63.食事におけるアヒンサー – 命をいただくことへの感謝

アヒンサー(非暴力)の教えは、哲学的な思索や瞑想の中だけで完結するものではありません。それは、私たちの毎日の食卓という、極めて具体的で生命的な舞台においてこそ、その真価が問われる実践です。何を、そしてどのように食べるか。この日々の選択は、私たちがこの地球や他の生命とどのような関係性を結んでいるかを、雄弁に物語っています。

ヨガの姉妹科学であるアーユルヴェーダでは、食物をその性質によって三つに分類します。生命エネルギー(プラーナ)に満ち、心に純粋性や調和をもたらす「サットヴァ」な食事。刺激的で、心を激しく活動的にさせる「ラジャス」な食事。そして、古く、生命力に乏しく、心身を重く停滞させる「タマス」な食事です。ヨガを実践する者は、新鮮な野菜や果物、穀物といったサットヴァな食事を摂ることが推奨されます。これは、私たちの身体と精神の状態が、口にするものによって直接的に形成されるという深い理解に基づいています。

アヒンサーの文脈で食事を考える時、多くの人がまず直面するのが、菜食主義(ベジタリアニズムやヴィーガニズム)という選択でしょう。確かに、他の生き物の命を直接奪うことなく生きるという選択は、アヒンサーの理念を非常に純粋な形で実践する道の一つです。特にジャイナ教では、殺生を避けることが徹底され、その思想はヨガにも大きな影響を与えました。しかし、ヨガの道は一つではありません。すべての人に画一的な食事法を強制することは、それ自体が一種の暴力になりかねません。大切なのは、理念に盲従することではなく、自分自身の身体の声を聞き、今いる場所で、自分にできる最善の「よりアヒンサー的な選択」を意識することです。

そして、「何を食べるか」ということ以上に、あるいはそれと同じくらい重要なのが、「どのように食べるか」という心の在り方です。

もしあなたが肉を食べる選択をするのであれば、その一口が、かつて生きていた一つの命の犠牲の上にあるという事実から目を背けないこと。その命への深い感謝と敬意を心に抱くこと。日本の食卓に根付く「いただきます」という美しい言葉は、まさにこのアヒンサーの精神の表れです。それは、食材となった動植物の「命を、私の命にさせていただきます」という、謙虚で神聖な宣言なのです。

この感謝の態度は、食事という行為を、単なる空腹を満たすための作業から、命の大きな循環に参加する儀式へと昇華させます。感謝していただく食事は、私たちの細胞の隅々にまで浸透し、身体だけでなく、魂をも養うでしょう。

同時に、食事におけるアヒンサーは、自分自身の身体に対する非暴力でもあります。ストレスからくる過食、美醜の基準に囚われた拒食、身体を内側から蝕むジャンクフードへの依存。これらはすべて、この世で唯一無二の、あなたの魂の器である身体を傷つける行為に他なりません。本当に身体が欲しているものは何か、その微細な声に耳を澄まし、愛をもって応えることが、食事における自己へのアヒンサーの実践です。

引き寄せの観点から見ると、感謝と共に食事をすることは、「私は宇宙から豊かな恵みを受け取るに値する存在だ」という肯定的なメッセージを、自らの全存在で体現する行為です。欠乏感から焦ってかき込む食事は、さらなる欠乏を引き寄せます。一方、一口一口を味わい、その背後にある無数の繋がり(太陽、水、大地、生産者、料理してくれた人…)に思いを馳せながらいただく食事は、豊かさと充足の波動を発信し、さらなる豊かさの循環を呼び込むのです。

今日の食事から、始めてみませんか。目の前にある食べ物を、ただの「物」としてではなく、命の結晶として見つめ、心からの「いただきます」を捧げることを。その瞬間、あなたの食卓は、宇宙との繋がりを取り戻す聖なる祭壇となるでしょう。



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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、ENQAN(ヨガ)、JIQAN(内観)、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。