ただ座るというミニマルな瞑想の実践

MEDITATION-瞑想

私たちは今、猛烈なスピードで変化する世界に生きています。常に新しい情報が洪水のように流れ込み、次々と現れる課題に対応することを求められ、心も身体も休まる暇がないと感じている方も多いのではないでしょうか。そんな現代社会で、静かに内側と向き合う時間を持つことの価値が見直され、瞑想への関心が高まっています。インターネットや書籍で瞑想について調べ始めると、様々な方法論や難解な用語に触れ、「自分には難しいのではないか」「正しくできているのだろうか」と戸惑ってしまうこともあるかもしれません。しかし、安心してください。瞑想の本質は、あなたが考えているよりもずっとシンプルで、そして「ミニマル」なものなのです。

本日は、これから瞑想を始めたいけれど、どうすれば良いか分からない、あるいはもっとシンプルに瞑想を実践したいと考えているあなたに向けて、「ただ座る」という最も基本的な、そして最も奥深い瞑想の実践についてお話ししたいと思います。これは、密教の伝統的な瞑想法である阿字観にも通じる、複雑な儀式や高度な技法を必要としない、誰にでもできる「ただ座る」ことのエッセンスを凝縮した実践です。

 

瞑想は「無になる」ことではない

多くの人が抱く瞑想のイメージは、「心を無にする」「雑念を一切なくす」といったものではないでしょうか。そして、それができない自分は瞑想に向いていないと感じてしまうかもしれません。しかし、これは瞑想に対する大きな誤解です。私たちの心は、常に思考や感情、様々な感覚が湧き起こってくるのが自然な状態であり、それを無理に止めようとすることは、かえって内面に大きな抵抗を生み、苦しみのもととなります。

ヨガ哲学や仏教の教えでは、心の働きを観察することに重点が置かれます。湧き起こる思考や感情を善悪で判断したり、それを追いかけたりするのではなく、ただそれが「起こっている」という事実に気づき、ありのままに受け入れること。これが瞑想の第一歩であり、最も重要な姿勢なのです。

 

「ただ座る」ことの力

「ただ座る」という実践は、この「あるがままを受け入れる」姿勢を体現する、最もミニマルな方法です。特別な道具も、広い場所も必要ありません。ただ、座るためのスペースと、静かに座る時間があれば始めることができます。

なぜ「ただ座る」ことに力があるのでしょうか?それは、私たちが普段いかに「何かをすること」に追われているかを浮き彫りにするからです。常に目的を持ち、効率を求め、結果を出そうと焦る。そうした行動のベクトルを一旦止め、「ただそこにいる」という状態に身を置くこと。これは、現代社会の価値観に対する、ある種の静かな抵抗であり、自身の存在そのものと向き合う根源的な行為と言えるでしょう。

曹洞宗の開祖である道元禅師が説いた「只管打坐(しかんたざ)」は、まさにこの「ただひたすら坐る」という実践を指します。悟りを得るために坐るのではなく、坐るという行為そのものが仏の行いであり、悟りであるとする考え方です。これは、結果や目的に囚われず、今この瞬間の「する」こと、つまり「坐る」という行為に全存在を捧げる姿勢の重要性を示唆しています。ミニマリストがモノを削ぎ落とし、本当に必要なもの、そして自身の内面と向き合うように、「ただ座る」という行為は、私たちの内側にある余計なものを削ぎ落とし、存在そのもののシンプルさに立ち返るための実践なのです。

 

「ゆるめる」ことの恩恵

「ただ座る」と共に意識したいのが、「ゆるめる」ことです。私たちは日常生活の中で、無意識のうちに身体の様々な場所に力を入れています。肩や首の凝り、顎の緊張、呼吸の浅さ。これらは、身体だけでなく、心の緊張とも深く繋がっています。

瞑想の時間に入るとき、まず意識的に身体の力を「ゆるめる」ことから始めてみましょう。肩の力を抜き、顎を緩め、お腹をリラックスさせる。呼吸をコントロールしようとするのではなく、ただ自然な呼吸に身を委ね、その出入りを観察します。身体がゆるむと、それに呼応するように、心の緊張も少しずつ和らいでいくのを多くの人が経験します。

この「ゆるめる」という感覚は、現代社会において特に重要です。常にパフォーマンスを求められ、競争に晒されている私たちは、無意識のうちに心身に力を入れて「戦闘態勢」に入っています。しかし、この状態が続くと、心は疲弊し、柔軟性を失ってしまいます。「ゆるめる瞑想」という言葉が示すように、力を抜くこと、頑張らないことの中にこそ、心の回復と安定への道があるのです。

天台宗で説かれる「止観(しかん)」という瞑想概念にも、「ゆるめる」に通じる要素が見られます。「止」は、散乱する心を一点に留めること、あるいは揺れ動く心を観察し、そこに静かに「とどまる」ことを意味します。「観」は、心を観察すること。これらの実践は、無理に心を抑えつけたり、何かを変えようと努力したりするのではなく、心をありのままに見つめ、その動きに静かに寄り添うという受容的な態度を基盤としています。身体をゆるめ、心の緊張を解き放つことで、私たちはこの受容的な態度を養いやすくなります。

 

「ただ起こる」ことを許容する

瞑想を実践していると、様々な思考や感情が湧き起こってくるでしょう。時には過去の後悔や未来への不安、他者への怒りや自分への不満といった、ネガティブに思える感情が心を満たすかもしれません。そんな時、私たちはつい、それを否定したり、押し殺したりしようとしがちです。

しかし、「ただ座る」瞑想においては、これらの湧き起こる体験を「ただ起こる」こととして受け入れます。「ただ起こる瞑想」という言葉が示唆するように、それは善悪の判断を挟まず、良い悪いというレッテルを貼らず、ただ「ああ、今、こんな思考が湧いてきたな」「今、こんな感情を感じているな」と観察することです。まるで、川を流れる落ち葉を岸辺から眺めるように、自分の内側で起こっている出来事を距離を置いて見つめる練習です。

これは決して、ネガティブな感情に浸ることを勧めているのではありません。それは、自分自身の内面で起こっている現実から目を背けず、それを「あるがまま」に認める勇気を持つことです。私たちは、自分の心の中にあるもの全てを否定することなく受け入れた時、初めてそこから解放される道が開かれます。自己否定から自己受容への転換。これが、「ただ起こる」ことを許容する瞑想の深い意義です。

 

シンプルな実践のヒント

さあ、あなたも今日から「ただ座る」瞑想を始めてみましょう。

  1. 場所を選ぶ: 静かで邪魔の入らない場所を選びます。特別な空間でなくても構いません。部屋の隅や椅子の上など、あなたが落ち着ける場所であればどこでも良いのです。

  2. 姿勢を整える: 床に坐禅のように座っても良いですし、椅子に座っても構いません。大切なのは、背筋をすっと伸ばしつつ、身体が緊張しすぎない、心地よい姿勢を見つけることです。手は膝の上や腿の上に置くなど、自然な位置に置きましょう。

  3. 目を閉じるか半眼にする: 目を閉じると、外界からの情報が遮断され、内面に意識を向けやすくなります。もし目を閉じると眠くなってしまう場合は、半眼にして視線を数メートル先の床に落としても良いでしょう。

  4. 身体を「ゆるめる」: 意識的に身体の各部分に注意を向け、緊張している箇所があれば、そっと力を抜いていきます。肩、首、顎、お腹、腰、足。全身の力を抜いて、重力を感じてみましょう。

  5. 呼吸に注意を向ける: 呼吸をコントロールしようとせず、ただ鼻孔や胸、お腹など、呼吸が感じられる場所に注意を向けます。吸う息、吐く息を、ただ観察します。「吸っているな」「吐いているな」と心の中で実況しても良いでしょう。

  6. 「ただ起こる」ことを観察する: 思考、感情、体感、音など、どんなことが心に湧き起こってきても、それを追いかけたり、判断したりせず、「ああ、今、こんな思考が浮かんだな」「こんな音を聞いているな」「こんな感覚があるな」と、ただ観察します。思考に巻き込まれてしまったら、気づいた時点でそっと意識を呼吸に戻します。自分を責める必要はありません。気づくこと、そして意識を戻すこと、その繰り返しが実践です。

  7. 時間を決める: 最初は5分や10分といった短い時間から始めましょう。タイマーを使うと、時間を気にせず集中できます。タイマーの音は、穏やかなものを選びましょう。

  8. 継続する: 一度きりではなく、できる範囲で良いので継続することが大切です。毎日同じ時間に座るのが理想ですが、難しければ、できる時に短い時間でも実践することを心がけてください。

 

最後に

「ただ座る」というミニマルな実践は、すぐに劇的な変化をもたらすわけではないかもしれません。しかし、根気強く続けることで、あなたの心は少しずつ、しかし確実に変化していくでしょう。内面に湧き起こる波に翻弄されるのではなく、それを静かに見つめることができるようになり、心の中心に穏やかな静けさが育まれていきます。それは、外側の世界に振り回されることなく、自らの内なる声に耳を澄ませ、本当に大切なものを見極めるための力となります。

瞑想は、何か特別な状態を目指すことではなく、今ここにある自分自身、そして世界を、ありのままに受け入れるための練習です。「頑張って無になろう」とするのではなく、「ただ座って、ただゆるめ、ただ起こることを許容する」という、最もシンプルでミニマルな実践を、あなたの生活に取り入れてみてください。

その小さな一歩が、あなたの内面に、そして人生に、新しい空間と光をもたらしてくれることを心から願っています。

 

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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。