何を練習するといいですか?ヨガを始めてアサナを上達させたいのですが

365days

ヨガの世界へようこそ。アサナ(ヨガのポーズ)をもっと上達させたい、美しくポーズを決めたいと願う熱心な気持ちは、練習を始める上で素晴らしい原動力になります。

しかし、いざクラスに通い始めると、周囲の人々が涼しい顔で難易度の高いポーズを決めている姿を目にし、焦りや劣等感を抱いてしまうこともあるでしょう。

「もっと柔軟性を高めなければいけない」「筋力を鍛えてアクロバティックなポーズができるようになりたい」と、つい外側の形ばかりを追い求めてしまうのは、初心者の誰もが通る道だと言えます。

実は、ヨガ哲学におけるアサナの定義を知ると、私たちが本当に練習すべき本質的なポイントが見えてくるのです。今回は、ポーズを単なる肉体のエクササイズに終わらせず、真の意味でアサナを上達させるための道標を、東洋思想の智恵を交えながら解き明かしていきましょう。

 

アサナの本来の定義。安定と快適さの探求

まず、私たちが普段「ポーズ」と呼んでいるアサナの、歴史的な背景に触れてみましょう。今から二千年以上前にパタンジャリが編纂したヨガの根本経典『ヨーガ・スートラ』において、アサナに関する記述は驚くほどシンプルに記されています。

経典に登場する定義は「スティラ・スッカム・アーサナム」という一文に集約されるのです。スティラとは「安定していること(強さ・不動性)」を意味し、スッカとは「快適であること(軽さ・心地よさ)」を指す言葉に他なりません。

つまり、ヨガにおける「上達したアサナ」とは、体が柔らかいことや、難しいポーズができることそのものを指すわけではないと言えます。どのような姿勢をとっていても、その肉体にブレない安定感があり、同時にどこにも緊張がなく完全に快適でリラックスしている状態こそが、真の上達なのです。これを踏まえると、アサナの練習において最も重要なのは、筋肉を無理に引き伸ばすことではなく、無駄な力みや執着を手放すことだと気づくでしょう。

 

身体の不要な力を引き算し、ユルユルに解きほぐす

アサナを上達させるために初心者がまず取り組むべき最初の練習は、筋力を鍛えることではなく、「身体の余計な力を抜く」ことです。多くの人は、新しいポーズに挑戦するときに「頑張ろう」として、無意識に全身の筋肉を硬直させてしまいがちです。

これは、ヨガ哲学で言う「アスミター(自我意識・エゴ)」が、自分の実力以上の姿を見せようと踏ん張っている状態と言わざるを得ません。エゴが勝っている状態では呼吸が止まり、怪我をするリスクが格段に高まってしまいます。

そのため、私たちはまず身体を徹底的に「ユルユル」にほぐす練習を重ねる必要があるのです。特に関節まわり(股関節や肩甲骨、足首など)の緊張を丁寧に緩めていきましょう。硬い部分を無理やり引っ張るのではなく、重力に身を委ね、吐く息とともに緊張が抜けていく感覚をじっくりと観察するのです。ポーズの形に自分を合わせるのではなく、今ここにある自分の身体の軽さに合わせてアサナを形作っていく、引き算のミニマリズムこそが上達への近道と言えます。

 

呼吸(プラーナヤーマ)という揺るぎない錨を降ろす

アサナの練習をしている最中、あなたの呼吸はスムーズに通っているでしょうか。もし、ポーズをキープしながら痛みに耐え、呼吸が浅くなったり止まったりしているのだとしたら、それはすでにアサナの目的から逸脱しています。

呼吸が通っていないポーズは、ヨガではなく単なる「肉体の我慢大会」になってしまっていると言えるでしょう。ヨガにおける呼吸(プラーナヤーマ)は、私たちの精神と肉体を繋ぐ最も重要で力強い架け橋に他なりません。

上達のための確実なアプローチは、「呼吸の波が静かに一定に繰り返される領域」でポーズを深めることです。ポーズをとっているときに呼吸が乱れたら、それは身体が「これ以上は無理をしていますよ」とサインを出している証拠だと言えます。

その瞬間に一歩手前のポジションまで戻り、深く穏やかな呼吸を取り戻してください。呼吸という錨をしっかりと降ろしておくことで、身体の内側のエネルギー(プラーナ)がスムーズに循環し、無理なく身体の柔軟性や強さが引き出される仕組みです。

 

ただ静かに座る、SIQAN(シカン)の実践

驚かれるかもしれませんが、アサナを格段に上達させるための最強の裏技は、難しいポーズを練習することではありません。本当に必要なのは、「ただ静かに座り、内側を見守る瞑想」を日課にすることなのです。

私たちはこれを「SIQAN(シカン)」と呼んで提案していますが、これは心をクリアにし、今十分に在るための最も基礎的な訓練と言えます。身体を派手に動かしているとき、私たちの意識は外側の見栄えや、他者の視線といったノイズに容易に引きずられてしまうでしょう。

一方で、ただ静かに座って自らの微細な呼吸や身体感覚に耳を澄ませる時間は、内的な観察眼を劇的に鋭くしてくれます。この静的な観察者としての視点(プルシャ)が育まれると、アサナの最中にも「今、右の骨盤が少し後ろに逃げているな」「左の肩に不要な力が入っているな」といった心身の微細なエラーに即座に気づくことができるのです。

動く前にまず、静まること。この静寂のプラクティスこそが、アサナのクオリティを劇的に高めるための、見えない土台を形成することに他なりません。

 

足るを知る「サントーシャ」の生き方を取り入れる

最後にお伝えしたい最も大切な練習は、生き方としてのヨガの哲学、とりわけ「サントーシャ(知足・足るを知る)」を日常生活に取り入れることです。アサナを始めると、「もっと柔らかくならなければ」「あのポーズが完璧にできるようになりたい」という執着(ラーガ)がどうしても芽生えます。

しかし、この「もっと、もっと」という無限の追い求めは、心を常に波立たせ、現在の自分を「不完全なもの」として否定する回路を作り出してしまうのです。東洋思想が大切にするのは、今ここにある自らの身体に深く満足し、与えられた可動域の中で最大限の調和を見出す姿勢と言えます。

身体が硬いのであれば、その硬さをありのままに認め、その中で最も心地よい呼吸が通る場所を探せば良いだけなのです。不思議なことに、この「今のままで素晴らしい」という深い自己受容が起きたとき、身体は内側からユルユルと解きほぐれ、結果としてアサナが劇的に柔らかく、美しく上達していきます。

外側の成果を追いかけるマインドそのものを手放すこと。これこそが、伝統的なヨガが指し示すアサナの真の上達への道であり、エゴから脱却するミニマリズムの極致だ言えるでしょう。

 

おわりに。自分だけの静かな旅路を歩む

ヨガのアサナの上達とは、決して他者と美しさを競うための競争ではありません。それは、自らの肉体という最も身近な小宇宙を通じて、内なる静寂(プルシャ)へと還っていくための、極めてプライベートで神聖なプロセスです。

あれこれと新しいアプローチを付け足すのをやめ、無駄な力を抜き、ただ深い呼吸とともに「今ここ」に佇んでみてください。あなたが自分の身体を愛し、その声に静かに耳を傾け始めるとき、アサナは自然と、息をのむほど美しく安定したものへと変化していくはずです。

都会のせわしない日常から一歩退き、私たちと一緒に、不要なものを手放していく「引き算の練習」を静かに始めてみませんか。



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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、ENQAN(ヨガ)、JIQAN(内観)、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。