掃除を推奨しております。
「ヨガスタジオのブログで、なぜ掃除の話?」と思われるかもしれません。
しかし、ヨガを深く学んでいくと、マットの上で行うアーサナ(ポーズ)と同じくらい、あるいはそれ以上に、自分が身を置く環境を整える行為――すなわち「掃除」が、本質的な実践であることに気づかされます。
掃除とは、単にゴミを捨て、汚れを拭き取るだけの作業ではありません。
それは、自分の内面と向き合い、執着を手放し、人生の主導権を自分の手に取り戻すための、神聖な儀式なのです。
今日は、掃除が私たちの心と運命にどのような変容をもたらすのか、ヨガ哲学や現代社会の問題点、そして少しスピリチュアルな視点も交えながら、深く掘り下げてみたいと思います。
もくじ.
現代社会が生む「選べない」私たち
私たちは今、かつてないほどの「選択肢」に囲まれて生きています。
スーパーに行けば何十種類ものドレッシングが並び、ネットを開けば無限のコンテンツが消費されるのを待っています。
しかし、これほど選択肢があるにも関わらず、多くの人が「自分で選べない」「流されている」と感じているのはなぜでしょうか。
それは、私たちの物理的・心理的空間が「ノイズ」で埋め尽くされているからです。
部屋の中を見渡してみてください。
「いつか使うかも」と思って取ってある空き箱、「なんとなく」買ったけれど着ていない服、読みかけの本や書類の山。
これらはすべて、過去のあなたの判断の残骸であり、現在のあなたのエネルギーを奪うノイズです。
モノが溢れた空間では、思考も散漫になります。
「あれもしなきゃ、これもしなきゃ」と意識が常に外側に向かい、本当に大切なことが見えなくなってしまう。
その結果、世間の流行や他人の意見、広告のサブリミナルなメッセージに流され、受動的に生きることを余儀なくされてしまうのです。
「選んでいる」つもりで、実は「選ばされている」。
これが、汚れた部屋がもたらす現代特有の病理です。
ヨガの第一歩は「シャウチャ(清浄)」から
ヨガの経典『ヨガ・スートラ』には、幸せに生きるための5つの実践(ニヤマ)が記されていますが、その筆頭に来るのが「シャウチャ(Saucha=清浄)」です。
身の回りを清潔に保つこと。
これは、高度な瞑想や複雑なポーズの練習よりも先に、まずやるべき基本中の基本とされています。
なぜでしょうか?
それは、環境と心は鏡合わせだからです。
ヨガでは「場」のエネルギーを非常に重視します。
塵や埃が溜まった場所には、重たく淀んだエネルギー(タマス=暗質)が停滞します。
そんな場所でいくら瞑想をしようとしても、思考は曇り、深い静寂には至れません。
逆に、掃き清められ、床が磨かれた空間には、軽やかで澄んだエネルギー(サットヴァ=純質)が満ちます。
神社やお寺に行くと背筋が伸びるあの感覚です。
掃除とは、自分の部屋を「聖域(サンクチュアリ)」に変える行為なのです。
外の世界がどれほど混沌としていても、帰る場所が清らかであれば、私たちはすぐに本来の自分に戻ることができます。
掃除は「決断」の連続である
実際に掃除を始めると、私たちはあることに気づきます。
それは、掃除が「判断」と「決断」の連続だということです。
「これは今の私に必要か? 不要か?」
「これは私をときめかせるか? 重荷になっているか?」
一つひとつのモノと向き合い、その行先を決めていくプロセスは、錆びついていた「決断の筋肉」を鍛えるトレーニングになります。
「もったいない」という過去への執着や、「いつか困るかも」という未来への不安。
それらのエゴの声と対話し、「今、ここ」の自分にとっての真実を選び取っていく。
これはまさに、マットの上で行う内観と同じプロセスです。
掃除を通して、私たちは「捨てる」という選択を繰り返します。
すると不思議なことに、人生の他の場面でも「選べる自分」へと変化していくのです。
自分を粗末に扱う人間関係に「NO」と言えるようになる。
本当にやりたい仕事を選ぶ勇気が湧いてくる。
惰性で続けていた悪習慣を手放せるようになる。
部屋の不要なモノを手放すことで生まれた物理的なスペース(空間)は、そのまま心のスペース(余裕)となります。
その余白ができて初めて、新しい運気や、本当に望む未来が入ってくることができるのです。
スピリチュアルな視点:エネルギーの滞りを流す
少しスピリチュアルな視点でお話しすると、モノにはすべてエネルギー(波動)があります。
特に、長い間使われずに放置されたモノや、壊れたモノ、嫌な思い出が詰まったモノは、低い周波数を放ち続けます。
これらは、あなたのオーラやチャクラに影響を与え、無意識のうちに活力を奪っていきます。
床を水拭きすることは、単に汚れを落とすだけでなく、地に足がついた(グラウンディング)エネルギーを取り戻す効果があります。
窓を開けて風を通すことは、プラーナ(気)の循環を促し、思考のブロックを吹き飛ばしてくれます。
トイレや水回りを磨くことは、金運や健康運、そして感情のデトックスに直結します。
掃除をしている最中に、ふと素晴らしいアイデアが浮かんだり、悩んでいたことの答えが見つかったりした経験はありませんか?
それは、空間の浄化によってあなたのアンテナがクリアになり、高次のインスピレーションを受け取りやすい状態になった証拠です。
動く瞑想(ムービング・メディテーション)としての掃除は、最強の開運アクションでもあるのです。
「選べる自分」になるために、今日からできること
いきなり家中をピカピカにする必要はありません。
ヨガと同じで、無理をすればリバウンドが来ます。
まずは、「小さな一角」から始めてみましょう。
玄関の靴を揃える: 運気の入り口を整えます。
財布の中のレシートを捨てる: お金のエネルギーを整えます。
寝る前の5分リセット: テーブルの上を何もない状態にしてから眠りにつく。
大切なのは、「やらなきゃいけない」という義務感(have to)ではなく、「この場所を心地よくしたい」という愛着(want to)で行うことです。
汚れと戦うのではなく、その場所を労り、感謝しながら磨くこと。
その意識の向け方が、空間の質を変えます。
掃除が進むにつれて、あなたは気づくでしょう。
自分は、自分の居場所を自分で作ることができる存在なのだと。
そして、自分の人生を、自分の意志で選び取ることができる存在なのだと。
汚れたら、拭けばいい。
散らかったら、片付ければいい。
何度でもリセットできるし、何度でも新しく始められる。
掃除が教えてくれるのは、そんなシンプルで力強い真理です。
整った部屋で飲むお茶の味は格別です。
その静けさの中で、あなたは次に何を選びますか?
ではまた。


