暑さ寒さも彼岸まで、とはよく言ったもので、季節の変わり目には独特の空気が漂います。
光の角度が変わり、風に含まれる水分の匂いが変わり、私たちの身体もまた、次の季節へと衣替えを始めているようです。
お彼岸ですね。
この時期になりますと、お墓参りに行かれたり、ご仏壇に手を合わせたりと、ご先祖様の供養をされる方も多いかと思います。
私たちがいま、こうして肉体を持ってここに存在しているのは、連綿と続く命のリレーがあったからこそ。
その事実に思いを馳せ、感謝を捧げる時間は、とても豊かで静かなものです。
供養の形には、様々な宗教や宗派があり、それぞれに大切にされている作法があることでしょう。
お線香をあげたり、お経を読んだり。
もちろん、それらは素晴らしい営みです。形式(カタ)には、心を整える力がありますから。
しかし今日は、そうした宗教的な枠組みを超えた、とてもシンプルで、しかし本質的な先祖供養の方法をご紹介したいと思います。
これは、インドの覚者バガヴァンが薦めているやり方です。
特定の宗教に属していなくても、どのような信仰をお持ちでも(あるいは持っていなくても)、実践できる普遍的な祈りの形です。
シンプルな祈りの構造
用意するものは何もありません。
お供え物も、特別な道具も必要ありません。
必要なのは、あなたの意識と、静かな時間だけです。
まず、静かに座り、目を閉じます。
そして、お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、あるいはもっと前の世代の、すでに亡くなられたご先祖さまのお顔を、目の前の空間にありありと思い浮かべてください。
もしお顔を知らない場合は、その存在の気配を感じるだけでも構いません。
そして、そのご先祖さまに向かって、心の中で(あるいは小さな声に出して)、このように語りかけてください。
「どうか、あなたがディヴァイン(神聖なる存在)と一体となるよう、私も祈りますから、ご自身でも祈ってください」
たったこれだけです。
とてもシンプルでしょう?
ここで言う「ディヴァイン」とは、あなたの信じる神聖な存在のことです。
守護神様、神様、キリスト様、お釈迦様、観音様、阿弥陀様。
あるいは、宇宙の大いなる意思、サムシング・グレート、純粋な光。
ご自身が最も信頼し、安心できる対象を当てはめていただければ結構です。
なぜ、これが効果的なのか
この祈りの言葉には、非常に深い意味が込められています。
私たちが通常行う供養は、生きている私たちが一方的に「供える」「祈る」という形になりがちです。
しかし、この方法は少し異なります。
「私も祈りますが、あなたご自身でも祈ってください」と促しているのです。
これは、亡くなられた魂に対して、自らの意志で光(ディヴァイン)へと向かうように、目覚めを促す言葉でもあります。
執着や未練といった重たい周波数から離れ、本来還るべき大いなる源へと溶け込んでいくこと。
ヨガで言うところの「サマーディ(合一)」の状態へと、ご先祖さまをいざなうのです。
私たちが媒介となり、ご先祖さまとディヴァインとの間をつなぐ架け橋となる。
そして、最終的にはご先祖さま自身の力で、光と一体となってもらう。
そこには依存ではなく、魂の自立と解放があります。
静寂の中でつながる
お彼岸というこの時期は、あの世とこの世の境界が薄くなる、などと昔から言われてきました。
これは迷信めいた話ではなく、私たちの意識が日常の慌ただしさから離れ、目に見えない領域へとチューニングを合わせやすい時期、という意味なのかもしれません。
このシンプルな祈りを実践したとき、不思議と心が軽くなったり、温かい感覚に包まれたりすることがあります。
それは、あなたを通して祈りが届き、何かが解消(リリース)されたサインかもしれません。
形式にとらわれる必要はありません。
ただ静かに座り、心からの言葉を届ける。
それが最も純粋で、効果的な供養となるのです。
縁側でお茶を飲むついでにでも、ふと空を見上げながら、この言葉を呟いてみてはいかがでしょうか。
過去(ご先祖)が癒やされるとき、現在(あなた)もまた、深く癒やされていくのですから。
それでは、良いお彼岸をお過ごしください。


