「ヨガを始めてみたいのですが、種類が多すぎて何を選べばいいかわかりません」
「ハタヨガ、アシュタンガ、パワーヨガ…呪文のように聞こえてきます」
スタジオでよく耳にするお悩みです。
お気持ち、よくわかります。
現代のヨガは、まるでラーメン屋さんのようです。
醤油、味噌、塩といった王道から、家系、二郎系、魚介豚骨、さらにはトマトラーメンや冷やし中華まで。
「結局、どれが一番美味しいの?」と聞きたくなる気持ちと同じでしょう。
ですが、ご安心ください。
複雑に見えるヨガの流派も、実はたった一つの源流から広がり、いくつかの大きな川に分かれているだけなのです。
今日は、その迷いの森を抜けるための、シンプルな地図をお渡ししたいと思います。
すべては「ハタヨガ」から始まっている
まず、これだけ覚えておいてください。
今、世界中のヨガスタジオで行われている、ポーズ(アーサナ)をとるヨガは、ほぼすべて「ハタヨガ(Hatha Yoga)」の親戚です。
「ハ(Ha)」は太陽(吸う息・陽・動)、「タ(Tha)」は月(吐く息・陰・静)を意味します。
対極にあるエネルギーのバランスを取り、身体を使って心と気を整えるもの。
それがハタヨガです。
ですから、「ハタヨガ」というクラスがあったら、それは「THE ベーシック」だと思って間違いありません。
すべての流派の「お母さん」のような存在です。
では、そこからどう枝分かれしていったのでしょうか。
ざっくりと、3つのタイプに分けてみましょう。
1. 動きたい!汗をかきたい!「陽」のヨガ
もしあなたが、「身体をしっかり動かしてリフレッシュしたい」「ダイエット効果も期待したい」「達成感が欲しい」と思っているなら、このグループがおすすめです。
アシュタンガヨガ:
決まったポーズを決まった順番で、呼吸に合わせて流れるように行います。運動量が多く、ストイックで、まさに「動く瞑想」。体育会系の方や、規律を好む方に人気です。
パワーヨガ:
アシュタンガヨガをベースに、現代人向けにアレンジされたもの。アメリカで生まれました。筋力トレーニングの要素が強く、フィットネス感覚で楽しめます。
ヴィンヤサヨガ:
呼吸と動きを連動させる(ヴィンヤサ)スタイル。アシュタンガのように順番は決まっておらず、先生によって自由なシークエンス(流れ)が楽しめます。ダンスのような心地よさがあります。
2. 整えたい!癒されたい!「陰」のヨガ
もしあなたが、「疲れが溜まっている」「激しい運動は苦手」「柔軟性を高めたい」「心を落ち着けたい」と思っているなら、このグループがぴったりです。
陰ヨガ(インヨガ):
一つのポーズを3分〜5分ほどキープします。筋肉の力を抜き、関節や結合組織にじっくりとアプローチします。静寂の中で自分の内面と向き合う、深いリラックス効果があります。
リストラティブヨガ:
「回復」を意味します。ブランケットやボルスター(クッション)などの道具(プロップス)に身を委ね、心身を完全に休息させるヨガです。究極の癒やしとも言われます。
ヨガニドラ:
「眠りのヨガ」です。仰向けの姿勢(シャヴァーサナ)のまま、声の誘導に従って意識を巡らせていきます。1時間の練習で4時間の睡眠に匹敵するとも言われる、深い休息法です。
3. 正しく使いたい!学びたい!「知」のヨガ
もしあなたが、「身体が硬い」「怪我が怖い」「一つひとつのポーズを丁寧に深めたい」「解剖学的なことに興味がある」なら、こちらです。
アイアンガーヨガ:
ベルトやブロックなどの道具を積極的に使い、身体の正しいアライメント(位置)を細かく調整します。身体の使い方の基礎をしっかり学べるので、初心者や高齢者にも非常に安全で効果的です。
で、結局どれがいいの?
ここまで説明してきましたが、最終的な答えは一つです。
「やってみて、しっくりくるもの」
これに尽きます。
ラーメンと同じで、その日の体調や気分によって「食べたいもの」は変わります。
元気な日はアシュタンガで汗をかきたいかもしれないし、疲れた夜はリストラティブで泥のように眠りたいかもしれない。
それでいいのです。
一つの流派に忠誠を誓う必要はありません。
大切なのは、「ヨガという時間」を持つことです。
どの流派の入り口から入ったとしても、目指す頂上は同じです。
それは、「心の静寂」と「本当の自分との再会」です。
EngawaYogaでは、特定の流派にこだわりすぎず、その時集まった皆さんの呼吸や顔色を見て、必要な動きを紡いでいくスタイルを大切にしています。
あえて言うなら、「縁側ヨガ」という流派かもしれませんね。
古民家の静けさの中で、ただ呼吸に還る。
難しい名前は忘れて、まずは一度、座りにいらしてください。
そこから、あなただけのヨガの旅が始まります。
ではまた。


