私たちの周りには、常に様々なエネルギーの渦が巻いています。流行、ニュース、社会的な論争、ゴシップ、他人のドラマ。これらは時に魅力的で、私たちの注意を引きつけ、感情を揺さぶり、否応なくその渦の中へと引きずり込もうとします。リアリティ・トランサーフィンでは、こうした人々の思考エネルギーが集中して生まれる情報エネルギー構造体のことを「振り子」と呼びます。そして、この「振り子」のメカニズムを理解することは、自らのエネルギーを守り、自分の人生の主導権を握るために極めて重要です。
振り子の唯一の目的は、自らが存続し、さらに大きく成長するために、人々のエネルギーを吸収することです。そのために、振り子はあらゆる手を使って私たちの感情を刺激します。怒り、恐怖、不安、罪悪感、あるいは熱狂、正義感、優越感といったポジティブに見える感情でさえも、振り子にとっては格好の餌となります。あなたが特定のニュースに憤慨したり、SNSでの論争に夢中になったり、ある思想や流行を熱狂的に信奉したりする時、あなたは無意識のうちに、その振り子に自らの貴重な生命エネルギー(プラーナ)を供給しているのです。
この構図は、自分以外の誰かが作った「ゲーム」に参加させられている状態と言えます。そのゲームのルールは振り子が決め、プレイヤーである私たちは、ただ感情的に反応し、エネルギーを搾取されるだけ。そのゲームに夢中になっている間、私たちは自分自身の人生という、本来プレイすべき最も大切なゲームを疎かにしてしまいます。自分の内なる声に耳を澄まし、魂の望み(ダルマ)を生きるためのエネルギーが、外部の騒音によって奪われてしまうのです。
ヨガの八支則における「プラティヤハーラ(制感)」は、この振り子の影響から自らを切り離すための古代の叡智と言えるでしょう。プラティヤハーラとは、外側に向かっている五感の働きを、意識的に内側へと引き戻す実践です。それは、感覚器官を閉ざすということではなく、外部からの刺激に対して、自動的に、反射的に反応するのをやめるという、心のコントロール技術です。どの情報を取り入れ、どの刺激に反応するかを、自らが主体的に選択する。これにより、私たちは振り子の揺さぶりに同調することなく、心の中心にある静寂を保つことができるようになります。
では、具体的にどうすれば振り子にエネルギーを与えずに済むのでしょうか。
第一に、「観察者」になることです。振り子が揺れているのを認識しても、その渦の中に飛び込むのではなく、一歩引いたところから「ああ、今こういう振り子が人々を巻き込んでいるな」と、ただ冷静に観察する。感情的な反応を挟まず、客観的な事実として捉えるのです。
第二に、「無視する」ことです。あなたにとって不要な情報、あなたの心を乱すだけの論争からは、意識的に距離を置く。そのニュースを見ない、そのSNSの投稿をスルーする。振り子は、エネルギーが供給されなければ、自然と勢いを失っていきます。
第三に、もし避けられない場合は、「受け流す」ことです。例えば、職場の不平不満大会のような振り子に巻き込まれそうになったら、同意も否定もせず、ただ静かに聞き流し、話題をそっと変える。柳に風と受け流すことで、エネルギーの供給を断つのです。
重要なのは、振り子に対して「戦わない」ということです。振り子を敵と見なし、怒りや正義感をもって攻撃すれば、それ自体が新たなエネルギー供給となり、かえって振り子を力づけてしまいます。反原発運動が、かえって原子力という振り子に巨大なエネルギーを与え続ける構造などがその典型です。
自分のエネルギーを、他人の作ったゲームではなく、自分自身の人生の創造に使う。そのために、どの振り子に同調し、どの振り子からは距離を置くかを、常に意識的に選択する。この「稽古」を続けることで、あなたは外部の騒音に惑わされることなく、自分の内なる羅針盤に従って、穏やかで力強い航海を続けることができるようになるでしょう。あなたのエネルギーは、あなた自身を豊かにするために使うべき、最も神聖な資源なのです。


