30日間、毎日ヨガに通うことで見えてくるもの。修習と離欲がもたらす心のミニマリズム

365days

30日間、毎日ヨガスタジオに通う、あるいは自宅でヨガを実践してみる。

そのような「30日ヨガチャレンジ」を自分で決意したり、人から勧められたりした経験を持つ方は多いのではないでしょうか。

ヨガを始めるきっかけは、肩こりを解消したい、体力をつけたい、といった素朴な肉体的欲求であることが大半です。

確かに、毎日継続すれば肉体的な変化は自ずと現れてくるでしょう。

しかし、30日間毎日通うことの本当の価値は、実は目に見える肉体美や柔軟性の向上だけにあるわけではありません。

毎日同じ行為を繰り返すというプロセスそのものが、ヨガの最も深遠な哲学と直接つながっているからなのです。

 

東洋思想が教える「毎日続けること」の意味:アビヤーサ

少しヨガの歴史を遡ってみましょう。

今から二千年以上前、パタンジャリという聖者によってまとめられたヨガの古典『ヨーガ・スートラ』には、心を静めるための2つの重要な柱が示されているのをご存知でしょうか。

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それが「アビヤーサ(修習)」と「ヴァイラーギャ(離欲)」という2つのアプローチです。

アビヤーサ(Abhyasa:修習)とは、単にトレーニングを毎日こなすことを意味する概念ではないのです。

経典では、これを「長い間、休みなく、真剣に、かつ敬意を持って熱心に実践すること」と定義しました。

雨の日も、仕事が忙しい日も、ただ淡々とマットの上に立ち、自身の身体と向き合い続ける行為に他なりません。

 

結果への執着を手放す「ヴァイラーギャ」とミニマリズム

毎日ヨガを繰り返していると、どうしても「今日は昨日より深く曲がった」「今日は身体が硬くてうまくポーズができない」といった一喜一憂の感情が湧いてくるものです。

そこで大切になってくるのが、もう一つの柱である「ヴァイラーギャ(Vairagya:離欲)」の精神でしょう。

これは、自身の行動の結果に対する執着や、見栄、プライドといった余計なエゴを手放すことを定義します。

現代を生きる私たちは、何かをすれば必ず「成果」を求め、それを他者と比べたりSNSでアピールしたくなる傾向にあると言えるでしょう。

「痩せるため」「お洒落な自分であるため」といった記号の消費としてヨガを利用する時、心は逆にざわついてしまうのです。

ヴァイラーギャとは、そうしたエゴの欲望(ラーガ)から一歩離れて、ただ「今ここにある身体」を静かに受け入れる心のミニマリズムに他なりません。

 

思考の「おしゃべり」を止め、身体の感覚へと寛ぐ

30日間も毎日通うと、当初の「よし、がんばるぞ」という過剰な意気込みは、良い意味でそぎ落とされていくでしょう。

人間は、頭の中で常に過去の後悔や未来の不安といった「おしゃべり」を絶え間なく展開している生き物です。

その思考の過活動こそが、心身の緊張や不調を生み出す根本原因になっていると言わざるを得ません。

毎日ヨガを実践して身体をユルユルに解きほぐしていくと、意識は自然と「頭の中の言葉」から「体全体の確かな感覚」へと移行していきます。

これこそが、私たちが提唱している「SIQAN(シカン)」というシンプルな瞑想の感覚です。

ただ重力を感じ、呼吸の波に乗り、今という瞬間に深く沈み込んでいく。

余計な考えが消え去ったその時、私たちは内側の深い静けさと、重力すら気にならなくなるような一体感を味わえることでしょう。

この感覚を一度でも身体が覚えると、日々の騒がしい都会の暮らしの中でも、常にその安全な静寂のスペースに避難できるようになるのです。

「30日間」という継続的な修習は、その感覚を身体に定着させるために極めて有効な期間と言えます。

 

ヨガとの関係が「日常の風景」へと溶けていく

毎日ヨガに通う中で、あなたとヨガとの関係性は確実に変化していくはずです。

最初の1週間は、使っていない筋肉の痛みや身体の硬さに悪戦苦闘するかもしれません。

2週間目に入ると、呼吸と動きが少しずつ連動し始め、ただ身体を動かすことへの純粋な心地よさが芽生えてきます。

しかし、3週間目を迎えると、ふと「今日は行きたくないな」「面倒だな」というエゴ(アスミター)の抵抗に遭遇することもあるでしょう。

これは、私たちの脳が変化を拒み、現状維持を好むシステムを持っているために起こる、きわめて自然な防衛反応です。

この波を、がんばるのではなく「淡々とやり過ごす」ことで、関係性は次のステージへ進みます。

最後の4週間目を終える頃には、もはやヨガは「自分を高めるための特別な習い事」としての枠組みから外れていくでしょう。

それは、歯を磨いたり、お風呂に入ったりするのと同じ、ただそこにある「日常のシンプルな風景」へと変化しているのです。

ヨガという行為がエゴの道具から離れ、自分の生活そのものと一体化するこの変化こそ、30日間毎日通うことで得られる最も本質的な恩恵に他なりません。

 

終わりに:サントーシャ(足るを知る)の発見

30日間を走りきったからといって、世界が劇的に変わるわけではないかもしれません。

しかし、あなたの心には、ヨガを始める前にはなかった「サントーシャ(足るを知る)」の穏やかなスペースが生まれていることに気づくはずです。

外側に何もない静かな状態そのものが、実は最も満たされているのだという心のあり方。

都会の喧騒や過剰な情報の波から離れ、ただ自分の呼吸と身体の重みだけを感じる時間は、人生において極めて貴重な余白となるに違いありません。

そこには、完璧なポーズを目指したり、誰かと優劣を競ったりする余計なこだわりは不要なのです。

ただ「毎日そこに居る」というシンプルな修習を重ねてエゴを手放すことで、あなた自身が本来持っている素晴らしい軽やかさに気づくことができるでしょう。



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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、ENQAN(ヨガ)、JIQAN(内観)、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。