前項で、私たちは感情を「内なる世界からのメッセージ」として捉え直しました。では、そのメッセージを受け取った後、私たちはそれをどのように活用すればよいのでしょうか。その答えは、感情を、あなたの人生の航路を導く、極めて高性能な「ナビゲーションシステム」として信頼することにあります。私たちは皆、生まれながらにして、魂が本当に進むべき道を指し示す、内なる羅針盤を授かっているのです。
このナビゲーションシステムは、驚くほどシンプルに機能します。あなたが心地よい感情、例えば喜び、安らぎ、わくわくする感覚、愛といったものを感じている時、それは「あなたは正しいルートを進んでいます。そのまま進んでください」というサインです。その感覚は、あなたの現在の思考、言動、そして環境が、あなたの本質、すなわちヨガ哲学でいうところのプルシャ(真我)や、東洋思想でいう「天命」と調和していることを示しています。その時、あなたの生命エネルギーである「気」や「プラーナ」は滞りなく流れ、心身は最も効率的で創造的な状態にあります。
逆に、あなたが不快な感情、例えば不安、退屈、怒り、嫉妬、罪悪感などを感じている時、それはナビゲーションシステムが発する「ルートを外れました。軌道修正が必要です」というアラートに他なりません。それは罰でも失敗でもなく、単に「この道はあなたの魂が望む目的地には続いていませんよ」という、親切なガイダンスなのです。この不快感は、気の流れがどこかで滞り、不調和が生じていることを知らせるシグナルです。
ここで少しだけ現代的な比喩を用いるなら、私たちの存在そのものが特定の周波数で振動していると考えることができます。心地よい感情は高い周波数、不快な感情は低い周波数に対応し、「同じ周波数のものが引き合う」という宇宙の法則に従って、私たちの体験する現実が形成されていく、と捉えることもできるかもしれません。この観点から見れば、感情は、今あなたがどの周波数の現実を創造しているかを示す、リアルタイムのインジケーターなのです。
しかし、私たちは長らく、この内なるナビゲーションシステムよりも、頭で考え出した地図や、他人が決めたルール、社会的な「べき論」を優先するように教えられてきました。その結果、自分の感覚を信じられなくなり、人生の重要な決断を「どちらが得か」「どちらが正しいか」といった論理だけで下そうとして、迷子になってしまうのです。
これからは、人生の岐路に立った時、思考だけで結論を出す前に、ぜひあなたの身体に問いかけてみてください。「Aという選択肢を考えた時、私の胸はどんな感じがするだろう? 広がる感じがするだろうか、それとも縮こまる感じがするだろうか」。「Bという人物と一緒にいる時、私の呼吸は深くなるだろうか、それとも浅くなるだろうか」。この身体感覚を伴った感情のフィードバックこそ、論理を超えた、より根源的なレベルからの答えなのです。
この内なるナビゲーションシステムを信頼することは、ある種の「稽古」を必要とします。初めは小さな声にしか聞こえないかもしれません。しかし、意識的に耳を傾け、その導きに従って小さな一歩を踏み出す経験を重ねるうちに、その声は次第にクリアになり、あなたは絶対的な信頼を寄せることができるようになるでしょう。そうして、あなたは地図にない道を、自分だけの星を頼りに、確信をもって進んでいくことができるようになるのです。


