「シミュラークル」は、フランスの哲学者ジャン・ボードリヤールが提唱した概念で、現代社会を理解する上で重要なキーワードとなっています。
参考図書↓
簡単に言えば、シミュラークルとは、現実を模倣した複製物/模造物が、やがて現実と区別がつかなくなり、最終的には現実そのものを凌駕してしまう現象を指します。
シミュラークルは段階的に区別がつかなくなっていきます。
シミュラークルの段階
ボードリヤールは、シミュラークルを以下の3つの段階に分類しています。
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模倣の段階: オリジナルを忠実に再現しようと模倣する段階。
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例:絵画、彫刻、初期の写真など
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生産の段階: 大量生産技術によって、オリジナルと見分けがつかないコピーが大量に生産される段階。
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例:工業製品、大量生産されたイメージ
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シミュレーションの段階: もはやオリジナルが存在せず、シミュラークルが現実を支配する段階。
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例:仮想現実、メディアによって作られたイメージ、消費社会における記号
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シミュラークルの特徴
シミュラークルの特徴はオリジナルとコピーがどんどん区別がつかなくなり、現実よりもシミュイラークルの方が現実感が生じてきて、さらにはそれが現実となっていきます。ヨガをやっている人ならわかると思いますが、そもそもヨガのポーズは決まったものもなく、もっと曖昧であり、瞑想のためのものであったが、ヨガが商業的にまとめられ、西洋的な解釈を付加して、それがリアルなヨガであるように思った人々が増えていき、むしろ昔のヨガが偽物であり、今あるヨガこそがヨガであると思い込んでしまっている状況もひとつの例かもしれません。
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オリジナルとコピーの区別が曖昧になる。
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シミュラークルが現実よりも「リアル」に感じられるようになる。
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シミュラークルが、現実を操作し、支配するようになる。
現代社会におけるシミュラークル
現代社会は、まさにシミュラークルが蔓延する世界と言えるでしょう。
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メディアが作り出すイメージ:テレビ、映画、インターネットなど、メディアを通して私たちは、現実とは異なるイメージを大量に消費しています。
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消費社会の記号:ブランド品、流行、広告など、消費社会は、モノを記号化し、イメージによって価値を操作しています。
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バーチャルリアリティ:コンピューターグラフィックスやVR技術によって、仮想現実がますますリアルになり、現実と区別がつかなくなってきています。
シミュラークルの問題点
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現実感の喪失: シミュラークルに囲まれることで、私たちは、現実に対する感覚を失い、虚構の世界に生きているような感覚に陥る可能性があります。
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思考停止: シミュラークルは、私たちに思考停止を促し、批判的な精神を失わせる可能性があります。
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操作と支配: シミュラークルは、権力者やメディアによって操作され、私たちを支配するための道具として利用される可能性があります。
シミュラークルを超えて
ボードリヤールは、シミュラークルから完全に逃れることは不可能だと考えていました。特に記号による消費が加速していくことで、これは終わりのない消費となってしまいます。
しかし、私たちは、シミュラークルの構造を理解し、批判的に思考することで、その影響を最小限に抑えることができるはずです。(たぶん)
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メディアリテラシーの向上: メディアが発信する情報を鵜呑みにせず、その背後にある意図や操作を読み解く力を養うことが重要です。メディアはそれを発信する目的が必ずあります。目的がなくても無意識的な思想性が必ずあります。
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自分自身の感覚を信じる: シミュラークルに惑わされず、自分自身の感覚、経験、価値観を大切にすることが大切です。客観的にいつでも見ることが大事です。(ヨガに関しては、ヨガの歴史を学ぶことも大切に思います)
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現実世界との繋がりを大切にする: 自然と触れ合ったり、人と直接的なコミュニケーションをとったりすることで、現実世界との繋がりを強めることが重要です。
シミュラークルは、現代社会を理解するための重要な概念です。ボードリヤールの思想を学ぶことで、私たちは、情報過多、消費社会、仮想現実といった現代社会の課題に、より深く向き合うことができるのではないでしょうか。