DAY 21 | 何もない部屋で、本当にしたいことを見つける

自己啓発

「沈黙の空間が、あなたに問いかけること」

ミニマリストゲームの第3週、その最終日。私たちは、ついに、一つの、極めて象徴的な場所にたどり着きました。それは、昨日、大きな家具を手放すという、勇敢な決断の末に現れたかもしれない、「何もない部屋」です。あるいは、これまでの20日間の積み重ねによって、モノが減り、顕になった、部屋の、がらんとした一角かもしれません。

壁、床、天井。そして、その空間に差し込む、光。ただ、それだけが存在する場所。多くの人にとって、この光景は、殺風景で、居心地の悪い、何かで「埋めなければならない」欠落として、映るかもしれません。私たちの心は、沈黙を恐れるように、空白を嫌うように、プログラムされているからです。

しかし、この21日間の旅を続けてきた、あなたにとって、この「何もない部屋」は、全く違う意味を持っているはずです。それは、欠落ではなく、無限の可能性。ノイズが消え去ったあとに現れる、純粋な静寂。そして、これまで、モノたちの喧騒にかき消されて、聞こえなかった、あなた自身の、最も深い内なる声に、耳を澄ませるための、究極の聖域です。

今日、私たちは、この何もない部屋で、最後の、そして最も重要な問いと向き合います。すべての外的要因、すべてのモノという名の「言い訳」が取り払われたとき、私は、本当に、何をしたいのか?この問いへの答えは、ミニマリストとして、新しい人生を歩き始めるための、最も確かな羅針盤となるでしょう。

 

「空(くう)」の思想:何もないからこそ、すべてが存在する

「何もない」ということの、創造的な価値。この思想は、東洋の精神文化、特に、仏教や道教において、深く探求されてきました。仏教の中心的な概念である「空(シューニャター)」は、しばしば「無」と誤解されますが、それは、虚無的な虚無を意味するのではありません。

「空」とは、すべての事物には、固定的な、独立した実体がない、という洞察です。すべてのものは、互いに依存し合い(縁起)、絶えず変化し続けている。この世界の、その流動的な本質を、指し示す言葉なのです。そして、この「実体がない」という性質こそが、あらゆるものが、変化し、生成し、新たな可能性へと開かれていくための、根拠となります。つまり、「空」であるからこそ、そこに、あらゆるものが、現れうるのです。

この思想は、空間の捉え方にも、反映されています。禅寺の石庭が、砂と石という、最小限の要素だけで、無限の宇宙を表現するように。あるいは、水墨画が、描かれていない「余白」によって、深い奥行きや空気感を表現するように。「何もない」空間は、見る者の想像力を刺激し、そこにあらゆるものを、見出すことを可能にする、能動的な装置なのです。

あなたの目の前にある「何もない部屋」。それは、まさに、この「空」の思想を、物理的に体現した空間です。そこには、家具によって規定された、「ここは、くつろぐ場所」「ここは、食事をする場所」といった、固定的な意味は、もはやありません。その空間が、何になるのか。それは、完全に、あなたの、その瞬間の、自発的な意志に、委ねられています。それは、ヨガスタジオにも、瞑想室にも、ダンスフロアにも、書斎にも、友人と語らうための広場にも、なりうる。その可能性の、なんと、自由で、豊かなことでしょう。

 

モノという言い訳からの、解放

私たちは、無意識のうちに、モノを、何かを「しない」ための、巧妙な言い訳として、使っていることがあります。
「絵を描きたいけれど、ちゃんとした画材を揃えてから」
「運動を始めたいけれど、お洒落なウェアを買ってから」
「瞑想を習慣にしたいけれど、静かな環境が整ってから」

これらの言い訳は、失敗への恐れや、始めることへの億劫さを、モノのせいにして、先延ばしにするための、自己防衛のメカニズムです。

しかし、「何もない部屋」は、私たちから、これらの言い訳を、すべて奪い去ります。そこには、あなたの身体と、あなたの意志以外、何もありません。もし、本当に、あなたが、身体を動かしたいと願うなら、その場で、すぐに、始めることができる。もし、本当に、あなたが、静かに座りたいと願うなら、その場で、すぐに、坐ることができる。

この空間は、私たちの願望の、純度を試す、リトマス試験紙のようなものです。すべての外的条件が、削ぎ落とされたとき、それでもなお、あなたの内側から、衝動として、湧き上がってくるもの。それこそが、他人の価値観や、社会の期待に影響されていない、あなた自身の、本物の「したいこと」なのです。

 

21個の最後の執着と、新しい自分との出会い

この第3週の最終日、あなたのミッションは、あなたの家の中に残っている、最後の砦ともいえる、21個のモノを手放すことです。それは、これまで、手放すことを、ためらい続けてきた、最も手ごわい相手かもしれません。

1. 「聖域」を侵食する、最後の残党
– これまで手をつけてきた、キッチン、趣味の空間、デジタル空間などを、もう一度、見渡してみてください。まだ、あなたの心を、わずかに、ざわつかせるモノが、残ってはいないでしょうか。

2. 「もしかしたら」という、最も細い糸
– 「もしかしたら、もう一度、着るかもしれない」「もしかしたら、誰かが、必要とするかもしれない」。その、かすかな可能性に、しがみついているモノたちと、最後の対話をします。その「もしかしたら」は、本当に、あなたの人生を、豊かにしてくれるでしょうか。

3. 何もない部屋で、自分自身に問いかける
– そして、今日のハイライトです。できる限り、モノが少ない空間に、身を置いてみてください。そして、ただ、静かに、そこに座る。目を閉じて、呼吸を感じる。

– 最初は、心が、落ち着かないかもしれません。何かを「すべきだ」という、長年の習慣が、あなたを、急き立てるかもしれません。その焦りを、ただ、観察します。

– やがて、その焦りの波が、引いていったあと、あなたの心の、最も深い場所から、静かな声が、聞こえてくるかもしれません。あるいは、声ではなく、身体を動かしたい、という、純粋な衝動かもしれません。歌いたい、書きたい、ただ、横になって、光を浴びたい。

– その、内側から、自然に、湧き上がってきた感覚。それこそが、この旅が、あなたにもたらした、最大の贈り物です。

ミニマリズムは、何もない、空っぽの部屋を作ることが、最終目的ではありません。それは、モノというノイズを取り除くことで、自分自身の、本当の音色を、聴くための、手段であり、プロセスです。

今日、この静かな部屋で、あなたは、新しい自分と、出会います。それは、何かを所有することで、価値を証明する必要のない、ただ、在るだけで、十分に満ち足りた、自由な存在です。この自己との、揺るぎない繋がりこそが、明日から始まる、最後の週、そして、これからの人生を、豊かに、そして軽やかに、歩んでいくための、確かな礎となるのです。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。