何があとから効いてくるかわからない。だから本を読んだり、人にあったり、映画をみたり、瞑想をする。

自己啓発

ヨガを推奨しております。
それは、ヨガが「今すぐ役立つこと」を求めるのではなく、「いつか花開く種」を撒き続ける営みだからです。

私たちは今、あまりにも「即効性」を求められる社会に生きています。
「コスパ(コストパフォーマンス)」や「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉がこれほどまでに流行するのは、無駄を嫌い、最短距離で結果を出したいという焦燥感の表れでしょう。
本を読む前に要約サイトを見て、映画を倍速で再生し、人に会う前にSNSでスペックを確認する。
「これは自分の人生の役に立つのか?」
「これをやって何の意味があるのか?」
そんな問い(というよりは検閲)を常に行い、意味がないと判断したものを切り捨てていく。
そうやって効率化された人生は、確かにスマートで無駄がないかもしれません。
しかし、それは同時に、人生から「予期せぬ奇跡」や「深い発酵」の可能性を排除してしまっているようにも見えます。

 

人生の伏線は、忘れた頃に回収される

私が好きな言葉に「Connecting the dots(点と点をつなぐ)」があります。
スティーブ・ジョブズの有名なスピーチですが、これはヨガ的な世界観とも深く通じています。
私たちは、未来を見通して点をつなぐことはできません。
できるのは、過去を振り返ったときに「ああ、あの時のあれが、ここに繋がっていたのか」と気づくことだけです。

10年前に何気なく読んだ難解な本の一節が、今日の苦しみを救ってくれる言葉になるかもしれません。
旅先で出会った老人とのたわいない会話が、新しいビジネスのヒントになるかもしれません。
あるいは、何の意味もないと思っていた退屈な映画のワンシーンが、大切な人との別れの悲しみを癒してくれるかもしれません。

何があとから効いてくるか、誰にも(あなた自身にも)わからないのです。
だからこそ、私たちは種を撒き続けます。
本を読み、人に会い、映画を観て、そして瞑想をする。
それらはすぐに換金できる価値ではないかもしれませんが、あなたの内なる土壌を豊かにし、いつか必ず芽吹く種となります。
無駄に見える時間こそが、実は最も豊かな投資なのかもしれません。

 

「役に立たない」ことのヨガ的な意味

ヨガの教えに「カルマ・ヨガ(行為のヨガ)」というものがあります。
これは「結果への執着を手放して、行為そのものに没頭する」という実践です。
「これをやったら褒められるか」「これをやったら儲かるか」という計算(下心)を捨てて、目の前のことに純粋に取り組むこと。

現代社会の問題点は、すべての行為を「手段」にしてしまっていることです。
勉強は合格のための手段、仕事は給料のための手段、運動は健康のための手段。
すべてが「未来の何かのため」に捧げられ、「今この瞬間」の輝きが失われています。

しかし、打算のない行為には、不思議な力が宿ります。
損得勘定抜きで読んだ本、理由もなく会いたくなって会った人。
そういった「純粋な行為」から生まれた縁(カルマ)は、私たちの想像を超えた形で巡り巡り、必要なタイミングで私たちの元へ帰ってきます。
ブーメランのように、忘れた頃に背中を押してくれるのです。

 

瞑想:究極の「無駄」が生む力

そして、その最たるものが「瞑想」です。
端から見れば、ただ座っているだけ。生産性ゼロの時間です。
「そんな時間があったら英単語の一つでも覚えた方がいい」と、効率至上主義のエゴは囁くでしょう。

しかし、瞑想という「何もしない時間」を持つことで、私たちは初めて、過去に撒いた種たちが発芽する音を聞くことができます。
情報や刺激を遮断し、内なる静寂に沈んでいくとき。
今までバラバラだった知識と経験が、深い意識の底で化学反応を起こし、一つの智慧(ジニャーナ)へと統合されていくのです。

瞑想は、意識の整理整頓ではありません。
意識の「熟成(発酵)」です。
漬物が時間をかけて美味しくなるように、私たちの経験もまた、静寂という蔵の中で寝かせることで、人生を味わい深くする叡智へと変わります。
その効果は、今日明日には出ないかもしれません。
しかし、数年後、あるいは数十年後、人生の岐路に立ったとき、瞑想で培った不動の心が、あなたを正しい道へと導いてくれるでしょう。

 

混沌(カオス)を受け入れる器を作る

何が効いてくるかわからない、というのは、裏を返せば「人生はコントロールできない」ということです。
私たちは未来を予測し、計画通りに進めようと必死になりますが、人生の本質はカオス(混沌)です。
ヨガとは、このカオスを愛するための練習でもあります。

意味がわからない本を読むこと。
価値観の合わない人に会うこと。
結末の読めない映画を観ること。

これらはすべて、自分の中にある「理解の枠組み」を壊し、カオスを受け入れる器を広げる行為です。
すぐに役立つこと(わかりやすいこと)ばかり摂取していると、私たちの器は小さく凝り固まってしまいます。
逆に、異質なもの、無駄なもの、理解できないものを体内に取り込み、消化していくことで、私たちの魂は強靭になり、どんな状況でもしなやかに生きられるようになります。

だから、恐れずに種を撒きましょう。
すぐに答え合わせをしようとせず、わからないまま、抱えておくのです。
いつか、その点が線となり、美しい星座を描く日が必ず来ます。

本を読みましょう。
人に会いましょう。
映画を観ましょう。
そして、静かに座りましょう。
そのすべてが、あなたという唯一無二の物語を織りなす、かけがえのない一本の糸となるのですから。

ではまた。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。