315.マルチタスクをやめ、シングルタスクに徹する

365days

現代社会は、私たちに「マルチタスク」、すなわち複数の作業を同時にこなす能力を、まるで美徳であるかのように要求します。メールに返信しながら電話で話し、企画書を作成しながらチャットの通知に応じる。そんな器用さが「仕事ができる人」の証であるかのような空気が、私たちの職場や生活を覆っています。しかし、私たちはここで一度、静かに立ち止まり、問い直してみる必要があるのではないでしょうか。この絶え間ない作業の切り替えは、本当に私たちを豊かに、そして効率的にしているのでしょうか。

ヨガ哲学の視点から見れば、その答えは明確に「否」です。そして興味深いことに、この古代の叡智は、最新の脳科学の知見と見事に一致しているのです。

脳科学者たちは、人間の脳は厳密な意味でマルチタスクを行うようには設計されていない、と指摘します。私たちが「同時にやっている」と感じている時、脳内で起きているのは、実はマルチタスクではなく「タスク・スイッチング」という現象です。つまり、一つの作業から別の作業へと、猛烈なスピードで注意の焦点を切り替えているに過ぎません。そして、この切り替えには、私たちが思う以上に大きな認知的コスト、すなわちエネルギーが必要とされます。スイッチングの度に、脳は前の作業の文脈を一旦保留し、新しい作業の文脈を読み込み直さなければなりません。このプロセスが、私たちの集中力を細切れにし、思考の深度を浅くし、結果的に一つ一つの作業の質を低下させてしまうのです。

これは、ヨガの言葉で言えば、自ら心の作用(ヴリッティ)を意図的に増やし、心を激動の状態、すなわち「ラジャス」の性質で満たし続ける行為に他なりません。ヨーガ・スートラの冒頭で示されるヨガの定義、「チッタ・ヴリッティ・ニローダハ(心の作用の止滅)」とは、全く逆の方向へと進む試みです。私たちは効率を求めているつもりが、実は自らの心を疲弊させ、エネルギーを無駄に浪費しているだけなのかもしれません。

では、どうすればよいのでしょうか。その答えは、マルチタスクという幻想から手を放し、「シングルタスク」という、一つの時に一つのことだけを行う、という原則に立ち返ることにあります。これは、ある種の「稽古」として、意識的に生活の中に取り入れていく必要があります。

例えば、食事の時間。テレビを見ながら、スマートフォンをいじりながらではなく、ただ、目の前の食事と向き合ってみる。食材の色、形、香り、そして口に入れた時の食感や味わい。その一つ一つに、全意識を集中させるのです。コーヒーを飲む時は、ただコーヒーを飲む。カップの温かさ、立ち上る湯気、液体の黒い輝き、そして喉を通り過ぎる時の感覚。歩く時は、ただ歩く。足の裏が地面に触れる感覚、身体の揺れ、頬を撫でる風。

最初は、すぐに他の考えが浮かんでくることに気づき、もどかしく感じるかもしれません。しかし、このシングルタスクの実践こそが、前項で述べた「集中筋」を日常生活の中で鍛える、最も効果的なトレーニングとなるのです。

引き寄せの法則は、エネルギーの法則です。あなたの注意がどこにあるか、そこにあなたのエネルギーは流れます。マルチタスクは、あなたの貴重なエネルギーを、複数の蛇口からちょろちょろと流し続けるようなものです。一方、シングルタスクは、すべての水量を一つの蛇口に集め、力強い流れを生み出します。

「今、ここ」で行っている一つの行為に、あなたの全存在、全エネルギーを注ぎ込むこと。その時、その行為は単なる作業ではなく、一種の瞑想、あるいは祈りへと昇華されます。その深く満たされた「在り方」から放たれる波動こそが、最も純粋で強力な磁力となり、あなたの望む未来、調和に満ちた現実を引き寄せるための、確かな土台を築き上げてくれるのです。



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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、ENQAN(ヨガ)、JIQAN(内観)、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。