ヨガは「スーパーマン」になるための技術ではありません。現代人が忘れているヨガ本来の目的と、弱さを受け入れる強さについて

自己啓発

ヨガを推奨しております。
それは、ヨガがあなたを「何かすごいもの」に変える魔法ではなく、あなたが「あなた自身」に戻るための、非常に現実的なプロセスだからです。

最近、ヨガを始める動機として、「もっと強くなりたい」「ブレないメンタルを手に入れたい」「圧倒的なパフォーマンスを発揮したい」という声をよく耳にします。
まるで、ヨガを「自分をスーパーマン(超人)へと改造するためのツール」として捉えているかのようです。
もちろん、入り口はなんであれ、ヨガに興味を持っていただくことは素晴らしいことです。
しかし、長く実践を続けていく上で、この「スーパーマン願望」は、時に大きな落とし穴となることがあります。

今日は、ヨガが目指す本来の場所と、私たちが現代社会で抱えがちな「強さへの呪い」について、少し深く、そして静かにお話ししてみたいと思います。

 

現代社会が強要する「アップグレード」という病

私たちは今、資本主義という巨大なシステムの中に生きています。
このシステムは、私たちに常に「成長」を求めます。
昨日の自分より今日の自分が、今日より明日の自分が、より効率的で、より生産的で、より美しくあることを強要してきます。
まるで、私たちは「バグだらけの不完全な機械」であり、常に最新のOSにアップグレードし続けなければ価値がないと言われているかのようです。

この価値観をそのままヨガに持ち込むと、どうなるでしょうか。
ヨガが「自己啓発のための苦行」になってしまいます。
「もっと難しいポーズができなければならない」
「雑念を完全に消さなければならない」
「誰よりも早く起き、完璧なルーティンをこなさなければならない」

これでは、スーツを着て戦っていたビジネスの戦場が、ただヨガマットの上に移動しただけです。
そこにあるのは「競争」であり「獲得」であり、そして「今の自分への否定」です。
スーパーマンになろうとする心理の裏側には、「今のままの自分(クラーク・ケントのような平凡な自分)では愛されない」という、深い欠乏感が潜んでいるのです。

 

ヨガは「鎧」を着ることではなく、脱ぐこと

ヨガの経典には、超能力的な力(シッディ)について書かれている部分もありますが、賢者たちは口を揃えて「それらを目指してはいけない」と警告しています。
なぜなら、それはエゴ(自我)を肥大化させるからです。

ヨガの本質は、何かを「付け足す」ことではありません。
筋肉の鎧をまとい、鋼のメンタルという盾を持ち、ポジティブ思考という剣で武装することではないのです。
むしろ、その逆です。
ヨガとは、あなたが社会生活の中で身につけてしまった重たい鎧を、一枚ずつ丁寧に脱いでいく作業です。

「強くあらねばならない」という鎧。
「良い人だと思われたい」という仮面。
「傷つきたくない」という防壁。

それらを脱ぎ捨て、丸裸の、柔らかく、傷つきやすく、しかし温かい「生身の自分」に戻ること。
サンスクリット語で「サハジャ(Sahaja)」と呼ばれる、「あるがままの自然な状態」に還ること。
スーパーマンのように空を飛べなくてもいい。
ただ、大地にしっかりと足をつけて、自分の足で歩けること。
それこそが、ヨガが目指す境地です。

 

「弱さ」の中にこそ、本当のエネルギーが流れる

スーパーマンになろうと力んでいる時、私たちの身体は緊張しています。
「頑張らなければ」という思いは、筋肉を硬直させ、呼吸を浅くします。
これは、エネルギー(プラーナ)の流れを自ら止めてしまっている状態です。

逆に、「私はスーパーマンではない」「私は弱くてもいい」と諦めがついた時(サレンダーした時)、身体の深いところから力が抜けます。
すると不思議なことに、その緩んだスペースに、新鮮なプラーナが流れ込んでくるのです。

ヨガのアーサナ(ポーズ)において、「スティラ・スカム・アーサナム(アーサナは快適で安定したものでなければならない)」という教えがあります。
これは、歯を食いしばって耐えることではありません。
無駄な力みが抜け、リラックスの中に芯がある状態です。
「弱さ」を認め、自分の限界を受け入れた時、私たちは初めて「大いなる力」と繋がることができます。
自力で頑張るのをやめた時、他力(宇宙の法則や自然の重力)が味方をしてくれるのです。

 

スピリチュアルな視点:あなたは既に「完全」である

ここで少し、スピリチュアルな視点(ヴェーダの視点)からお話しさせてください。
ヨガ哲学には「プールナム(Purnam)」という美しい言葉があります。
それは「完全」「満ちている」という意味です。

あなたは、何かを獲得してスーパーマンになった時に初めて完全になるのではありません。
あなたは、今、この瞬間、そのままで既に「完全」なのです。
ただ、無知(アヴィディヤー)という埃が鏡の表面を覆っているために、その輝きが見えなくなっているだけです。

ヨガとは、自分を改造工事することではなく、この鏡についた埃を拭き取る作業です。
埃を拭き取った下に現れるのは、別人格のスーパーヒーローではなく、懐かしい「本来のあなた」です。
何かができるから価値があるのではなく、ただ存在していること自体が奇跡であり、価値がある。
そのことに気づく(悟る)ことが、本当のゴールです。

 

現代社会を生き抜くための「降伏」のすすめ

もし今、あなたが仕事や人間関係、あるいは将来への不安で押しつぶされそうになっているなら。
どうか、「もっと強くならなきゃ」と自分を追い込まないでください。
スーパーマンのマントは、もう畳んでしまっていいのです。

その代わりに、マットの上に(あるいは縁側に)静かに座り、目を閉じてみてください。
そして、自分の弱さ、疲れ、不安を、ただ認めてあげてください。
「ああ、私は今、疲れているな」
「私は今、泣きたいんだな」
そうやって自分の状態に寄り添うこと。
否定せずに、ただ一緒にいてあげること。

それは敗北ではありません。
それこそが、自分自身に対する最大の「愛(アヒムサ=非暴力)」であり、ヨガの実践です。

スーパーマンは架空の物語の中にしかいません。
しかし、痛みを感じ、悩み、それでも呼吸を続ける「人間としてのあなた」は、ここに確かに存在しています。
そのリアリティこそが尊いのです。

EngawaYogaでは、超人になるためのトレーニングは提供できません。
ですが、「ただの人」に戻り、ホッと息をつくための場所なら、いつでも用意してあります。
完璧を目指すのをやめた時、人生はもっとシンプルで、楽(イージーではなくシンプル)なものになります。

重たいマントを脱いで、軽やかに生きていきましょう。

ではまた。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。