投資と聞くと、多くの人は「株」や「不動産」といった金融商品を思い浮かべるかもしれません。
NISAやiDeCoの話題が日常的に交わされるようになり、「老後2000万円問題」への不安から、誰もが資産形成に躍起になっている現代社会。
もちろん、経済的な基盤を整えることは、生きていく上でとても大切です。
しかし、ヨガを長く実践し、多くの人々の悩みと向き合ってきた経験から申し上げますと、お金だけを増やしても、人は必ずしも幸せにはなれません。
通帳の残高が増えても、それを使う身体がボロボロでは意味がありません。
資産があっても、常に「失うかもしれない」という不安に苛まれていては、心は貧しいままです。
真に豊かな人生を送るためには、バランスの取れたポートフォリオが必要です。
それは、「健康への投資」「物の見方(視点)への投資」、そして「金融への投資」の3つです。
今日は、この3つの投資について、ヨガ哲学の視点も交えながら、少し深く掘り下げてお話ししたいと思います。
健康への投資:すべての土台となる資本
まず、何をおいても最優先すべきなのが、あなた自身の「心身」への投資です。
これは、最もリターンの確実性が高く、かつ複利効果が大きい投資と言えます。
・現代社会の落とし穴
私たちは忙しさを言い訳に、自分のメンテナンスを後回しにしがちです。
コンビニ弁当で食事を済ませ、睡眠時間を削って働き、休日は動画を見てダラダラ過ごす。
そのツケは、30代、40代と年齢を重ねるごとに、確実に身体に現れてきます。
慢性的な疲労、腰痛、メンタルの不調。
病気になってから治療費にお金をかけるのは「浪費」ですが、病気にならない身体を作るためにお金と時間を使うのは立派な「投資」です。
・ヨガ的アプローチ
ヨガのアーサナ(ポーズ)やプラーナヤーマ(呼吸法)は、まさにこの健康投資の実践です。
単に筋肉をつけるだけでなく、自律神経を整え、内臓機能を高め、エネルギー(プラーナ)の循環を良くする。
それは、身体という「資本」の耐用年数を延ばし、パフォーマンスを最大化することに他なりません。
・また、食事も大切です。
ヨガでは「サットヴァ(純質)」な食事を推奨します。新鮮な野菜や果物、消化に良いもの。
添加物の多い食品を避け、質の良い水や食材にお金を使うことは、あなたの細胞一つひとつへの投資です。
健康な身体さえあれば、何度でも挑戦できますし、人生を楽しむことができます。
「身体が資本」という言葉は、比喩ではなく、紛れもない事実なのです。
物の見方(視点)への投資:心を自由にする智慧
次に重要なのが、「物の見方(視点)」への投資です。
これは少し抽象的かもしれませんが、実は人生の幸福度を最も左右する要素です。
同じ出来事に遭遇しても、それを「不幸だ」と捉える人と、「学びだ」と捉える人がいます。
この違いを生むのが「視点(ダルシャナ)」です。
・現代社会の問題点:比較と競争の罠
SNSの普及により、私たちは常に他者と自分を比較させられる環境に生きています。
「あの人はあんなに成功しているのに」「自分はなんてダメなんだ」
どれだけお金やモノを持っていても、この「比較と比較による自己否定」というフィルターを通して世界を見ている限り、心に安らぎは訪れません。
常に「もっと(More)」を求め続ける、終わりのない競争のラットレースに巻き込まれてしまいます。
・ヨガ的アプローチ:智慧への投資
ここで言う投資とは、本を読んだり、哲学を学んだり、あるいは瞑想を学んだりすることにお金と時間を使うことです。
ヨガ哲学(ヴェーダ)は、私たちに「真実を見抜く目」を与えてくれます。
・「足るを知る(サントーシャ)」ことで、今ある豊かさに気づく視点。
・「結果に執着しない(カルマ・ヨガ)」ことで、プロセスそのものを楽しむ視点。
・「すべては変化する(アニッチャ)」ことを受け入れ、変化を恐れない視点。
・視点を変えることは、現実を変えることと同義です。
いくら外側の環境を変えても、内側のレンズが曇っていれば世界は曇って見えます。
逆に、レンズを磨けば、何気ない日常が輝いて見え始めます。
セミナーやリトリートに参加したり、良書に出会ったりすることは、あなたの心のOS(オペレーティングシステム)をアップデートするための、極めて有効な投資なのです。
金融への投資:選択肢を増やすための道具
そして最後に、金融への投資です。
スピリチュアルな世界ではお金を忌避する傾向もありますが、ヨガではお金そのものを悪とは見なしません。
お金は「エネルギー」であり、自由な選択をするための「道具」です。
・現代社会の不安と向き合う
貨幣価値の変動やインフレのリスクがある現代において、現金をただ銀行に眠らせておくのはリスクでもあります。
将来への不安(老後資金など)が大きすぎると、その不安が「今」を生きるエネルギーを奪ってしまいます。
「お金がないから嫌な仕事を辞められない」「お金がないから学びたいことが学べない」
そういった制限を外し、人生の選択肢を広げるために、適切なお金の管理と運用は必要です。
・ヨガ的アプローチ:アルタ(富)の追求
古代インドの人生の4つの目的(プルシャアルタ)の一つに「アルタ(富・財産)」があります。
ただし、それはあくまで「ダルマ(調和・正義)」に基づいたものでなければなりません。
誰かを騙したり、環境を破壊したりして得た富は、カルマ(業)となって自分に返ってきます。
金融投資をする際も、ただ利回りが高ければいいというわけではありません。
「応援したい企業に投資する」「社会を良くするファンドを選ぶ」といった視点を持つことが大切です。
また、投資に一喜一憂しない「不動心」を養うことも重要です。
市場は常に変動します(諸行無常)。
上がった下がったに心を振り回されるのではなく、長期的な視点で淡々と積み立てる。
それはある意味、忍耐と規律を学ぶ精神修業にもなり得ます。
お金は主人ではなく、良き従者であるべきです。
お金に使われるのではなく、自分の人生の目的(ダルマ)を実現するために、賢くお金を使うこと。
そのための知識(ファイナンシャル・リテラシー)を身につけることも、立派な投資の一つです。
3つの投資の黄金バランス
これら3つの投資は、相互に関連し合っています。
健康(身体)がなければ、視点を磨く気力も湧きませんし、お金を楽しむこともできません。
視点(心)が整っていなければ、健康への不安やお金への執着に押しつぶされてしまいます。
金融(お金)の余裕がなければ、健康的な食事や学びへの投資を継続することが難しくなります。
どれか一つに偏るのではなく、この3つのバランスを整えていくこと。
もし今、あなたが将来への不安を感じているなら、まずは深呼吸をして、自分自身に問いかけてみてください。
「私は今、どこへの投資が不足しているだろうか?」
株価をチェックする時間の半分を、自分の身体をケアする時間や、良質な本を読む時間に変えてみる。
それだけで、あなたの人生のポートフォリオは、より強固で豊かなものへと変わっていくはずです。
投資とは、未来の自分へのプレゼントです。
お金だけでなく、健やかな身体と、自由な心という、最高の財産を未来の自分に贈ってあげてください。
すべてはエネルギーです。溜まってしまうと澱んでしまいます。
ではまた。


