成長のために、練習の回数を増やすという選択肢もある

自己啓発

ヨガを推奨しております。
いつもは「頑張らなくていい」「減らしていこう」というお話をすることが多いのですが、今日は少し違った角度から、「練習の頻度」について、静かにお話ししてみたいと思います。
それは、決して「もっと頑張れ」と煽るものではなく、ヨガという道を歩む上で、ある種の「量」がもたらす「質的な変化」についてです。

 

現代人の「効率」と、ヨガの「稽古」

現代社会は、とにかく「コストパフォーマンス(タイパ)」を重視します。
「週1回、たった30分で劇的に変わる!」といったキャッチコピーが溢れ、私たちは最小の努力で最大の結果を得ようと躍起になっています。
もちろん、忙しい日々の中で時間を捻出するのは大変なことですし、短い時間でもやらないよりはずっと良いことは間違いありません。

しかし、ヨガ本来の文脈において、練習(アビヤーサ)は「長期間、休みなく、真摯な態度で」行われるべきものだと、経典『ヨガ・スートラ』にも記されています。
それは、ある特定のスキルを習得するための効率的なメソッドというよりは、日々の生活そのものを変容させていく「稽古」に近いものです。

週に一度のヨガは、素晴らしいリフレッシュになります。
しかし、残りの6日間を、ストレスフルで、呼吸が浅く、身体を強張らせて過ごしているとしたらどうでしょうか。
週1回のリセットが、マイナスをゼロに戻すだけで精一杯になってしまうかもしれません。
ゼロからプラスへ、さらにその奥にある深い変容へと進むためには、やはりある程度の「頻度」が必要になってくるのです。

 

回数を増やすことで見えてくる風景

練習の回数を増やすこと、例えば週1回を週3回に、あるいは毎朝の15分に変えてみること。
そうすることで、身体と心には明らかな変化が訪れます。

1. 身体の「形状記憶」が変わる
私たちの身体は、普段の姿勢や使い方の癖を記憶しています。
たまにヨガをして正しい位置に戻しても、強いゴムが縮むように、すぐに元の癖へと戻ろうとします。
しかし、頻度を上げることで、身体に「こちらが本来の快適な状態だよ」と教え込む回数が増えます。
すると、徐々に身体のデフォルト(初期設定)が書き換わっていきます。
無理に姿勢を正すのではなく、自然と良い姿勢でいる方が楽になるのです。

2. 微細な変化に気づく「感度」が上がる
毎日練習していると、「昨日はここが伸びたのに、今日は硬いな」「今日は呼吸が浅いな」といった、日々の微細な違いに気づくようになります。
これは、自分自身の状態をモニタリングするセンサーの感度が上がっている証拠です。
週に一度では、その変化の粒度(解像度)はどうしても粗くなります。
自分を観る目が養われること。これこそが、ヨガの最も大きな恩恵の一つです。

3. 「やる気」に頼らなくなる
「気が向いたらやる」というスタンスだと、私たちは常に「やる気」という不安定なエネルギーに依存することになります。
しかし、回数を増やし、生活の一部(ルーティン)にしてしまうと、「歯磨きしないと気持ち悪い」のと同じように、「ヨガをしないと一日が始まらない」という感覚になります。
意志の力を使わずに、自然とマットの上に立てるようになる。
これを「習慣の力」と呼びますが、ヨガではこれを「タパス(熱意・修練)」と呼び、精神的な強さの土台と考えます。

 

「量」は「質」への転換点を作る

誤解してほしくないのは、これが「回数をこなすノルマ」になってはいけないということです。
「毎日やらなきゃ」という強迫観念は、新たなストレスを生み、ヨガの本質である「心の静寂」から遠ざかってしまいます。
現代人はただでさえ、多くのタスクに追われています。ヨガまでタスクにしてはいけません。

大切なのは、「ヨガをしたい」という身体の声に素直に従うことです。
もし、今の練習頻度で物足りなさを感じていたり、成長の停滞(プラトー)を感じているのなら、それは「次の段階へ進む準備ができている」というサインかもしれません。
そんな時は、思い切って練習の回数を増やしてみるという選択肢があります。

水を熱し続けると、100度になった瞬間に液体から気体へと質的変化(沸騰)を起こします。
ヨガの練習も同じです。
淡々と積み重ねた「量」が、ある日突然、身体感覚や意識のあり方をガラリと変える「質的転換」を引き起こすことがあります。
「ああ、こういうことだったのか」と、理屈抜きで腑に落ちる瞬間。
その景色は、やはりある程度の時間をマットの上で過ごした人だけに開かれるものです。

 

生活全体をヨガにする

究極的には、マットの上だけが練習の場ではありません。
回数を増やすというのは、単にスタジオに通う回数を増やすことだけを指しません。
仕事中に一呼吸置くこと、歩きながら足の裏を感じること、食事を丁寧に味わうこと。
これらもすべて、立派なヨガの練習です。

スタジオでの濃密な練習(アーサナ)を増やし、さらに日常の中の小さなヨガ(マインドフルネス)を増やしていく。
そうして、一日のうち「ヨガではない時間」を減らし、「ヨガ的な時間」を増やしていく。
それが、私たちが目指す「成長」の本当の意味なのかもしれません。

無理をする必要はありません。
でも、もしあなたの内側から「もっと深く知りたい」という静かな情熱が湧いてきているのなら。
その声に従って、マットの上に立つ回数を増やしてみるのも、悪くない選択だと思います。
その積み重ねの先に、きっと新しいあなたとの出会いが待っています。

ではまた。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。