肩の荷を下ろして、ただ座る。シンプル瞑想で心がゆるむ時間

MEDITATION-瞑想

瞑想、と聞くと、何か特別な訓練が必要だったり、静かで神聖な場所で座禅を組んだりする、少し敷居の高いものだと感じている方もいらっしゃるかもしれません。あるいは、「何も考えないようにしなければならない」「集中しなければ成功しない」といったイメージを持って、難しく捉えている方もいるのではないでしょうか。

でも、もし、瞑想がもっとずっと、シンプルで、あなたの日常に寄り添う、気楽なものであるとしたら? もし、あなたが今持っている、瞑想に関する知識やイメージを、いったん知識を手放してみたら?

実は、瞑想の最も深いところにある本質は、驚くほど「ミニマル」であり、そして「ただ座る」というシンプルな行為の中にこそ、その入り口があるのです。

 

「ただ座る」という究極のシンプルさ

「ただ座る」とは、文字通り、ただそこに座っている、それだけの行為です。特別な座法にこだわる必要もありません。椅子に座っても良いし、ソファでも床の上でも、自分が最もリラックスできる場所と姿勢で構いません。時間も、初めはたった数分からで十分です。完璧を目指す必要は一切ありません。

この「ただ座る」という行為は、現代社会において、実は非常に挑戦的な実践とも言えます。私たちは常に「何かをすること」「何かを得ること」を求められ、立ち止まること、何もしないでいることに価値を見出しにくい環境にいます。しかし、「ただ座る」という時間は、そうした外向きの活動から意識を内側へと向け直すための、大切な止まり木となります。

「シンプル瞑想」とは、まさにこの「ただ座る」という行為を核としたアプローチです。複雑な手順や理論は一旦脇に置いて、ただ自分自身の存在に気づき、その瞬間に起こっていることをありのままに受け入れる練習です。気楽に、気軽に、できることから始めてみる。そのスタンスこそが、継続するための鍵となります。

 

「ただゆるめる」ということ – 体と心の抵抗を手放す

「ただ座る」ことに加えて、もう一つ大切な要素が「ゆるめる」という感覚です。私たちは気づかないうちに、体にも心にも、たくさんの力みや緊張を抱え込んでいます。歯を食いしばっていたり、肩に力が入っていたり、あるいは過去の出来事や未来への不安で心がぎゅっと縮こまっていたり。

「ゆるめる瞑想」とは、こうした体と心の力みに意識的に気づき、それを優しく解き放っていく実践です。呼吸に意識を向けながら、体の各部分の緊張を手放していきます。額のシワ、顎の力み、肩の重み…一つ一つに意識を向け、息を吐くたびにその緊張がゆるんでいくのを想像してみましょう。

そして、体の緊張だけでなく、心の緊張もゆるめていきます。頭の中でぐるぐる回る思考、湧き上がってくる感情。「考えちゃいけない」「感じちゃいけない」と、それらに抵抗するのではなく、ただ、それらがそこに「ある」ことを許すのです。思考は雲のように流れ、感情は波のように寄せては返す。それを良い悪いと判断せず、ただ眺めている練習です。

この「ただゆるめる」というプロセスは、自分自身の内側にある抵抗を手放していく作業です。抵抗がなくなると、体も心もふっと軽くなるのを感じるでしょう。これはまさに、「肩の荷が下りる」ような感覚です。

 

「ゆるめば起こる」こと – 自然な流れに身を任せる

頑張って何かを成し遂げようとするのではなく、「ただ座り」「ただゆるめる」ことに身を委ねていると、内側では自然な変化が起こり始めます。これが「ゆるめば起こる瞑想」の真髄です。

意識的に「無になろう」「雑念をなくそう」と努力するのではなく、思考や感情が「ただ起こるもの」としてそこに現れ、そして過ぎ去っていくのを観察します。雨が降るように、風が吹くように、思考や感情は自然現象のように起こっては消えていきます。私たちはその現象をコントロールすることはできませんが、それに巻き込まれずに、ただ観察することはできます。

この「ただ起こる」ことを許容する姿勢が深まってくると、私たちは思考や感情に同一化しなくなり、それらが自分自身の本質ではないことに気づき始めます。それは、まるで舞台の上で演じられている劇を、客席から静かに眺めているような感覚です。劇の内容に一喜一憂するのではなく、ただその展開を見守る。

この客観的な視点が育まれることで、私たちはネガティブな思考パターンや感情の渦に囚われにくくなります。心が静まり、内側にある平穏や洞察に気づきやすくなるのです。

 

手放して変容する – 新しいものを受け入れるスペースを作る

瞑想の実践は、まさに「手放す」プロセスそのものです。私たちは日々の生活の中で、たくさんのものを心の中に溜め込んでいます。過去の後悔、未来への不安、他人からの評価、自分自身に対する批判…これらの重荷を、瞑想の時間を通して一つずつ手放していきます。

物理的なモノを断捨離するように、心の不要物を手放していくのです。これは、無理に忘れようとしたり、抑圧したりすることではありません。ただ、それが自分にとって必要のない重荷であることに気づき、そっと手から離すようなイメージです。

「色々と得たものをとにかく一度手放しますと、新しいものが入ってくるのですね。」これは、手放すことの逆説的な効果を表しています。私たちは何かを強く握りしめていると、両手が塞がってしまい、新しいものを受け取るスペースがありません。しかし、その手を緩め、不要なものを手放すことで、そこに新しいエネルギーや可能性が流れ込んでくる余白が生まれるのです。

心のスペースが広がることで、今まで気づかなかった自分の内側の声や、周囲の世界からのサインを受け取りやすくなります。これは、自分自身の内面だけでなく、外側の世界との「出会い」も変化していくことを意味します。「瞑想すると出会うことが変化する」というのは、自己の内側が整うことで、引き寄せる現実や人間関係も自然と変わっていくという、深遠な真理を示唆しています。

 

今まで得た知識を、ちょっと手放していただきたいのです

私たちは何かを学ぶとき、まず知識を集めようとします。瞑想についても、様々な情報やメソッドに触れる機会が多いでしょう。それらの知識は、もちろん役立つこともありますが、時に私たちを縛り付けたり、「こうしなければならない」という固定観念を生み出したりすることもあります。

だからこそ、瞑想を始めるにあたって、今まで得た知識を、ちょっと手放していただきたいのです。頭で理解しようとするのではなく、まずは「ただ座る」「ただゆるめる」という体験を通して、自分自身の体と心で何が起こるのかを感じてみてください。

理論や知識は、後からいくらでもついてきます。まずは、この瞬間の自分自身の体験に身を委ねること。それが、知識に先立つ、根源的な学びの姿勢です。

 

ゆるみから生まれる豊かな循環

体と心がゆるみ、不要なものを手放していくと、私たちは本来持っている軽やかさやしなやかさを取り戻します。肩の力が抜け、思考の渦から解放された人は、見ていてもしなやかで、自然な魅力を放つものです。

このような「ゆるん人からうまくいく」というのは、単なる精神論ではありません。心が穏やかで安定していると、物事を冷静に判断できたり、困難に直面しても必要以上に慌てたり落ち込んだりすることが減ります。人間関係においても、相手の言葉や行動に過敏に反応せず、より穏やかで建設的なコミュニケーションが取りやすくなります。結果として、周囲との関係性が良好になり、チャンスを引き寄せやすくなる、という好循環が生まれるのです。

瞑想は、特別な人が行う特別な修行ではありません。それは、あなたが今、ここにいるこの瞬間に、誰でも始めることができる、最も身近な自己探求の旅です。

「ただ座る」「ただゆるめる」ことから始めてみましょう。難しいことは何もありません。椅子に腰掛け、目を閉じて、ただ自分の呼吸に意識を向ける、それだけで十分です。思考が浮かんできても、それを追いかけず、ただ観察する。体がむずがゆくなっても、それを良い悪いと判断せず、ただ感じる。

数分でも構いません。その短い時間の中で、あなたは自分自身の内側にある静寂と繋がる機会を得られます。それは、外側の世界がどんなに騒がしくても、決して失われることのない、あなた自身の心のホームです。

肩の荷を下ろすこと。そして、シンプルに、ただ座る時間を持つこと。このミニマルな実践が、あなたの日常に穏やかな変容をもたらすはずです。さあ、今日から、気楽に、気軽に、「実践しよう」。

 


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。