世界の終わりを嘆く前に、今この瞬間の呼吸を。終末論に陥らないためのヨガ的処方箋

自己啓発

不安を煽るようなニュースが、連日私たちの手元に届きます。
気候変動、戦争、パンデミック、AIによる失業、経済の崩壊。
それらの情報を繋ぎ合わせていくと、まるで世界が明日にも終わってしまうかのような、「終末論」的なシナリオが頭の中で完成してしまいそうになります。

「もうダメなんじゃないか」
「未来に希望なんてないんじゃないか」

そんな重苦しい空気が、現代社会全体を覆っているように感じます。
スピリチュアルな世界においても、「アセンション(次元上昇)できないと取り残される」とか、「二極化が進む」といった、ある種の選民思想的な終末論が語られることがあります。

しかし、ヨガの伝統的な教えは、こうした未来への極端な悲観や、恐怖に基づく扇動とは明確に距離を置きます。
今日は、私たちが陥りがちな「終末論」という心の罠から抜け出し、本当の意味で「生きる」ための智慧について、少し長く、深くお話ししてみたいと思います。

 

なぜ私たちは「終わり」を想像したがるのか

そもそも、人間はなぜこれほどまでに「世界の終わり」という物語に惹きつけられるのでしょうか。
心理学的に見れば、それは「不確実性への恐怖」の裏返しだと言えます。
未来がどうなるか分からないというカオス(混沌)に耐えるよりも、「世界はもうすぐ終わるのだ」と決めてしまった方が、ある意味で楽なのです。
破滅的な結末であっても、それが「確定した未来」であれば、脳は安心しようとします。
「どうせ終わるなら、努力しても無駄だ」というニヒリズム(虚無主義)は、責任から逃れるための甘い麻薬になり得ます。

また、現代社会特有の「閉塞感」も影響しているでしょう。
行き過ぎた資本主義、格差の拡大、解決不能に見える環境問題。
この膠着した現状をリセットしたい、チャラにしたいという深層心理が、「グレートリセット」のような終末論的な願望を生み出しているのかもしれません。

 

ヨガの時間軸:円環する世界

しかし、古代インドの思想やヨガの哲学では、時間を直線的な「始まりから終わりへ」というラインでは捉えません。
時間は「円環(サイクル)」するものです。

インド哲学には「ユガ(Yuga)」という時代区分があります。
黄金時代(サティヤ・ユガ)から徐々に精神性が衰退し、現在の暗黒時代(カリ・ユガ)へと至り、そしてまた世界は浄化されて次の黄金時代へと戻っていく。
この壮大なサイクルの視点から見れば、今の混乱や崩壊もまた、自然のプロセスの一部に過ぎません。

春が来て、夏になり、秋を経て、冬が来て、また春になる。
冬の寒さの中で「世界は終わるんだ」と嘆く人がいたら、あなたはどう声をかけるでしょうか?
「大丈夫、これはただの冬だよ。また必ず春は来るから」と言うはずです。
ヨガ的な視座とは、この「大丈夫」という感覚です。
現象界(プラクリティ)は常に変化し、生成と消滅を繰り返しますが、その背後にある本質的な生命(プルシャ)は、決して損なわれることはないのです。

 

「今、ここ」以外に未来はない

終末論の最大の問題点は、意識を「今」から引き剥がし、「まだ来ぬ未来」へ飛ばしてしまうことです。
恐怖に駆られてシェルターを作ったり、食料を備蓄したりすることは、物質的な備えとしては意味があるかもしれません。
しかし、心が常に「未来の破滅」に占拠されているなら、その人はすでに「今」を生きていません。
生きながらにして、死後の世界を生きているようなものです。

ヨガが口を酸っぱくして説くのは、「今、ここ(アタ)」の重要性です。
『ヨガ・スートラ』の冒頭は、「アタ・ヨガ・アヌシャーサナム(さて、今からヨガを詳しく説こう)」という言葉で始まります。
過去でも未来でもなく、「今」からしか、何も始まらないのです。

未来とは、どこか遠くにある目的地ではありません。
未来とは、「今」という瞬間の連続の先に現れる結果に過ぎません。
もし未来が不安なら、今この瞬間の呼吸を穏やかにすることです。
今、目の前にいる人に優しくすることです。
今の自分の仕事を丁寧にこなすことです。
その積み重ね以外に、平和な未来を作る方法はありません。

 

恐怖を煽るスピリチュアルにご用心

ここで少し、スピリチュアルな領域についても触れておきましょう。
不安定な時代には、救いを求めて精神世界に興味を持つ人が増えます。
それは素晴らしいことですが、同時に「恐怖」を商売にするスピリチュアルも跋扈します。

「〇〇年までに目覚めないと手遅れになる」
「選ばれた人だけが新しい地球に行ける」
「この壺を買えば救われる(これは極端ですが)」

こういった「期限」や「恐怖」、「選別」を煽る言説に出会ったら、一度立ち止まって深呼吸をしてください。
真のヨガや、本質的な霊性の教えは、決して人を脅しません。
焦らせません。
分断を生みません。

真理は常に「あなたは、今のままで、すでに完全である(タット・トヴァム・アシ)」と語りかけます。
何か特別な条件を満たした人だけが救われるのではなく、すべての存在の根底に、すでに神聖な光が宿っていると説くのがヨガです。
恐怖によってコントロールしようとする「振り子(トランサーフィンの用語を借りれば)」からは、そっと距離を置きましょう。
不安を煽る情報を見続け、エネルギーを漏らしてしまうことこそが、最も避けるべき事態です。

 

日常という聖域を守る

では、私たちは具体的にどう過ごせばよいのでしょうか。
それは、「日常を淡々と営む」ということに尽きます。

禅の言葉に「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」があります。
どんな嵐の日であっても、それはかけがえのない一日であるという意味です。
世界情勢がどうあろうと、朝起きて、顔を洗い、ご飯を食べ、掃除をし、夜になれば眠る。
この平凡なルーティンの中にこそ、最強のグラウンディング(地に足をつける力)があります。

丁寧にお茶を淹れて飲むとき、その香りと温かさに全神経を集中させてみてください。
その瞬間、あなたの世界に「終末」は存在しません。
あるのは、芳醇な「生」の喜びだけです。
そうやって、五感を使って「今」を味わい尽くすこと。
それが、カオスに対する最大の防御策であり、世界へのささやかな抵抗でもあります。

 

結論:あなたは光そのもの

最後に。
外側の世界がどれほど暗く見えたとしても、あなたの内側にある光(アートマン)は、誰にも消すことができません。
戦争も、不況も、ウイルスも、あなたの本質である「魂の輝き」には、指一本触れることすらできないのです。

ヨガをするということは、その「絶対に大丈夫な場所」を自分の中に発見する作業です。
瞑想をして、静寂の中に身を置くとき、私たちは世界の騒音から離れ、永遠の平和へと帰還します。
その安らぎを知っている人は、終末論に踊らされることはありません。
「何が起きても、私は大丈夫だ」という深い信頼が、根底にあるからです。

世界が終わることを心配するよりも、今日咲いている花を愛でましょう。
隣にいる人と笑い合いましょう。
私たちのヨガマットの上には、いつだって平和があります。
そして、その平和の波動が、やがて世界全体へと波及していくことを信じています。

不安になったら、いつでも縁側に座りに来てください。
ここには、ただ静かな時間と、変わらぬ呼吸があります。

ではまた。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。