【警鐘】スピリチュアル・マテリアリズム(精神的物質主義)という罠。ヨガが「エゴの強化」に使われるとき

自己啓発

ヨガを推奨しております。
しかし、ヨガや瞑想がブームになるにつれて、ある種の危うさを感じることも少なくありません。
それは、本来「エゴ(自我)」を手放すためのツールであるはずのヨガが、逆に「エゴを肥大化させる」ための道具として使われてしまっている現象です。

これを、チベット仏教の指導者チョギャム・トゥルンパは「スピリチュアル・マテリアリズム(精神的物質主義)」と呼び、強く警鐘を鳴らしました。
平たく言えば、「精神的なコレクション」です。
ブランドのバッグを買い集めるのと同じ感覚で、資格、瞑想体験、高尚な知識、あるいは「悟り」そのものを収集し、それを「自分」というショーケースに飾って満足する。

これは非常に「ヤバい」状態です。
なぜなら、世俗的な欲望よりも、精神的な衣をまとった欲望の方が、はるかに見えにくく、タチが悪いからです。
今日は、現代のヨガやスピリチュアル界隈に潜むこの深い落とし穴と、そこから抜け出し、ヨガの本質(本来の静寂)に還る道について、深く掘り下げて書きたいと思います。

 

なぜ「精神的な人」のエゴは強くなるのか

「私はベジタリアンで、毎朝5時に起きて瞑想をし、ヨガの聖典を学んでいます」
そう語る人の瞳の奥に、もし他者を見下すような優越感が潜んでいたとしたら、それはヨガではありません。
それはただの「ナルシシズムの変装」です。

現代社会は、私たちに「何者かになること」を強要します。
会社での肩書き、年収、SNSのフォロワー数。
そういった世俗的な競争に疲れた人が、救いを求めてスピリチュアルな世界に入ってくることはよくあります。
しかし、ここで心の仕組み(マインド)の巧妙な罠が発動します。

競争の舞台を「物質界」から「精神界」に移しただけで、やっていることは同じなのです。
「あの人はまだ目覚めていない(けれど私は目覚めている)」
「あの人の波動は低い(けれど私は高い)」
このように、スピリチュアルな用語を使って他者と自分を分離し、自分を「特別な地位」に置こうとする。
これは、ヨガで最も戒めるべき「アスミター(我慢・エゴ意識)」の強化に他なりません。
エゴにとっては、高級車を乗り回して自慢するのも、チャクラが開いたと自慢するのも、栄養源としては同じ味なのです。

 

資本主義と「悟りの商品化」

現代の消費社会、資本主義システムもこの傾向に拍車をかけています。
書店に行けば「宇宙にお願いするだけで年収1億円」「引き寄せの法則で全てが手に入る」といった本が並んでいます。
これは、スピリチュアルの皮を被った「欲望の肯定」です。

誤解を恐れずに言えば、本来のヨガや仏教は「欲望(ラーガ)」の苦しみから離れるための教えであり、欲望を叶えるための魔法ではありません。
しかし、現代社会では「不安」と「欲望」がビジネスの燃料になります。
「今のままのあなたでは不十分です」と不安を煽り、「このワークショップを受ければ高次元にアクセスできます」と解決策を売る。

これは「精神的な消費活動」です。
次から次へと新しいメソッド、新しいグル(指導者)、新しいパワースポットを消費し続ける。
しかし、どれだけ外側の「聖なるアイテム」を集めても、内側の欠乏感は埋まりません。
なぜなら、探している青い鳥は、カゴの中(自分の内側)にしかいないからです。

 

ヨガの本来の教え:削ぎ落としの美学

では、本来のヨガとはどのようなものでしょうか。
それは「何かを得る」プロセスではなく、「何かを手放す」プロセスです。
サンスクリット語では、これを「ネティ・ネティ(これではない、これではない)」と言います。

私は身体ではない。
私は感情ではない。
私は職業ではない。
私は「ヨガをしている人」というアイデンティティですらない。

そうやって、玉ねぎの皮を剥くように、後付けのラベルを一枚一枚剥がしていった後に残る、純粋な「観る者(プルシャ)」。
その静寂に触れることだけが、ヨガの目的です。
そこに「特別さ」はありません。
禅の言葉に「本来無一物(ほんらいむいちもつ)」とあるように、何もないことの清々しさがあるだけです。

本当にヨガが深まっている人は、どんどん「普通」になっていきます。
特別オーラを出すこともなく、他者をジャッジすることもなく、ただ静かに、機嫌よく、日々の生活を営んでいる。
「山に籠もること」よりも、「洗い物をしながら呼吸を感じること」の尊さを知っている人です。

 

「ヤバい」状態から抜け出すための処方箋

もし、自分が「スピリチュアル・マテリアリズム」に陥っているかもしれないと感じたら(それに気づけること自体が素晴らしい才能です)、以下の3つのことを意識してみてください。

① 「特別」でありたい欲求を観察する
「すごいと思われたい」「認められたい」という感情が湧いてきたら、それを否定せず、ただ観察してください。
「ああ、私のエゴが餌を欲しがっているな」と、客観視するのです。
気づくだけで、エゴの暴走は止まります。

② 実践を秘密にする
昔の行者は、自分の修行内容を決して他言しませんでした。
現代なら、SNSに「今日の朝ヨガ最高!」と投稿するのを、一回我慢してみる。
誰からの「いいね」ももらわず、ただ自分と宇宙との間だけで完結させる。
承認欲求のフィルターを通さない行為こそが、魂の純粋な栄養になります。

③ 「グラウンディング」:生活を丁寧にする
チャクラやエネルギーといった見えない世界に意識が向きすぎると、足元がおろそかになります。
ヨガマットの外側の生活を大切にしましょう。
部屋を掃除する、靴を揃える、家族の話をちゃんと聞く、仕事のメールを丁寧に返す。
神は細部に宿ります。
当たり前の日常(ケ)をおろそかにして、高尚な世界(ハレ)に逃げないこと。
現実生活から逃避するためのスピリチュアルは、ただの麻薬です。

 

終わりに:ただ、縁側で茶を啜るように

ヨガは、スーパーマンになるための技術ではありません。
鎧を脱いで、ただの「人間」に戻るための技術です。

知識も、経験も、悟りさえも、握りしめれば「荷物」になります。
その荷物をすべて下ろして、手ぶらになること。
スピリチュアル・マテリアリズムという豪華な装備を脱ぎ捨てて、素っ裸の心で世界と対峙すること。

その時初めて、私たちは世界と分離のない「ワンネス(統合)」を体験します。
それは、キラキラした光が見えることではなく、
「ああ、今日のお茶が美味しいな」
「風が気持ちいいな」
という、静かで深い充足感の中にあります。

何かになろうとせず、ただ、在る。
そのシンプルさに還りましょう。
EngawaYogaは、そのための「何もしない場所」であり続けたいと思っています。

ではまた。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。