自分を変えようとする努力が、変われない最大の原因かもしれない。「ただ変える」というヨガ的アプローチ

自己啓発

自分を変えたい。
もっとポジティブになりたい、痩せたい、仕事ができるようになりたい、怒りっぽい性格を直したい。
本屋に行けば「自分を変えるための◯つの習慣」といった自己啓発本が山積みになり、SNSではキラキラしたインフルエンサーが「変わる勇気を持とう」と呼びかけています。

しかし、正直に聞いてみてください。
「変えよう」と必死に努力して、本当に変われましたか?
三日坊主で終わったり、一時的に変わったけれどすぐにリバウンドしたり、あるいは「変われない自分」を責めて自己嫌悪に陥ったりしていないでしょうか。

今日は少し逆説的なお話をします。
自分を変えるための最短ルートは、「自分を変えよう」という思考を手放すことです。
意志の力で自分を捻じ曲げるのではなく、ただ淡々と「行動を変えてみる」こと。
ヨガの叡智に基づいた、このシンプルかつ強力なアプローチについて、深く掘り下げていきましょう。

 

「変えよう」とする思考の罠

「自分を変えたい」と強く願うとき、私たちの心の奥底にはある前提があります。
それは「今の自分はダメだ」という自己否定です。
「今のままでは不十分だから、変わらなければならない」
この不足感から出発した努力は、実はとても苦しいものです。
なぜなら、努力すればするほど、「今の自分はダメだ」というメッセージを無意識に強化し続けてしまうからです。

さらに、脳科学的にも「変わろう」と意気込むことは、脳の防衛本能(ホメオスタシス)を刺激します。
脳は変化を「危険」とみなし、現状維持をしようと必死に抵抗します。
これが「やる気はあるのに続かない」メカニズムの正体です。
「明日から生まれ変わるぞ!」と気合を入れれば入れるほど、脳は全力でブレーキを踏むのです。

現代社会は私たちに「成長」や「向上」を強要します。
しかし、そのプレッシャーが、かえって私たちを萎縮させ、変化を拒む硬い殻を作らせているのかもしれません。

 

ヨガは「行為(カルマ)」

ヨガの教えにおいて、私たちの人生を作っているのは「カルマ(業)」です。
カルマというと怖い運命論のように聞こえるかもしれませんが、原義はもっとシンプルで「行為」という意味です。
思考、言葉、身体的な行動。これらすべての「行為」が種となり、それが発芽して「現実」という果実になります。

ここで重要なのは、ヨガは「性格を変えろ」とは言わないということです。
「心を入れ替えろ」とも言いません。
ただ、「行為(カルマ)を変えなさい」と説きます。

例えば、朝起きられない人がいるとします。
「早起きできるような意志の強い人間になろう」と思う必要はありません。
ただ、目覚ましが鳴ったら、何も考えずに布団から出るという「身体的な行為」をするだけです。
心の中で「眠い」「起きたくない」と叫んでいても構いません。
身体だけを動かし、行為を変える。
すると、不思議なことに、あとから心や性格がついてくるのです。

 

形から入ることの凄み

「形から入るなんて中身がない」と批判されることがありますが、ヨガは究極の「形から入る」メソッドです。
アーサナ(ポーズ)をとってみてください。
胸を開き、背筋を伸ばし、堂々とした戦士のポーズ(ヴィラバドラ・アーサナ)をとる。
その時、あなたの心の中に弱気や不安は居座り続けられるでしょうか?
身体が強さと安定を表現しているとき、心も自然とその形に共鳴し始めます。

「自分を変えよう」と思考でこねくり回す前に、まずは「形」を変えてみる。
・いつもと違う道を歩いてみる。
・いつもは着ない色の服を着てみる。
・いつもなら言わない「ありがとう」を口にしてみる。
・スマホを見る時間を10分だけ瞑想の時間に変えてみる。

どんなに些細なことでも、行動を変えれば、必ず世界からのフィードバックが変わります。
フィードバックが変われば、感情が変わり、思考が変わり、やがては「自分」という定義そのものが書き換わっていきます。
これが「ただ変えてみると変わってしまう」という魔法の正体です。

 

「私」という主語を消して実験する

スピリチュアルな視点から言えば、私たちが「自分」だと思っているものは、過去の記憶と習慣の束に過ぎません。
「私は人見知りだ」「私は継続力がない」
これらは過去のデータに基づいたレッテルであり、絶対的な真実ではありません。

このレッテルを剥がす良い方法は、人生を「実験」だと捉えることです。
「私が変わる」と重く捉えるのではなく、「もし、この行動をとったらどうなるだろう?」と科学者のように観察してみるのです。
ここに深刻さは不要です。あるのは純粋な好奇心だけ。
「今日は、笑顔で挨拶するという実験をしてみよう」
「今日は、怒りを感じたら深呼吸するという実験をしてみよう」

実験ですから、失敗しても構いません。「ああ、この方法だとこうなるのか」というデータが取れただけです。
この軽やかさが、エゴの抵抗をすり抜け、変化を加速させます。
エゴは深刻さを好みますが、遊び心の前では無力だからです。

 

全方位的に、ただ淡々と

仕事、人間関係、健康、お金。
人生のあらゆる側面において、このアプローチは有効です。
何か問題にぶつかったとき、「どうして私はダメなんだろう」と内面を掘り下げるのを一度やめてみてください。
その代わりに、「今、具体的に何を変えられるだろうか?」と行動にフォーカスするのです。

デスクの配置を変える。食べる順番を変える。返信のタイミングを変える。
小さなドミノを一つ倒せば、やがて全体が変わり始めます。
意志の力はいりません。
モチベーションもいりません。
ただ、淡々と、機械的に、新しいパターンを試してみる。
「やる気が出たらやる」のではなく、「やってみたらやる気が出る」という脳の仕組みを利用するのです。

 

結論:あなたはすでに、変わる準備ができている

ヨガの最終的なゴールは、変化することではなく、変化しない本質(真我)に気づくことですが、そのプロセスとして、私たちは変わり続けます。
川の水が常に流れ、形を変えながらも、水であることは変わらないように。

「自分を変えよう」と力む手を、ふっと緩めてみてください。
そして、今日という一日の中で、何か一つだけ、いつもと違うことを「ただ、やってみて」ください。
その小さな波紋が、いつかあなたの人生という海全体を、美しく変えていくことになるでしょう。

ただお茶を飲む、
そんなシンプルな行為の変化が、あなたの内側に驚くべき静寂をもたらすように。
変化は、意志の戦いではなく、行為という遊びの中にあります。

ではまた。

 

 


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。