私たちの心の中は、実に賑やかな場所です。ひっきりなしに誰かが訪れ、何かを語りかけては去っていきます。ある時は、過去の失敗を責め立てる批判的な客。またある時は、未来への不安を煽る心配性の客。かと思えば、甘美な思い出を運んで…

私たちはまるで、止まることのできない長距離ランナーのように、日々を走り続けています。仕事の締め切り、家庭の用事、自己実現のための目標。常に前へ、前へと進むことばかりに意識が向き、ふと気づいた時には、心も身体もエネルギーが…

木のポーズ（ヴリクシャーサナ）で片足立ちになった瞬間、身体がグラグラと揺れ始める。なんとか倒れまいと足先に力が入り、呼吸は浅くなり、意識は揺れる自分自身に囚われて、さらに揺れは大きくなる。この経験は、ヨガを始めたばかりの…

私たちの「手」は、実に神秘的な存在です。それは、思考を形にする創造の道具であり、他者と温もりを分かち合うコミュニケーションの媒体であり、そして脳の働きが最も精緻に現れる「露出した脳」とも言われます。ヨガの世界では、この手…

私たちの日常は、無数の「当たり前」とされる行為で満たされています。朝、目を覚ます。呼吸をする。そして、喉の渇きを覚えて、一杯の水を飲む。この何気ない所作の一つひとつに、私たちはどれほどの意識を向けているでしょうか。特に「…

私たちは、ネオンが夜空を覆い、24時間稼働する社会の不規則なリズムの中で、かつて祖先たちが肌で感じていた大いなる自然のサイクルを見失いつつあります。その中でも、最も身近でありながら忘れ去られているのが、月のリズムです。地…

一日の始まり。まだ街が深い眠りから覚めやらぬ静寂のなか、東の空が徐々に白み始め、やがて黄金色の光が地平線の彼方から差し込む瞬間があります。この原始的で、しかし毎日繰り返される荘厳な光景に、私たちはどれほど意識を向けている…

私たちの日常は、いかに「自動操縦（オートパイロット）」モードで過ぎ去っていることでしょう。朝食を口に運びながらスマートフォンのニュースを追い、イヤホンで音楽を聴きながら通勤の道を歩く。一つの行為に集中することなく、常に心…

現代社会に生きる私たちの多くは、質の良い眠りという、生命の根源的な営みを奪われています。日中のストレス、夜遅くまでのスマートフォンの光、絶え間ない思考の反芻。それらが私たちの神経を昂らせ、身体は疲れているのに心が休まらな…

ヨガのアーサナ（ポーズ）を実践する中で、私たちの心を最もかき乱し、その本質から遠ざけてしまう罠。それは、「できる」と「できない」という、単純で暴力的な二元論です。SNSを開けば、人間離れした柔軟性や力強さで、完璧なアーサ…

ヨガのアーサナの中には、私たちの日常的な身体の使い方や世界の捉え方を、根底から覆すような力を持つものがいくつか存在します。鋤（すき）のポーズ、サンスクリット語で「ハラーサナ」と呼ばれるこのポーズは、まさにその代表格と言え…

「私は身体が硬いから、ヨガなんて無理です」――。ヨガスタジオの門を叩くことを躊躇する理由として、これほど頻繁に耳にする言葉はありません。しかし、ヨガ哲学の視点から見れば、これは「喉が渇いているから、水は飲めません」と言っ…