6.ウジャイ呼吸 – 内なる海の響きに耳を澄ます

365days

ヨガのクラスに参加すると、時折、隣のマットから「シュー」という、まるで海の波のような、あるいは風が木の葉を揺らすような、静かで連続的な音が聞こえてくることがあります。これは「ウジャイ呼吸」と呼ばれる、古くから伝わる調気法(プラーナーヤーマ)の一つです。

「ウジャイ(Ujjayi)」とは、サンスクリット語で「勝利に満ちた」あるいは「支配するもの」といった意味を持ちます。これは、他者との競争に打ち勝つことではなく、絶えず移り変わる自らの呼吸と心を制御し、その主人となることにおける「勝利」を指しています。アシュタンガヨガやヴィンヤサヨガのように、呼吸と動きを連動させるスタイルのヨガでは、このウジャイ呼吸が練習の土台となります。

ウジャイ呼吸の音は、喉の奥にある声門(声帯の入り口)をわずかに狭めることで生まれます。息の通り道を少しだけ細くすることで、空気が通る際に穏やかな摩擦音が生じるのです。よく「ダース・ベイダーの呼吸」と喩えられますが、力強く威圧的な音ではなく、あくまでも自分自身にだけ聞こえるくらいの、柔らかく、心地よい響きを目指します。

この呼吸法を実践することには、いくつかの重要な利点があります。第一に、生み出される摩擦熱が身体を内側から温め、筋肉や関節をしなやかにし、安全で効果的な練習をサポートします。第二に、呼吸のペースを一定に保ちやすくなるため、アーサナの動きと呼吸のリズムを滑らかに同調させることができます。

しかし、ウジャイ呼吸の最も深遠な効果は、その瞑想的な側面にあります。私たちの心は、放っておくと過去や未来へと彷徨い、思考の雑音で満たされてしまいます。しかし、ウジャイ呼吸が生み出す「音」に意識を集中させると、心は自然と「今、ここ」へと引き戻されます。自分の内側から響いてくるその海の音は、思考の波を鎮め、心を静寂へと導くための、完璧なアンカー(錨)となるのです。

これは、音に集中するヨガ(ナーダ・ヨガ)の一形態とも捉えることができます。外側の世界の喧騒から意識を引き離し、自らの内なる生命の響きに耳を澄ます。このプロセスを通して、私たちは日常の意識状態から、より深く、静かな意識の層へと移行していくことができるのです。

ウジャイ呼吸を初めて試すときは、口を開けて「はーっ」と、まるで眼鏡のレンズを曇らせるように息を吐いてみてください。その喉の感覚を覚えたら、今度は口を閉じて、同じように鼻から息を吐いてみます。吸う息も同様に、喉の奥でかすかな音を立てるように行います。大切なのは、力まないこと。喉を締め付けるのではなく、あくまで空気の通り道を優しくコントロールする感覚です。

練習を重ねるうちに、ウジャイの音は、あなたの内なる強さと静けさの象徴となるでしょう。その穏やかな波の響きは、どんな状況にあっても、あなたを心の中心へと還してくれる、信頼できる友となるのです。



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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、ENQAN(ヨガ)、JIQAN(内観)、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。