私たちは、知らず知らずのうちに「物事は、簡単には手に入らない」「価値あるものは、苦労の末に得られる」という信念体系を抱え込んでいることがあります。それはまるで、苦労の量が成果の価値を決めるとでもいうような、ある種の呪縛です。その結果、物事が驚くほど円滑に進んだり、望んでいたものが何の苦もなく手に入ったりすると、どこかで「こんなにうまくいっていいのだろうか」「何か裏があるのではないか」と疑いや不安を感じてしまうことさえあります。
しかし、ヨガ的な宇宙観、そして引き寄せの法則の観点から見れば、この「スムーズさ」こそが、あなたが宇宙の大きな流れと完全に調和していることを示す、最もパワフルで明確な「GOサイン」なのです。それは幸運や偶然などという言葉で片づけられるものではなく、あなたの内なる状態が完璧に整った結果として現れる、必然の現象と言えるでしょう。
ヨガ哲学には、心の三つの性質「トリ・グナ」という考え方があります。ラジャス(激質)は活動的で情熱的ですが、過剰になると焦りや欲望に繋がります。タマス(暗質)は安定をもたらしますが、過剰になると停滞や怠惰に陥ります。そして、サットヴァ(純質)は、純粋性、調和、光、叡智を象徴する性質です。心がサットヴァな状態にある時、私たちは静かで満たされており、物事の本質を曇りなく見通すことができます。
物事がスムーズに進むという現象は、あなたの内なる世界がこのサットヴァな状態にあり、その調和が外側の世界に反映されている証拠なのです。あなたの意図(サンカルパ)が、エゴの欲望(ラジャス)や過去への執着(タマス)から自由であり、純粋な魂の望みに根ざしている。そして、あなたが「委ねる(イーシュワラ・プラニダーナ)」という姿勢を保っている。この二つが揃った時、宇宙はあなたのために完璧な舞台を整え始めます。
それは、まるで「場が整う」と表現される感覚に近いかもしれません。必要な情報が適切なタイミングで向こうからやってくる。会うべき人物と、まるで示し合わせたかのように出会う。プロジェクトの歯車がカチリと噛み合い、ひとりでに転がり始める。この時、あなたは必死でオールを漕いでいるのではなく、追い風を受け、帆をいっぱいに張って進む帆船のような状態にあります。あなたはただ、舵を握り、流れを信頼しているだけなのです。
この「スムーズさ」を、量子力学の観察者効果の比喩で捉えることもできるでしょう。あなたの意識がサットヴァな調和の状態にあるとき、あなたは無数に存在する可能性の波(量子場)の中から、最も抵抗がなく、調和に満ちた現実のタイムラインを「観測」し、それを現実として確定(収縮)させているのです。苦労や困難に満ちた現実も可能性として存在しますが、あなたの「在り方」が、よりスムーズな現実を選択しているのです。
この宇宙からのGOサインを受け取った時に最も大切なことは、それを疑いや罪悪感で打ち消さないことです。「こんなにうまくいっていいのだろうか?」という思考は、流れに逆らうブレーキをかけるようなもの。そうではなく、「ありがとうございます。この流れを信頼し、喜んで受け取ります」と、感謝と共にその波に乗ることです。スムーズさは、あなたが正しい道、すなわちあなたの魂の目的(ダルマ)に沿った道を歩んでいるという、宇宙からの祝福であり、力強い後押しに他なりません。
もしあなたの人生で、物事がトントン拍子に進む経験があったなら、それは決してまぐれではありません。それは、あなたの内なる調和が創り出した奇跡です。その感覚をよく覚えておいてください。そして、日常のヨガの実践を通じて、再びそのサットヴァな状態へと自らをチューニングしていくのです。スムーズさは、あなたが目指すべき心の状態を示す、最高の道標となるでしょう。


