もし、今日の現実が過去の行為の結果であるならば、そこから導き出される論理的で、そして希望に満ちた結論は一つしかありません。それは、「未来の現実は、今この瞬間のあなたの行為によって、創造され、変えることができる」ということです。私たちは、過去のフィルムが映し出す映像をただ眺めているだけの無力な観客ではありません。私たちは、今まさに、未来のシーンを撮影している、アクティブな監督であり、脚本家であり、主演俳優なのです。
この事実は、カルマの法則が、私たちを過去に縛り付けるための宿命論ではなく、未来を解放するための実践的なツールであることを、何よりも明確に示しています。過去のカルマ(行為の結果)は、確かに出発点として存在します。それは、私たちが生まれ持った体質や才能、育った環境、そして現在直面している状況などとして現れます。しかし、それは単なる「初期設定」や「現在の舞台装置」に過ぎません。その舞台の上で、どんな脚本を書き、どんな演技をするかは、全面的に、今のあなたに委ねられているのです。
例えば、過去に蒔いた種の結果として、あなたの畑に「不安」という名の雑草が生い茂っているとしましょう。カルマの法則を宿命論として捉えるなら、「私は不安を感じやすいカルマなのだから仕方がない」と諦め、雑草がさらに繁茂するに任せることになるでしょう。しかし、カルマを創造の法則として捉えるなら、あなたの選択肢は全く異なります。
まず、あなたは「今」、その雑草を一本、丁寧に抜くことができます。それは、瞑想をして心を静めるという「行為」かもしれません。あるいは、不安の正体を紙に書き出すという「行為」かもしれません。友人に相談するという「行為」も有効でしょう。
さらに重要なのは、雑草を抜いたその場所に、どんな新しい種を蒔くか、です。あなたは「今」、意識的に「信頼」や「感謝」の種を蒔くことができます。「きっと大丈夫」と心の中で唱える思考(意業)、「ありがとう」と口に出す言葉(口業)、そして誰かのために小さな親切をする行動(身業)。これらの一つひとつが、未来のあなたの畑に、「安心」や「豊かさ」という名の美しい花を咲かせるための、確実な種蒔きとなるのです。
このプロセスは、一朝一夕に劇的な変化をもたらすものではないかもしれません。巨大なタンカー船が方向転換するのに時間がかかるように、長年かけて形成されたカルマの勢い(サンサーラ、輪廻の流れ)には、ある種の慣性が働いています。しかし、船長が今、舵を切り始めなければ、船の進路は永遠に変わりません。あなたの「今、この瞬間」の小さな選択こそが、その未来の航路を決定づける、唯一にして最大の力なのです。
この力強い真理を、私たちはしばしば忘れてしまいます。未来への不安や過去への後悔に心を奪われ、「今」という、唯一行動可能な時間を、空費してしまうのです。しかし、未来はどこか遠くにあるものではありません。未来とは、無数の「今」が連なってできたものです。だからこそ、未来を変えたいと願うなら、変えるべきは「今」のあなたのあり方以外にないのです。
今、何を考えていますか?
今、どんな言葉を使っていますか?
今、何をしようとしていますか?
この三つの問いを、常に自分自身に投げかけてみてください。そして、その答えが、あなたの望む未来に繋がっているかどうかを、吟味するのです。もし繋がっていないと感じるなら、舵を切り直し、別の思考、別の言葉、別の行動を選択する。この意識的な選択の繰り返しこそが、カルマの法則を能動的に活用し、望む未来を自らの手で創造していくための、最も確実で、具体的な実践なのです。
あなたは、過去の物語の結末を生きているのではありません。あなたは、未来の物語の、第一章の第一行を、今まさに書いているのです。ペンは、あなたの手に握られています。さあ、どんな物語を紡ぎ始めますか?


