328.歩く瞑想、食べる瞑想、話す瞑想

自己啓発

日常生活のすべてが瞑想の場となり得る、ということを理解した上で、ここでは特に実践しやすく、かつ効果の高い三つの具体的な「行為の瞑想」について深く探求してみましょう。それは、私たちが毎日無意識に行っている「歩く」「食べる」「話す」という行為を、意識的な気づきの実践へと昇華させる試みです。これらの瞑想は、特別な道具も場所も必要とせず、あなたの日常を即座に、そして劇的に変容させる力を持っています。

 

歩く瞑想 – 大地との対話

私たちは毎日、数え切れないほどの歩数を歩きます。しかし、そのほとんどは、目的地にたどり着くための単なる「移動手段」として、無意識のうちに行われています。その間、私たちの心は、過去や未来をさまよったり、スマートフォンを眺めたりしています。「歩く瞑想」は、この移動という行為を、それ自体が目的である「存在の体験」へと変える実践です。

ベトナムの禅僧ティク・ナット・ハンによって広められたこの瞑想は、非常にシンプルです。まず、普段より少しだけ歩くペースを落とします。そして、意識を足の裏に集中させます。右足のかかとが地面に着き、土踏まず、そしてつま先へと体重が移動し、地面から離れる。次に、左足が同じように大地に触れる。その一連の微細な感覚を、注意深く観察し続けます。呼吸と歩みを連動させるのも良いでしょう。「吸いながら右足を一歩、吐きながら左足を一歩」というように。

この実践を通して、私たちは驚くべき発見をします。まず、自分が地球という惑星の上を、重力に支えられながら歩いているという、当たり前でありながら奇跡的な事実に、身体感覚として気づきます。足の裏を通して伝わる大地からのエネルギーは、私たちを深くグラウンディングさせ、頭の中に溜まった余計な思考や不安を吸い取ってくれるかのようです。歩く瞑想は、単なる移動を、大地との神聖な対話の時間へと変えてくれるのです。急いでいる時でさえ、駅のホームを歩く数歩だけでも意識的に行うことで、心の状態は大きく変わるでしょう。

 

食べる瞑想 – 命をいただく儀式

「食べる」という行為もまた、私たちが生命を維持するために毎日繰り返す、根源的な活動です。しかし、多くの場合、食事は空腹を満たすための作業となったり、テレビを見ながらの上の空の行為になったりしがちです。「食べる瞑想」は、この食事という行為を、無数の命の繋がりと恵みに感謝する、神聖な儀式へと高める実践です。

まず、目の前にある食べ物を、五感をフルに使って観察します。その色、形、香り。箸で持ち上げた時の重さや質感。そして、一口を口に運び、ゆっくりと、丁寧に、30回以上は噛むことを意識します。唾液と混じり合い、味がどのように変化していくか。舌の上で感じる食感の移り変わり。すべての感覚に注意を向けます。

さらに、この食べ物が自分の口に届くまでの、長い旅路に思いを馳せます。太陽の光、雨水、豊かな大地。種を蒔き、育て、収穫してくれた農家の人々。それを運び、調理してくれた人々。この一皿には、数え切れないほどの存在の働きと、命の連鎖が凝縮されています。その事実に気づく時、私たちの内側から、自然と深い感謝の念が湧き上がってきます。食べる瞑想は、私たちの身体を養うだけでなく、心を感謝で満たし、万物との一体感を思い出させてくれる、パワフルな実践なのです。

 

話す瞑想 – 沈黙から生まれる言葉

私たちの人間関係は、主に「話す」という行為を通して築かれます。しかし、私たちはしばしば、自分の正しさを主張したり、相手を論破したり、あるいは沈黙の気まずさを埋めるためだけに、無意識に言葉を発してはいないでしょうか。「話す瞑想」は、「聞く瞑想」とも言い換えられますが、それは、言葉を発する前に、まず深く聞き、沈黙を尊重することから始まります。

誰かと話す時、相手の言葉を、自分の意見や判断というフィルターを通さずに、ただありのままに聞きます。相手が何を言っているのかだけでなく、その言葉の背後にある感情や、言外のメッセージにも耳を澄ませるのです。そして、自分が話す番が来た時は、一呼吸おいて、本当に伝えるべき言葉だけを、穏やかに、明確に選びます。自分の言葉が、相手の心にどのような影響を与えるかを意識します。

この実践は、不必要な対立や誤解を減らし、より深く、誠実なコミュニケーションを可能にします。言葉は、人を傷つける武器にも、癒す薬にもなり得ます。話す瞑想は、私たちが言葉の真の力を理解し、それを調和と繋がりのために使うための訓練です。沈黙を恐れず、むしろ言葉と言葉の間にある豊かな静寂を味わうことができるようになれば、あなたの存在そのものが、周りの人々にとって安らぎの場となるでしょう。

これらの三つの瞑想は、私たちの日常を、気づきと感謝と平和に満ちたものへと変容させる、シンプルでありながら深遠な道です。今日、あなたが次の一歩を踏み出す時、次の一口を食べる時、次の一言を発する時、そこに瞑想の種を蒔いてみてください。その小さな種は、やがてあなたの人生全体を豊かに実らせる大樹へと育っていくに違いありません。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。