終わりのない競争から降りるために。ヨガが教える「比較」を手放す生き方と本当の豊かさ

自己啓発

ヨガを推奨しております。
それは、ヨガが単なるエクササイズではなく、私たちが無意識に参加させられている「終わりのないレース」から、そっと抜け出すための智恵だからです。

私たちは生まれた瞬間から、競争の中に放り込まれます。
学校での成績、運動会の順位、受験、就職活動、出世競争。
大人になってもそれは終わりません。
年収、住んでいる場所、所有している車や時計、結婚しているか否か、子供がいるかいないか。
さらにはSNSを開けば、フォロワー数や「いいね」の数で、自分の価値が数値化されてしまう時代です。

「もっと上へ」「もっと多く」「もっと速く」。
この資本主義社会が鳴らし続ける号令に合わせて、私たちは走り続けています。
立ち止まることは「負け」や「脱落」を意味すると脅されながら。
しかし、ふと息が切れた瞬間に、胸の奥から静かな声が聞こえてこないでしょうか。

「一体、どこに向かって走っているのだろう?」
「この競争に、ゴールはあるのだろうか?」

今日は、この現代社会という巨大な競争システムから降りて、自分自身の呼吸を取り戻すことについて、ヨガの視点から深くお話ししてみたいと思います。

 

なぜ私たちは比較をやめられないのか

ヨガの哲学では、私たちの苦しみ(ドゥッカ)の根本原因の一つに「アヴィディヤー(無知)」があると説きます。
これは知識がないということではなく、「本当の自分を知らない」ということです。

本当の自分(プルシャ)は、本来、完全であり、満たされており、何者とも比較不可能な存在です。
しかし、私たちはその真実を忘れ、自分の価値を「外側のもの」で測ろうとします。
他者との比較によってしか、自分の輪郭を確認できなくなっているのです。
「あの人より優れているから私は価値がある」「あの人より劣っているから私はダメだ」。
この相対的な評価軸の中にいる限り、安らぎが訪れることは永遠にありません。
なぜなら、上には上が必ずいるからです。
世界一の大富豪になっても、今度は「それを失うかもしれない恐怖」との戦いが始まります。

この比較という病は、私たちの「不足感」から生まれています。
「今のままでは足りない」という思い込み。
マーケティングや広告は、この不足感を巧みに刺激し、「この商品を買えば、あなたは満たされますよ」と囁きます。
しかし、外側の何かで埋めた穴は、すぐにまた乾いてしまいます。
私たちは、底の抜けたバケツに水を注ぎ続けているようなものなのです。

 

ヨガマットの上にも持ち込まれる競争

皮肉なことに、心の安らぎを求めてヨガを始めた人でさえ、この競争のマインドセットを持ち込んでしまうことがあります。
「隣の人よりポーズが綺麗にできているか」
「先生のように柔軟になれるか」
「難しいアーサナ(ポーズ)ができる自分は優れている」

これを「スピリチュアル・マテリアリズム(精神的物質主義)」と呼びます。
お金や地位の代わりに、精神的な達成度やヨガのスキルを競争の道具にしてしまっているのです。
「私はこんなに修行している」「私は悟りに近づいている」。
その背後にあるのは、やはり「他者より特別でありたい」というエゴ(自我)の叫びです。

しかし、ヨガの本質は、ポーズの美しさや柔軟性を競うこととは対極にあります。
ヨガ(Yoga)の語源は、サンスクリット語の「Yuj(ユジュ)」。「結ぶ」「調和する」という意味です。
誰かと競って勝つことではなく、バラバラになってしまった心と身体、そして自分と世界を再び結びつけること。
マットの上は、誰かとの戦いの場ではなく、自分自身との対話の場であり、絶対的な平和(シャンティ)の練習場であるべきなのです。

 

「降りる」という勇気

競争から降りるとは、「負けを認める」ことでも「怠惰になる」ことでもありません。
それは、ゲームのルール自体を変えてしまうことです。
「他者との比較」という垂直方向のハシゴを降りて、「自分自身の深さ」という水平方向の広がりへと進むことです。

想像してみてください。
誰もいない静かな森の中で、一本の木が立っています。
その木は、隣の木より高く伸びようと焦っているでしょうか?
自分の枝ぶりを他の木と比べて落ち込んでいるでしょうか?
ただ、太陽の光を浴び、大地から水を吸い上げ、自分自身の生命を全うしています。
それが「自然(じねん)」であり、本来の私たちの姿です。

競争から降りたとき、初めて見えてくる景色があります。
隣の人は「敵」や「比較対象」ではなく、共に今を生きる「仲間」になります。
焦燥感が消え、今ここにある幸せに気づけるようになります。
「何者かにならなければ」という重圧から解放され、「ただ在るだけでいい」という深い肯定感が湧いてきます。

 

足るを知る(サントーシャ)の実践

では、具体的にどうすればこの競争から降りられるのでしょうか。
ヨガの教え(ニヤマ)にある「サントーシャ(知足)」が大きな鍵となります。
「足るを知る」。
これは、現状に妥協して我慢するという意味ではありません。
今の自分、今の環境、今持っているものの中に、すでに十分な豊かさがあることに気づくということです。

朝、目が覚めて呼吸ができていること。
温かいお茶が飲めること。
大切な人と笑い合えること。
身体が動くこと。

これらは当たり前のことではなく、奇跡的な恵みです。
ないものを数えるのをやめて、あるものを数え始める。
感謝の周波数に意識を合わせると、不足感は霧散し、競争する必要性が自然と消滅します。
あなたはすでに、完全なのです。
何かを足さなくても、何かにならなくても、生命として完璧な輝きを持っています。

 

魂の目的を思い出す

スピリチュアルな視点から言えば、私たちがこの地球に生まれてきた目的は、誰かに勝つためでも、資産を増やすためでもありません。
様々な経験を通じて、愛や調和、創造性を学ぶためです。
魂レベルでは、すべての存在は繋がっており(ワンネス)、優劣など存在しません。
右手が左手より優れていると競うことが無意味なように、私たちが他者と競うことも本質的には無意味なのです。

もし、あなたが今、競争に疲れ果てているのなら、それは魂からのサインかもしれません。
「そっちじゃないよ」「もう十分頑張ったよ」という内なる声です。
その声に耳を傾けてください。
勇気を持って、レースのコースから外れてみてください。
そこには、敗北者の惨めな道ではなく、あなただけの美しい花道が広がっているはずです。

 

終わりに:EngawaYogaでの静寂

この場所が、あなたが「競争者」という仮面を脱ぎ捨て、ただの「素の自分」に戻れる場所であればと願っています。
肩の力を抜いて、深く息を吐いて。
勝ち負けのない世界で、ただ静かに、ご自身の命の音を聴いてみませんか。
降りることは、落ちることではありません。
本来の場所へ、大地へ、自分自身へと、還ることなのです。

ではまた。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。