ヨガを楽しむコツのひとつは子供の心をもつこと

自己啓発

ヨガを推奨しております。
ですが、「ヨガをしなければならない」とは一度も申しておりません。
むしろ、「しなければならない」という大人の思考を手放したところに、本当のヨガが待っているからです。
ヨガを深く、そして長く楽しむための最大の秘訣。
それは、難しいポーズができるようになることでも、サンスクリット語を暗記することでもありません。
ただ、「子供の心(Bala Mind)」を取り戻すこと。これに尽きると感じています。

 

「正解」を探すのをやめる

現代社会に生きる私たちは、いつの間にか「正解」を探す癖がついてしまっています。
学校ではテストの正解を求められ、会社では効率的な正解を求められ、SNSでは「映える」正解を求められる。
その癖を、ヨガマットの上にまで持ち込んでしまってはいないでしょうか。

「先生、私のポーズは合っていますか?」
「この角度で正しいですか?」
「呼吸は何秒でするのが正解ですか?」

もちろん、基本を学ぶことは大切です。
しかし、子供たちが遊ぶ姿を思い出してみてください。
彼らはジャングルジムに登るとき、「正しい登り方」なんて考えません。
ただ、登りたいから登る。身体がそう動きたがっているから動く。
そこには「失敗」もなければ「評価」もありません。あるのは純粋な「体験」だけです。

ヨガも本来、そうあるべきものです。
マットの上は、誰かに採点される場所ではありません。
あなたの身体が、今日どんな風に動きたいのか。それを好奇心を持って探求する、あなただけの遊び場なのです。
「合っているか」ではなく、「心地よいか」。
その感覚に従うとき、ヨガは義務から喜びに変わります。

 

転んでも笑える軽やかさ

バランスポーズでグラついて、おっとっと、と足をついてしまったとき。
大人の心はこう反応します。
「ああ、失敗した。恥ずかしい。体幹が弱いんだな。もっと鍛えなきゃ」
眉間にシワを寄せ、自分を責め、深刻になってしまいます。

一方、子供の心はどうでしょうか。
転んだこと自体が面白くて、ケラケラと笑うかもしれません。
「おっと、風が吹いた!」なんて言いながら、またすぐに遊びに戻るでしょう。

この「深刻にならない(No Seriousness)」という態度こそ、ヨガの達人の境地です。
インドの古い経典にも「リーラ(Lila)」という言葉があります。
これは「神の遊び」という意味です。
宇宙そのものが神様の遊びであり、私たちの人生もまた、壮大な遊びのようなものだと捉える世界観です。

ヨガのポーズ(アーサナ)も、このリーラの精神で行ってみてください。
できなかったら笑えばいいのです。
体が硬くても、面白がればいいのです。
「今日はガチガチだなあ、岩みたいだ!」と笑い飛ばせたとき、不思議と身体は緩んでいきます。
緊張(シリアスさ)は筋肉を固くしますが、笑い(リラックス)は筋肉を解きほぐすからです。

 

「はじめて」の目で世界を見る

子供にとって、世界は毎日が発見に満ちています。
道端の石ころ一つ、空に浮かぶ雲の形、自分の手足の動きさえも、驚き(ワンダー)の対象です。
これを禅の言葉で「初心(ビギナーズ・マインド)」と言います。

ヨガを続けていると、慣れが出てきます。
「ああ、またダウンドッグか」「次は戦士のポーズね、はいはい」
と、頭で予測し、自動操縦で動いてしまう。
これは心が「不感症」になっている状態です。

子供の心を取り戻すとは、この慣れを捨て、毎回「はじめて」の感覚でマットに立つことです。
「今日のダウンドッグは、昨日とどう違うだろう?」
「今の呼吸は、どこまで入っていくだろう?」
そうやって新鮮な好奇心を持って自分の身体を観察するとき、単なる反復運動だったヨガは、毎回新しい発見に満ちた冒険へと変わります。

 

損得勘定を手放す

「ヨガをしたら痩せるかな」
「健康になれるかな」
「モテるかな」

大人はすぐに「損得」や「結果」を計算します。
時間というコストを投じる以上、リターン(利益)がないと無駄だと感じてしまうのです。
これは資本主義社会の思考回路そのものです。

でも、子供は「将来役に立つから」といって泥遊びをするでしょうか?
しませんよね。
ただ、泥の感触が気持ちいいから、楽しいから、今やっているのです。
「今、ここ」の喜びだけに没頭している状態。
これをヨガでは「サマディ」への入り口と考えます。

結果を手放しましょう。
痩せても痩せなくてもいい。健康になってもならなくてもいい。
ただ、今この瞬間の、伸びている感覚、呼吸が入ってくる感覚を味わい尽くす。
逆説的ですが、結果を求めずにプロセスに没頭したときの方が、結果として心身は最も良い状態に整うものです。

 

おわりに:大人の仮面を脱ぐ場所

社会生活を送るうえで、私たちは「大人」という仮面(ペルソナ)を被らざるを得ません。
責任感、常識、効率性、協調性。
それらの鎧は、私たちを守ってくれますが、同時に重くのしかかり、本来の生命力を窒息させてしまいます。

だからこそ、マットの上では、その仮面をそっと外してください。
誰のお母さんでもなく、誰の上司でもなく、何者でもない「命そのもの」に還る時間。
無邪気に身体を動かし、転んだら笑い、疲れたら大の字で寝転がる。
そんな子供のような時間を過ごすことで、私たちは枯渇したエネルギーを再びチャージすることができるのです。

ヨガは苦しい修行ではありません。
自分の命との、楽しい遊びです。
さあ、難しく考えるのはやめて、一緒に遊びましょう。
縁側で待っています。

ではまた。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。