私たちは、豊かさや感謝の対象を、つい自分の「外側」にあるもの、例えばお金や人間関係、物質的な所有物などに求めがちです。しかし、私たちが生涯、片時も離れることなく共にあり、この世界を体験するための唯一無二の乗り物(ヴィークル)でありながら、最もその存在を「当たり前」として見過ごしている、驚異的な奇跡の塊があります。それが、あなた自身の「身体」です。
ヨガの伝統において、身体は単なる肉の塊ではありません。それは「アンナマヤ・コーシャ(食物でできた鞘)」と呼ばれる、魂を包む神聖な神殿であり、宇宙の叡智が凝縮された小宇宙(ミクロコスモス)として捉えられます。この神殿に対する深い敬意と感謝なくして、真の豊かさを体験することはできません。
少しの間、目を閉じて、あなたの内側で休むことなく続けられている、生命の奇跡的な営みに意識を向けてみてください。
あなたの心臓。あなたがこの文章を読んでいる間も、一日におよそ10万回、力強く拍動し、栄養と酸素に満ちた血液を、地球二周半分にも相当する長さの血管の隅々まで送り届けています。あなたが意識を向けずとも、眠っている間でさえ、一度も文句を言わずに。この忠実な働きに、私たちはどれほど感謝しているでしょうか。「私のために、絶え間なく生命の河を流してくれて、ありがとう」と。
あなたの肺。一日に約2万回、静かに、そして規則正しく呼吸を繰り返し、生命の根源的なエネルギーであるプラーナを大気中から取り込み、不要になった二酸化炭素を排出しています。この完璧なガスの交換システムがなければ、私たちは数分と生きていけません。「私に呼吸する喜びと、生きる力を与えてくれて、ありがとう」と。
あなたの消化器官。あなたが食べたものを、まるで高度な化学プラントのように分解し、身体を構成するための栄養素を吸収し、不要なものを分別して排出する。この驚くべき錬金術が、あなたの内側で毎日、粛々と行われています。「私が生きるための糧を変容させてくれて、ありがとう」と。
そして、あなたの脳、神経系、免疫システム、五感…。数え上げればきりのないほどの、無数の奇跡的な機能が、完璧なオーケストラのように連携し合い、「あなた」という生命のシンフォニーを奏でています。私たちは、この身体という最高の贈り物を、無償で与えられているのです。
この身体への感謝を深めるための実践として、ヨガのアーサナや、ボディスキャン瞑想は非常に有効です。アーサナを通して、普段は意識しない筋肉の伸びや関節の動きを感じ、その精妙な働きに気づくことができます。ボディスキャン瞑想では、意識を足の指先から頭のてっぺんまでゆっくりと旅させ、各部位に「ありがとう」という癒やしの光を送ります。
痛みや不調がある部分に対しても、感謝の視点を向けることができます。痛みは敵ではなく、身体からの重要なメッセージです。「ここに無理がかかっているよ」「少し休んでほしいよ」と教えてくれる、賢明なメッセンジャーなのです。その声に耳を傾け、「知らせてくれて、ありがとう」と感謝することで、身体との対立関係は、信頼と協力のパートナーシップへと変わっていきます。
自分の身体と和解し、心からの感謝で満たす時、私たちは揺るぎない自己肯定感と、この世界に「在る」ことの深い安心感を得ることができます。この身体という聖なる神殿が愛と感謝で満たされて初めて、私たちは外側の世界に真の豊かさを引き寄せ、それを存分に味わうことができるのです。あなたの身体は、引き寄せのための最もパワフルなアンテナです。その感度は、日々の感謝によって、どこまでも研ぎ澄まされていくでしょう。


