「繋ぐ」が織りなす、心身の調和と宇宙との一体感:ヨガの語源について
今では日常的に使われるようになったヨガという言葉の響きには、どこか神秘的で、心を惹きつけるものがあります。
それは、サンスクリット語の動詞「ユジュ」を語源とし、「繋ぐ」「結ぶ」「結合する」といった意味を持っています。日本語では瑜伽(ゆが)として伝わりました。
まるで、糸と糸を紡いで美しい布を織りなすように、ヨガは、一見するとバラバラに存在しているように見える、様々な要素を繋ぎ合わせ、調和と統合の世界へと導いてくれるのです。
では、一体何が「繋がる」のでしょうか?
身体と心の結合
現代社会では、頭で考え、情報処理することに偏りがちです。心と身体は切り離され、まるで別々の存在のように扱われているかのようです。
しかし、ヨガは、身体と心は密接に繋がっているという、古来からの叡智を思い出させてくれます。
厳密には身体と心ではなく、もっと大きな意味での”私”と”全体”と繋げることになります。
アーサナと呼ばれるヨガのポーズを通して、私たちは自身の身体と深く対話していきます。
呼吸の動きに合わせて、丁寧に身体を動かすことで、硬くなっていた筋肉や関節が徐々にほぐれていくのを感じられるでしょう。それは、単なるストレッチ効果を超え、心身に深いリフレッシュをもたらす感覚を超え、本当の私に気づくような体験です。
身体が柔軟になっていくと同時に、心もまた、柔軟性を取り戻していきます。日々のストレスや緊張から解放され、穏やかで静かな心の状態へと導かれるのです。それが準備となり、真の私に出会っていくのです。
個別意識と宇宙意識の結合
私たちは、日々、膨大な情報や刺激にさらされ、自分自身の内面を見失いがちです。「私」という個別意識の中に閉じこもり、孤独や不安を感じることさえあるでしょう。
しかし、ヨガは、私たちが「宇宙という大きな存在の一部」であることを教えてくれ、さらに全体であることを気づかせてきます。
森羅万象、あらゆるものは、目には見えない糸で繋がっており、私たちはその一部として、この世界に存在しているのです。
瞑想の実践を通して、雑念が消え、心が静寂へと向かう時、私たちは、この宇宙との一体感を、感覚的に体験することができます。それは、言葉では言い表せないほどの、深い安らぎと静けさに包まれるような、至福の瞬間です。さらにその先に、それが当たり前であったという体験もしていくのです。
瞬間と永遠の結合
私たちは、常に時間に追われ、過去への後悔や未来への不安に心を囚われています。しかし、本当に私たちが生きることができるのは、「今、この瞬間」だけです。
ヨガは、この「今」という瞬間に意識を集中することを教えてくれます。呼吸に意識を向け、五感を研ぎ澄まし、目の前の瞬間をありのままに感じ取る。
アーサナの実践、呼吸法、瞑想。ヨガのあらゆる実践は、「今、ここ」に意識を向けるためのトレーニングです。そして、この「今」という瞬間を積み重ねていくことこそが、人生という壮大なタペストリーを織り上げていく、唯一の方法なのです。
ユジュについて
ヨガの語源「ユジュ」に込められた「繋ぐ」という言葉は、私たちに、心と身体、自己と宇宙、瞬間と永遠、あらゆるものの間に存在する、調和と統合の世界を指し示しています。
ヨーガスートラというヨガの根本教典もまた英語版では「インテグラルヨーガ」と訳されて出版されています。
ヨガ「繋ぐ」とは、私たちを苦しみから解放し、真の自由と幸福へと導くための、羅針盤のような役割を果たしてくれるでしょう。
古くは梵我一如と表現された状態を、ヨガマットの上で、そして日常生活の中で、「真の私と繋がる」ことを意識することで、あなたの人生に現れてくる。
それがヨガの目的でもあり、語源でもあります。
ヨガを通じて、より豊かで、深みのあるものへと生活が変化していくはずです。
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ヨガの基本情報まとめの目次は以下よりご覧いただけます。