18.「できる・できない」の二元論を超えて – アーサナとプロセス

365days

ヨガのアーサナ(ポーズ)を実践する中で、私たちの心を最もかき乱し、その本質から遠ざけてしまう罠。それは、「できる」と「できない」という、単純で暴力的な二元論です。SNSを開けば、人間離れした柔軟性や力強さで、完璧なアーサナを披露する人々の写真が溢れています。それらを目にするたび、私たちは無意識のうちに自分自身をその「理想形」と比較し、「できる私」に優越感を覚え、「できない私」に劣等感や焦りを抱いてしまいます。しかし、この競争的なマインドセットこそ、ヨガが私たちを解放しようとしている、まさにその「心の作用(ヴリッティ)」なのです。

ヨガのゴールは、隣の人より足が高く上がることでも、昨日より深く前屈できることでもありません。『ヨーガ・スートラ』が示すように、その究極の目的は「心の作用の止滅」、つまり、絶え間なく揺れ動く思考や感情の波を鎮め、内なる静寂に至ることにあります。アーサナは、その目的地へと向かうための、一つの優れた道具、あるいは乗り物に過ぎません。他者との比較はもちろんのこと、過去の自分や理想の自分との比較さえも、心の湖に新たな波紋を立てる行為であり、ヨガの旅路を妨げる重りとなってしまいます。

では、アーサナの価値はどこにあるのでしょうか。それは、結果としての「完成形」にあるのではなく、そこに至るまでの、そしてその中にとどまっている間の、「プロセス」そのものにあります。ポーズを深めようとする中で、身体のどこが抵抗し、どこが応えてくれるのか。その抵抗に対して、心はどのように反応するのか。焦りか、苛立ちか、あるいは受容か。呼吸は浅くなっていないか、穏やかさを保てているか。その一瞬一瞬における、身体と心と呼吸の対話。この「内なる体験」の質こそが、ヨガの実践のすべてであり、何物にも代えがたい宝なのです。それは、結果だけを評価する現代の功利主義的な価値観から離れ、行為そのもののプロセスに喜びと意味を見出すという、生き方の転換を私たちに促します。

ここに、日本の武道や芸道にも通じる「稽古」という思想の深さを見出すことができます。「稽古」とは、「古(いにしえ)を稽(かんが)える」と書くように、先人が探求してきた型や知恵に敬意を払いながら、それを今の自分の心身で追体験し、内面化していくプロセスです。そこには、一朝一夕の完成はありません。ただ、今日の自分にできることを、淡々と、しかし誠実に行う。その日々の地道な積み重ねの中にしか、真の深化はあり得ないのです。

この視点に立つ時、「できない」ことの価値が、全く違って見えてきます。「できない」という壁に直面した時、私たちは初めて、傲慢さから解放され、謙虚になります。どうすればこの壁を越えられるだろうかと工夫を始め、自分の身体と真剣に対話するようになります。それは、安易な成功体験からは決して得られない、自己理解を深めるための絶好の機会なのです。「できない」と感じている自分自身を、ジャッジすることなく、ただ観察し、受け入れる。その行為自体が、自己受容という、極めて重要なヨガの修練となります。

ヨガマットの上は、私たちの人生の縮図です。「できる・できない」「成功・失敗」「優・劣」といった、社会が押し付ける二元論的な物差しを、一旦脇に置いてみましょう。そして、ただ「今、ここ」で起こっているプロセスそのものに、全身全霊で没入するのです。その時、私たちは結果への執着という重荷から解放され、行為そのものがもたらす純粋な喜びと平和を発見します。この境地こそが、外側の条件に左右されない、内側から湧き出る真の自由なのです。そして、この自由で満たされた「在り方」こそが、あなたが望む現実を、努力や抵抗なしに、ごく自然に引き寄せる力の源泉となるのです。




【ショートメール講座】
1年で、人生はもっと身軽になる。
ブログのエッセンスを365通に凝縮した「あるがままに生きるヒント365」。
毎日届く本質的な言葉が、あなたの運気と視点をアップデートします。
軽やかな日々へのヒントをお受け取りください。

【ENGAWA】あるがままに生きるヒント365
は必須項目です
  • メールアドレス
  • メールアドレス(確認)
  • お名前(姓名)
  • 姓 名 

      

- ヨガクラス開催中 -

ENQAN(エンカン):【軽い身体へ】
野生的な身体と、極限の軽さを研ぎ澄ますヨガ
「その身体は、まだ野生を知らない。」

太陽礼拝から始まる怒涛のアーサナ、そして逆転・後屈が織りなす圧倒的な運動量。
都市の重力に縛られた身体を呼び覚まし、
エゴを解体するダイナミックなシークエンス。

重力から解放された「野生的な器(身体)」を再構築し、
直観が鋭く働く、極限まで軽い身体へとあなたをチューニングします。

『ぐずぐずしている間に
人生は一気に過ぎ去っていく』

人生の短さについて 他2篇 (岩波文庫) より

- 内観クラスも開催中 -

JIQAN(ジカン):【軽い自己へ】
自己をどこまでも軽くし、人生をシフトさせる探究
「自己を『増やす』のをやめれば、人生は軽くなる。」

恐怖、恥、プライド、重いエゴを削ぎ落とし、
自己を極限まで軽くする「自己螺旋探究プログラム」。
身体の解放(ENQAN)を土台に、内観を通じて不足から充足の世界へ。

重い自己を脱ぎ捨て、本来のあなたが歩むべき「王道」へ
平行移動を始めましょう。

『色々と得たものをとにかく一度手放しますと、
新しいものが入ってくるのですね。 』

あるがままに生きる 足立幸子 より

- 瞑想会も開催中 -

engawayoga-yoyogi-20170112-2

SIQAN(シカン):【軽い波動へ】
日本一簡単な「心身脱落」の、ただゆるめる瞑想
「何もしないことが、最大の解決策になる。」

「集中しよう」とする作為を捨て、ただ肩の荷を下ろしていく。
心身脱落・脱落心身の境地へ誘う、
日本一簡単なミニマル瞑想。

身体を弛緩させることで淀んだ重みは消え、
クリアなオーラと軽い波動が自然に訪れます。
「ただ在るだけ」という充足が、本来の状態であることに気づく時間を。

瞑想は時間×回数×人数に比例して深まります。

『初心者の心には多くの可能性があります。
しかし専門家と言われる人の心には、
それはほとんどありません。』

禅マインド ビギナーズ・マインド より

- おすすめ書籍 -

ACKDZU
¥1,250 (2026/04/29 14:11:38時点 Amazon調べ-詳細)
¥2,079 (2026/04/30 02:38:17時点 Amazon調べ-詳細)

ABOUT US

アバター画像
Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、ENQAN(ヨガ)、JIQAN(内観)、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。