「ただ座る」というミニマリズム【瞑想】

MEDITATION-瞑想

私たちは皆、情報の洪水と終わりのないTo-Doリストの中で日々を過ごしています。朝目が覚めた瞬間から、スマートフォンに通知が届き、インターネットを開けば、世界中で起こっている出来事や、他者の華やかな生活が目に飛び込んできます。職場では次々とタスクが積み重なり、家庭ではこなすべき家事が待っています。私たちは常に何かを考え、何かを判断し、何かを「こなす」ことに追われているかのようです。このような環境は、私たちの心を絶えず揺さぶり、内なる静寂を見失わせます。結果として、多くの人が疲弊し、漠然とした不安や焦燥感を抱えるようになっています。

このような時代だからこそ、「瞑想」が注目を集めています。しかし、瞑想と聞くと、多くの方は「座禅のように厳しい姿勢で長時間座らなければならないのか」「無にならなければ意味がないのか」「特別な場所や道具が必要なのか」といった疑問や抵抗を感じるかもしれません。あるいは、「本当に効果があるのだろうか」「自分には向いていないのではないか」と尻込みしてしまう方もいらっしゃるでしょう。確かに、瞑想には様々な流派や実践法があり、中にはある程度の鍛錬を要するものもあります。しかし、瞑想の本質は、決して難解なものでも、特別な訓練を積んだ人にしかできないものでもありません。むしろ、最もシンプルで、誰にでも開かれた実践であると私は考えています。

 

「ただ座る」というミニマリズム

私たちは普段、常に何かを「足し算」しようとしています。より多くのモノ、より多くの情報、より多くの経験…。そして、それらを獲得することで、自分自身の価値を高めたり、心の隙間を埋めようとしたりします。しかし、この「足し算」のゲームには終わりがありません。常に次の「足りない」ものが現れ、私たちはそれに追い立てられ続けます。

瞑想の最もシンプルな形は、「ただ座る」という、究極の「引き算」、あるいは「ゼロ」への実践です。それは、普段私たちが当たり前のように行っている「何かをする」という行為から、一度立ち止まり、文字通り「何もしない」時間を持つことです。これは、現代社会において最も難しいことの一つかもしれません。なぜなら、私たちは常に何かを「生産」したり、「消費」したりすることで、自分の存在意義を確認しようとしているからです。

仏教の坐禅における「只管打坐(しかんたざ)」という言葉があります。これは「ただひたすら座る」という意味です。そこには、何か特定の悟りを開こうとか、特別な体験をしようといった目的意識はありません。「ただ座る」という行為そのものが、すでに完全な状態であると捉えられています。これは、私たちが普段、常に「こうありたい」「こうであるべきだ」という理想や目標に向かって自分を駆り立てている状態とは真逆のアプローチです。

「ただ座る」という実践は、私たちの内に湧き起こる思考や感情、身体の感覚といった、あらゆるものを「ただそのまま」に観察する機会を与えてくれます。それは、まるで岸辺に座って、川の流れを眺めるようなものです。川を流れるのは、思考であったり、感情であったり、あるいは過去の記憶や未来への不安かもしれません。普段の私たちは、その流れに飛び込んでしまったり、流れを変えようと必死になったりします。しかし、「ただ座る」という実践においては、その流れを評価したり、変えようとしたりすることなく、ただ「ああ、今こんな考えが浮かんでいるな」「ああ、今こんな気持ちを感じているな」と認識するだけで良いのです。これは、まさに空間からモノを減らすミニマリズムのように、心の空間から余分な思考や感情への執着を「手放す」練習となります。

 

「ただゆるめる」瞑想への誘い

「ただ座る」という行為を、さらに身近で気楽なものにするのが、「ただゆるめる」というアプローチです。多くの人は、瞑想をする際に、背筋を伸ばし、不動の姿勢を保たなければならないと考えがちです。もちろん、適切な姿勢は気の流れを整える上で助けとなりますが、初心者がその姿勢にこだわりすぎるあまり、身体に余計な力が入ってしまい、かえってリラックスできない、ということも少なくありません。

ここで提案したいのは、SIQAN瞑想の考え方にも通じる、「気楽に、気軽に」始める瞑想です。それは、特別な場所や時間を確保する必要はありません。椅子に座っていても、電車の中でも、あるいは寝る前のベッドの中でも構いません。重要なのは、完璧な姿勢や環境を求めるのではなく、まず「座ってみる」「立ち止まってみる」という一歩を踏み出すことです。

そして、次に意識を向けるのは、身体の「ゆるみ」です。私たちは普段、無意識のうちに様々な場所に力を入れています。肩や首、顎、そして思考にも力が入っています。「ただゆるめる」瞑想では、まず身体の各部分に意識を向け、その緊張を一つずつ手放していく練習をします。肩の力が抜けているか?顎を噛み締めていないか?眉間にシワを寄せていないか?呼吸が浅くなっていないか?

身体の緊張は、そのまま心の緊張と繋がっています。身体がゆるむと、心も自然とゆるんできます。それは、まるでギュッと握りしめていた拳を開くような感覚かもしれません。普段抑圧していた感情や、凝り固まっていた思考が、ゆるやかな流れとなって現れてくるのを感じるかもしれません。

この「ただゆるめる」瞑想は、何か特定の状態を目指すものではありません。「無」になろうと力んだり、無理にリラックスしようとしたりする必要はありません。ただ、今この瞬間の自分の状態(身体の感覚、感情、思考)を、評価や判断を加えることなく、「ただ起こる」がままに観察するのです。雑念が湧いたら、「ああ、雑念が湧いているな」と気づき、それを否定したり追い払おうとしたりせず、再び身体のゆるみや呼吸に意識を戻す。その繰り返しで構いません。

 

肩の荷が下りる感覚、そして実践へ

このような「ただ座る」「ただゆるめる」というミニマルな瞑想の実践は、私たちの心身に様々な変化をもたらす可能性があります。最も分かりやすい変化の一つは、文字通り「肩の荷が下りる」ような感覚です。普段、私たちが無意識のうちに背負っている、社会からの期待、自分自身への要求、過去への後悔、未来への不安といった重荷が、少しずつ軽くなっていくのを感じるでしょう。

これは、瞑想を通して、思考や感情との間に適切な距離を取ることができるようになるからです。私たちは普段、湧き起こる思考や感情と自分自身を同一視してしまい、「自分はこんなことを考えている」「自分はこんな気持ちでいる」と強く囚われてしまいます。しかし、「ただ座る」「ただゆるめる」練習を続けることで、思考や感情は自分自身ではなく、ただ「通り過ぎていくもの」「起こっては消えるもの」であるということに気づき始めます。この気づきが、私たちを思考や感情の嵐から少し離れた、より安定した場所に連れて行ってくれます。

また、シンプルな瞑想の実践は、集中力を高め、感情の波に振り回されにくくし、ストレスを軽減する助けとなります。さらに、自分自身の内面に深く注意を向ける練習は、自己理解を深め、本当に大切な価値観や、自分がどうありたいのか、といった本質的な問いに対する答えを見出す手助けとなる可能性を秘めています。

もちろん、これらの変化は、一度や二度の実践で劇的に起こるわけではありません。瞑想は、筋力トレーニングのように、継続することで少しずつその力が培われていくものです。しかし、その継続もまた、気楽に、気軽に、完璧を目指さずに行うことが重要です。毎日数分でも構いません。朝起きてすぐ、通勤電車の中、休憩時間、寝る前など、日常生活のちょっとした隙間時間を利用して、「ただ座る」「ただゆるめる」時間を設けてみてください。

完璧な瞑想なんてありません。雑念が湧いても、集中できなくても、眠ってしまっても構いません。それは、ただ「起こっていること」として受け入れ、またゆるやかに呼吸や身体の感覚に意識を戻せば良いのです。

さあ、難しく考える必要はありません。まずは「実践しよう」という気持ちを持って、今いる場所で、今できる形で、「ただ座る」「ただゆるめる」ことから始めてみませんか。それは、あなたの心に新しい「余白」を生み出し、現代社会を生きる上で、あなたをより軽く、より自由にしてくれる、ミニマルでパワフルな実践となるはずです。

あなたの内なる静寂と、ゆるやかな解放への旅が始まります。

 


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。