しては「安定して快適に実践しなさい」くらいしか書いておらず、アライメントの説明や解剖学などは一切出てきません。
アーサナのやり方、方法論、解剖学、などを紐付けたのは現代になってからです。
ヨガにおいてはもう少しエネルギー的なことであったり、感覚的なことを重要視する傾向にあります。呼吸法も解剖学的な呼吸法ではなく、精神的なことであったり、瞑想へとつなげていくような意味合いになります。
ちなみにバガヴァッド・ギータにはアーサナのことは一切出てきません。
イーシュヴァラ・プラニダーナは神への献身となっておりますが、当時の神は自然などのアニミズムのような考えだったようです。自然に任せる、というニュアンスかもしれません。
現代の感覚で拡大解釈をすると目の前で起こったことに身を任せていくことになるかと思います。
起きてくる様々な出来事に「あーじゃこーじゃ」と不平不満を言わず「はい、そうですか」と受け入れていくことです。
もちろん何もしないということではなく、起こったことに対して文句を言わずに実践していくことです。
ヨガ的には、実践というのは八支則ということになります。
アーサナ・ポーズについて
ヨガの練習方法は基本的に呼吸法、アーサナ、瞑想法となります。
現代のヨガスタジオで提供されているのはアーサナがメインです。
呼吸法もやりますが1時間とかやるところは少ないでしょう。
瞑想もまた、1時間や2時間としっかりと瞑想をやるスタジオも少ないでしょう。
このアーサナの練習に先立って先程の行動規範ができている必要があります。
アーサナは筋力と柔軟と呼吸力を高めるポーズを中心として進みます。
アーサナは身体を整える作用があります。
アーサナを行うことで、柔軟性が向上し、筋肉や関節の柔軟性が向上し、体の動きがスムーズになります。
筋力も強化されます。
アーサナを行うことで、心身ともにリラックスすることもできます。
アーサナの前にはご飯を食べてはいけないと言われますが、アーサナを行うことで、内臓の働きを促進し、消化や代謝の改善が期待できます。
血流が促進され、免疫力の向上や冷え性の改善がされる人もいます。
前屈や後屈、逆転のポーズ(逆さになるポーズ)などの効果で、自律神経の調整が行われ心身のバランスを整えることができます。
そのようにして瞑想できる身体作りをしていきます。
解脱には瞑想が不可欠なので結局はアーサナは瞑想のためなのです。
このアーサナの練習において行動規範がなっていないと、欲やエゴにハマってしまいヨガの練習が進まなくなってしまいます。下手すると後退していきます。
しっかりと行動規範を守る生活をしていないと自我や欲が強いままなので、アーサナをやっても「柔軟性こだわる」「できるかできないかに一喜一憂する」「人と比べてしまう」「もっとすごいポーズを求める」「人から奪う行為に走る」ということになります。
これは非常にまずい状況です。
闇落ちしてしまう人は「柔軟性がある人は人間的にも優れている」とか「アーサナが上手い人はヨガ哲学も実践している人だ」と勘違いをして妄信してしまい、不調和になっていきます。騙されていく人も増えることでしょう。
ヨガではなくなってしまいますので行動規範を実践し、エゴを減らしておく必要がここで非常に大事になります。
瞑想をヨガスタジオでやる機会はまだ少ないかもしれませんが、瞑想も大切な要素となります。
ヨガの目的は瞑想することでもありますのでぜひ取り入れてみてください。
瞑想について
まとめますと、行動規範を身に着けることで日常生活からも苦しみを減らしていきます。
アーサナの実践を通じて物理的にも身体を作り、健康になり、精神も安定させていきます。
その結果、瞑想の土台作りができてきます。
特にアーサナでも瞑想でもエゴが強いとせっかくの実践が逆の方向に行ってしまいます。
不平不満であったり文句であったり愚痴であったり人の足を引っ張ったりと。
行動規範→アーサナ→瞑想とやっていくのがおすすめです。
瞑想でも体力がなくて座っているのも辛い人もいます。
もちろん姿勢は自由でいいのですが、身体が痛くて座ってる場合ではなく痛みを耐える我慢大会のような時間になってしまうと瞑想からは遠のいてしまいます。
ヨガでは解脱へ向けて瞑想は必須となっております。
すべては瞑想のためにあると言っても過言ではないです。
なので瞑想のためにも普段からの実践が重要になります。
今回はざっくりとご紹介しておりますので、瞑想が初めての方で気になる方は以下の記事をご覧ください。
関連記事:瞑想・SIQANについてのよくある質問
ヨガの瞑想法は「火を見つめる」とか「太陽を見る」とか伝統的な瞑想が多いです。
実際に現代の方が実践するには厳しいというのもありますが、不要な瞑想法でもあると感じます。太陽を見つめ続けるのが必要とは思わないでしょう。
実践する瞑想は、「坐蒲に座って、思考を脇において、ゆったりした呼吸で、ただ座る瞑想」がちょうど良いと個人的には感じます。
いわゆる座禅になるのですが、座禅ほど規律に従うことなく、短い時間でもいいのでぼぉ〜と目を閉じて思考から離れていくという時間を持つだけでも充分に瞑想の恩恵を受けられることでしょう。
ぜひ、やってみてください。
終わりに:ヨガを気軽にやってみる
ヨガは、古来のものではありますが、現代社会では健康促進やストレス解消などにおいても注目されるメソッドになっています。
一般人からプロスポーツ選手、音楽家やアーティストまで多くの人々が取り入れています。
ヨガは一人でもできるものです。
内面からも充実感を得ることができます。
ヨガを通して身体の健康、精神の健康、ライフスタイルの健康を意識してみてはいかがでしょうか。
ヨガの基本情報まとめの目次は以下よりご覧いただけます。