ヨガを推奨しております。
それは、ヨガが単に身体を柔らかくする体操ではなく、私たちが本来持っている「生命の源」との繋がりを取り戻すための、深遠なテクノロジーだからです。
私たちは毎日、人生の3分の1もの時間を「睡眠」に費やしています。
「寝ている時間は無駄だ」「もっと活動時間を増やしたい」と考える人も、現代社会には多いかもしれません。
ショートスリーパーに憧れ、眠らない街で24時間戦い続けることが美徳とされることもあります。
しかし、ヨガの深淵な教え(ヴェーダ)の視点から見ると、睡眠とは単なる休息ではありません。
それは、私たちが自我(エゴ)という小さな殻を脱ぎ捨て、宇宙の根源的なエネルギーである「ソース(源)」へと里帰りし、純粋な生命力を充電するための、神聖な儀式なのです。
今日は、この「睡眠」という神秘的な時間について、そして私たちが眠りの中でどのようにして大いなる源と繋がっているのかについて、お話ししてみたいと思います。
私たちは夜、どこへ行っているのか?
ヨガ哲学では、人間の意識状態を大きく3つ(あるいは4つ)に分類します。
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覚醒状態(ジャグラット): 目が覚めていて、五感を使って外の世界を認識している状態。
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夢眠状態(スヴァプナ): 眠っているが、夢を見ている状態。潜在意識が活動しています。
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熟睡状態(スシュプティ): 夢も見ない、深い眠りの状態。
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トゥリヤ(第4の状態): 悟り、あるいは超意識の状態。
私たちが注目したいのは、3つ目の「熟睡状態(スシュプティ)」です。
夢すら見ないほど深く眠っているとき、私たちの意識はどこにあるのでしょうか?
「意識がない」=「無」だと思っていませんか?
ヨガの教えでは、この時、私たちは「原因体(コーザル体)」と呼ばれる最も微細な領域に退き、個としての自分(エゴ)を一時的に消滅させています。
そして、個が消えたその場所で、私たちは「ブラフマン(宇宙の根本原理)」や「アートマン(真我)」と呼ばれる、大いなる源(ソース)と完全に一体化しているのです。
つまり、私たちは毎晩、里帰りをしているのです。
分離のない、完全なる愛と至福(アーナンダ)の世界へ。
だからこそ、ぐっすりと眠れた朝には、言いようのない幸福感や、生まれ変わったような爽快感を感じるのです。
あれは単に脳が休まったからではありません。
私たちが「ソース」という無限のバッテリーステーションにプラグを差し込み、純粋なプラーナ(生命エネルギー)を満タンにして帰ってきた証拠なのです。
現代人が「充電不足」である理由
しかし、残念なことに、多くの現代人はこの「ソースからの給油」をうまく受け取れていません。
朝起きても疲れが取れていない、なんとなく身体が重い、心が晴れない。
それはなぜでしょうか。
最大の原因は、「緊張(テンション)」と「未消化の感情」を持ち込んだまま、布団に入ってしまっているからです。
現代社会は交感神経優位の社会です。
寝る直前までスマホのブルーライトを浴び、仕事のメールを気にし、SNSで他人と比較し、将来への不安を反芻する。
この状態では、脳波はベータ波のままで、深いリラックス状態(デルタ波)へと移行できません。
身体は横になっていても、エネルギー体(ナーディ)は緊張でギュッと縮こまったままです。
これでは、せっかくソースからのエネルギーが降り注いでいても、受け取る器である私たちが蓋をしてしまっているようなものです。
ホースがねじれていては、水が流れてこないのと同じです。
多くの人が、睡眠という行為をしていながら、魂レベルでの充電ができていない「ガス欠」状態で日々を生きているのです。
「眠りヨガ(ヨガニドラ)」のすすめ
では、どうすればこの蓋を開け、深いエネルギーを受け取ることができるのでしょうか。
ここで、ヨガ的なアプローチが役に立ちます。
それは「シャヴァーサナ(屍のポーズ)」を本気で行うことです。
ヨガのクラスの最後に行う、ただ仰向けになるポーズ。
あれは単なる休憩ではありません。
あれこそが、意識的に「死」を練習し、エゴを手放してソースと繋がるための最も高度なアーサナなのです。
寝る前の10分でも構いません。
ベッドの上で、仰向けになり、手足を広げます。
そして、今日一日背負ってきた役割、肩書き、後悔、期待、すべての「私」という定義を、一つひとつ衣服を脱ぐように手放していきます。
「私は〇〇である」という思い込みを全部捨てて、ただの「呼吸する生命体」に戻るのです。
さらに効果的なのが、「ヨガニドラ(眠りのヨガ)」です。
身体の各部位に意識を巡らせ、意図的に力を抜いていくボディスキャン瞑想です。
これにより、肉体的な緊張だけでなく、感情的・精神的な緊張も解きほぐされ、私たちはスムーズに深い眠り(スシュプティ)へと滑り込むことができます。
ソースからのギフトを受け取るために
スピリチュアルな視点から言えば、私たちが眠っている間、高次のガイドやハイヤーセルフは、私たちの魂のメンテナンスを行っています。
直感的なインスピレーションや、問題解決のヒント、ヒーリングのエネルギーは、思考(マインド)が黙ったこの時間にこそ届けられます。
そのギフトを余すことなく受け取るための、いくつかのアドバイスをお伝えします。
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寝室を聖域にする:
寝室は、一日の活動の延長線上にある場所ではありません。魂の神殿です。
仕事道具やスマホを持ち込まず、清潔で静かな、エネルギーの通りが良い空間に整えましょう。
頭を北(あるいは東)に向けて寝るのも、磁場の関係で良いとされています。 -
感謝と共に眠る:
「あれができなかった」「これが不安だ」という不足の意識ではなく、「今日も一日、生かされた」という充足の意識で一日を閉じましょう。
感謝の周波数は、ソースの周波数と最も共鳴します。 -
「委ねる(サレンダー)」:
眠りとは、自分ではどうすることもできない領域へ身を投げる行為です。
コントロールを手放し、大いなる流れに身を任せること。
「私は守られている」「すべてはうまくいっている」という絶対的な信頼(シュラッダー)を持って、闇の中へ落ちていくのです。
終わりに:目覚めとは、思い出すこと
深い眠りの中で、私たちは誰もが悟っています。
誰もが「ワンネス(全ては一つ)」を体験しています。
ただ、目が覚めた瞬間に、エゴが戻ってきて忘れてしまうだけなのです。
ヨガの実践とは、この「忘却」を少しずつ減らしていく作業とも言えます。
眠っている時のあの満ち足りた感覚、理由のない至福感を、起きている時の日常にも持ち込んでくること。
それが「目覚めながら眠る」ということであり、ヨガが目指す覚醒の状態です。
今夜、あなたが眠りにつくとき、どうか思い出してください。
あなたは孤独に闇の中へ消えていくのではありません。
あなたは、無限の愛と光の源へと里帰りし、そこで一番大切なエネルギーを受け取りに行くのだということを。
どうぞ、よい夢を。
いえ、夢すら見ないほどの、深い静寂への旅を。


