340.日常の中にサマーディの断片を見つける

365days

サマーディ(三昧)――それは、ヨーガの最終目的地として語られる、主観と客観の区別が消え去った、宇宙との完全なる一体化の境地です。この言葉を聞くと、多くの人は、ヒマラヤの聖者が何十年もの苦行の末にようやく到達する、非日常的で、手の届かない高みにあるものだと想像するかもしれません。確かに、ヨーガ・スートラに説かれるような完全なサマーディは、深い修行の賜物でしょう。しかし、その輝きの「断片」とも言うべき体験は、実は私たちの日常の中に、星屑のように散りばめられているのです。

その断片を見つけ、味わい、育んでいくこと。それこそが、現代に生きる私たちにとっての、地に足のついた霊的な実践と言えるでしょう。このサマーディの断片を、現代心理学の言葉で表現するならば、心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱した「フロー状態」が最も近いかもしれません。フローとは、ある活動に完全に没入し、我を忘れている状態です。そこでは、行為者と行為が一体となり、時間感覚が歪み、活動そのものから深い喜びと満足感が得られます。このフロー状態の構成要素は、サマーディの体験と驚くほど多くの共通点を持っています。

では、具体的に、私たちはどのような瞬間に、この「小さなサマーディ」を体験しているのでしょうか。

例えば、創造的な活動に没頭している時。画家がキャンバスに向かい、音楽家が楽器を奏で、作家が物語を紡いでいる時、彼らの意識から「私が描いている」「私が演奏している」という自我は消え去り、ただ創造の流れそのものと一体化しています。インスピレーションが、彼らという媒体を通して、ただ湧き出てくるのです。

あるいは、スポーツや身体活動の最中にも、それは訪れます。熟練したサーファーが波と完全に一体になる瞬間。長距離ランナーが、苦しさを超えた先で至福の境地(ランナーズハイ)を体験する時。彼らは、自分の身体をコントロールしているという感覚を超え、動きそのものになっています。

職人的な仕事に打ち込む時間もまた、サマーディの入り口となり得ます。料理人が無心で野菜を刻む時、庭師が黙々と庭の手入れをする時、そこには思考の入り込む隙間はありません。ただ、今この瞬間の行為への、完全な集中があるだけです。

そして、おそらく最も普遍的な体験は、自然の圧倒的な美しさに触れた時でしょう。満天の星空を見上げて言葉を失う瞬間。壮大な夕焼けのグラデーションに心を奪われ、時間が止まったかのように感じる時。その瞬間、「私」という小さな存在は、広大な宇宙の美の中に溶け込み、一体化しています。

これらの体験に共通しているのは、自我意識(エゴ)の一時的な不在です。普段は「私が、私が」と主張する心の声が静まり、代わりに、より大きな流れへの「没入」と「一体感」が支配しています。これは、サマーディの本質的な特徴と完全に一致します。

大切なのは、これらの貴重な瞬間を、ただの「気分の良い時間」として見過ごさないことです。フロー状態に入ったことに気づき、その感覚を意識的に味わい、感謝すること。そして、「どうすれば、この状態を意図的に創り出せるだろうか?」と自問してみることです。あなたにとって、何がフローの引き金になるのか(それは人によって、音楽、ダンス、登山、プログラミング、子育てなど、様々でしょう)を知り、その活動のための時間を、意識的に生活の中に組み込むのです。

悟りや解脱は、ある日突然、雷に打たれるように訪れるものではないのかもしれません。それはむしろ、日常という大地に散らばる、これらのサマーディの輝く断片を、一つひとつ丁寧に拾い集め、それらを繋ぎ合わせて、あなただけの美しい星座を描いていくような、静かで、喜びに満ちたプロセスなのです。あなたの日常こそが、宇宙との一体化を体験するための、最も神聖で、豊かな舞台なのですから。



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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、ENQAN(ヨガ)、JIQAN(内観)、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。