抵抗を手放せば、「ゆるめば起こる」瞑想

MEDITATION-瞑想

私たちは日々の生活の中で、常に何かを「足す」ことに追われているように感じることがあります。最新の情報、新しいスキル、そして何よりも、より多くのモノ。これは、現代社会が抱える一つの傾向かもしれません。私たちは「足りない」という感覚を埋めるために、外側の何かを求め続けます。

瞑想という言葉を聞くと、多くの人が「静かに座って無になること」「呼吸をコントロールすること」「深い集中状態に入ること」といった、何やら難しそうなイメージを抱かれるかもしれません。インターネットや書籍を開けば、様々な瞑想のやり方、座り方、効果に関する情報が溢れています。そして、「正しくやらなければ効果がないのではないか」という不安や、「自分にはできないのではないか」という思いから、始める前から諦めてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、ここで少し立ち止まって考えてみていただきたいのです。私たちは、あまりにも多くの知識や方法を「足し算」しようとしすぎてはいないでしょうか?そして、それがかえって、瞑想という、本来は最もシンプルでミニマルな営みから私たちを遠ざけてしまってはいないでしょうか?

私が日々向き合っているヨガの智慧、そして古来からの東洋思想は、多くを「手放す」ことの中に、真の豊かさや自由を見出すことを教えてくれます。それは、物質的な執着だけでなく、知識や固定観念といった心の「荷物」を手放すことも含まれます。瞑想もまた、この「引き算」のプロセスとして捉え直すことで、ぐっと身近なものになるはずです。

 

まずは「ただ座る」というミニマルな実践から

瞑想を始めるにあたって、特別な座布や完璧な座り方を準備する必要はありません。床にあぐらをかくのが辛ければ、椅子に座っても構いません。背筋を軽く伸ばし、足の裏をしっかりと地面につける。ただそれだけで十分です。時間も、最初はたった1分でも、5分でも構いません。通勤途中の電車の中、休憩時間、あるいは夜寝る前など、ほんの少しの隙間時間を見つけて、試してみることから始められます。

難しい呼吸法を学ぶ必要もありません。ただ、ご自身の自然な呼吸に意識を向けてみましょう。鼻から入ってくる空気、出ていく空気の感覚。お腹の動き。吸う息と吐く息の長さ。呼吸をコントロールしようとせず、ただ観察する。それがすべてです。

「ただ座る」。この行為は、それ自体が非常にミニマルな実践です。私たちは普段、常に何かをしています。考えたり、動いたり、見たり、聞いたり。しかし、ただ座るということは、一時的にそうした外向きの行動や思考から離れ、静かに自分自身の「存在」に立ち戻ることを意味します。これは、物理的なモノを減らすミニマリズムと同様に、心の「持ち物」を減らし、シンプルになるための第一歩なのです。この「シンプル瞑想」の始まりは、どんな場所からでも、どんな時間からでも始められるのです。

 

頑張らない。「ただゆるめる」瞑想へ

私たちは、何かを成し遂げようとする時、どうしても力が入ってしまいます。瞑想に対しても、「うまくやらなければ」「無にならなければ」と、つい頑張ってしまうかもしれません。しかし、瞑想は頑張るものではありません。むしろ、これまで無意識に力が入っていた場所を「ゆるめる」プロセスなのです。

まずは身体に意識を向け、「ただゆるめる」ことを試みましょう。肩の力を抜く。顎の食いしばりをゆるめる。お腹をリラックスさせる。眉間のシワを伸ばす。私たちは日々の緊張やストレスで、無意識のうちに身体のあちこちに力を溜め込んでいます。その力を一つずつ手放していく。まるで、重たいコートを一枚ずつ脱いでいくような感覚です。

次に、心の力をゆるめてみましょう。瞑想中に様々な思考が浮かんできても、それを追い払おうとしない。善悪を判断しない。ただ、「あ、今こんなことを考えているな」と観察するだけです。感情が動いても、それに飲み込まれず、ただ「こんな感情が湧いてきているな」と、まるで雲が空を流れるように眺めます。思考や感情を「コントロールしよう」と力むのではなく、「ただそこに存在させておく」ことを自分自身に許可するのです。

この「ゆるめる瞑想」は、私たちに多くのことを教えてくれます。それは、私たちがどれだけ多くの「荷物」を、無意識のうちに抱え込んでいるかということです。身体の緊張という名の荷物、思考という名の荷物、感情という名の荷物。これらを意識的に「ゆるめる」ことで、私たちは文字通り「肩の荷が下りる」ような、心身の軽やかさを体験し始めるでしょう。

 

抵抗を手放せば、「ゆるめば起こる」瞑想

そして、あなたがただ座り、ただゆるめることに少しずつ慣れてくると、ある変化に気づくかもしれません。それは、無理に何かを起こそうとしなくても、自然と何かが「起こって」くるということです。

思考の波が穏やかになったり、呼吸が深まったり、身体の内側から温かさや広がりを感じたり。あるいは、普段気づかなかった音に気づいたり、心の中に静寂が訪れたり。こうした体験は、あなたが「頑張った」結果として現れるのではなく、あなたが「抵抗を手放し」「ゆるんだ」ことによって、自然と「起こって」くるものなのです。これが「ゆるめば起こる瞑想」「ただ起こる瞑想」です。

私たちは、何か新しいことを学ぶ時、どうしても「知識」に頼ろうとします。瞑想に関しても、「正しいやり方」や「効果」といった知識を詰め込みがちです。しかし、瞑想の本質は、そうした知識を「実践」を通して体験することにあります。むしろ、これまで得た知識を、ちょっと手放していただきたいのです。頭でっかちにならず、「こうでなければならない」という概念を一旦脇に置いてみましょう。

考えてみてください。新しい空間に何かを入れるためには、まず古いものを出す必要があります。色々と得たものをとにかく一度手放しますと、新しいものが入ってくるのですね。瞑想においても同じです。これまでの知識や期待といった「古いもの」を一旦手放すことで、瞑想の実践を通して得られる、生きた、新しい気づきや体験が、あなたの内側に入ってくる余地が生まれるのです。

 

さあ、「実践しよう」

瞑想は、難しい修行でも、特別な能力が必要なものでもありません。それは、現代社会の喧騒から離れ、ほんのひととき、自分自身の内なる静寂に立ち戻るための、最もシンプルでミニマルな方法です。

完璧を目指す必要はありません。思考が湧いても良いのです。集中できなくても良いのです。ただ、「今、私は座っている」「今、私は呼吸をしている」「今、私はゆるめている」という、そのシンプルな事実に意識を向け続けること。それが、瞑想のすべてです。

さあ、「実践しよう」と、まずは自分自身に優しく語りかけてみましょう。今日、たった1分でも良い。椅子に座って、目を閉じ、ただ呼吸に意識を向け、身体の力を「ただゆるめる」ことを試してみてください。その小さな一歩が、あなたの心に静けさをもたらし、新しい「余白」を生み出すきっかけとなるはずです。

あなたのペースで、気軽に始めてみましょう。そして、瞑想を通して、あなたの内側に眠る穏やかさや力強さに出会えることを願っています。

 


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。