「身体」と「時間」の再構築 – 早朝の静寂とヨガがもたらすもの

自己啓発

私たちは、カレンダーや時計といった、人間が作り出した外部のシステムによって、自らの生のリズムを規定されています。月曜日には憂鬱を感じ、金曜日には解放感を覚える。こうした集合的な感情の波に、知らず知らずのうちに同調して生きています。しかし、ミニマリズムの実践が深まると、その探求はモノの領域を超え、時間や身体といった、より根源的な領域へと及んでいきます。それは、外部のシステムから自らの身体と時間を取り戻す、内なる旅の始まりです。

 

朝5時に起き、何もない部屋でヨガをする意味

ミニマリストの朝は、静寂とともに始まります。がらんとした、家具一つない部屋。その空間は、夜の間に沈殿した思考の澱を浄化し、新たな一日を迎えるための聖域となります。そして、その何もない空間で、静かにヨガの実践が始まります。

この「何もない部屋」は、単にモノがない空っぽの場所ではありません。むしろ、身体があらゆる可能性へと開かれるための「道場」と呼ぶべき空間です。椅子や机といったモノが存在しないからこそ、私たちの身体は、重力との関係、呼吸の深さ、意識が今どこにあるのかを、より繊細に感じ取ることができます。モノによって規定されていた身体の動きから解放され、本来持っていたはずのしなやかさと感覚、すなわち「身体知」が覚醒していくのです。

ヨガ哲学において、アーサナ(坐法やポーズ)は、単なるストレッチや体操とは一線を画します。それは、身体という最も身近な道具を通して、絶えず揺れ動く心を観察し、制御するための、洗練された古代の技法です。特に、感覚器官が外部からの刺激に惑わされにくい早朝の静かな時間は、意識を内側(アンタラanga)へと向ける旅に最適な環境を提供してくれます。

朝日を浴びながら行うヨガは、プラーナ(Prana)、すなわち宇宙に遍満する生命エネルギーを身体に取り込み、その流れを整えるための儀式でもあります。この儀式を通じて、私たちは心身を調律し、一日を最高のコンディションで始めるための準備を整えるのです。

 

曜日感覚からの解放と「自分軸」の確立

人生を変える方法は三つしかない、とある賢者は言いました。それは、「時間配分を変える」「住む場所を変える」「付き合う人を変える」こと。このうち、最も手軽で、かつ最も効果的なのが「時間配分を変える」ことです。早起きは、まさにこの時間配分の革命に他なりません。

たとえば毎日5時に起き、同じリズムで生活を始めると、やがて興味深い変化が訪れます。それは、「曜日感覚」の希薄化です。社会が定めた「平日」と「休日」の境界線が溶け出し、毎日が等しく価値のある一日として立ち現れてきます。月曜の朝に感じる重圧も、週末を待ち焦がれるそわそわした気持ちも、次第に消えていきます。

この状態は、禅の言葉でいう「日々是好日(にちにちこれこうじつ)」の境地に近いかもしれません。天候や曜といった外部の条件に心を乱されることなく、ただ、今この瞬間を新鮮な気持ちで生きる。社会的な時間意識から降り、自らの内なるリズムに耳を澄ませることで、私たちは時間配分の主導権を社会から自分自身へと取り戻すことができるのです。

よく「自分軸で生きる」という言葉が使われますが、それは抽象的な精神論や自己啓発のスローガンではありません。それは、睡眠、食事、活動といった自らの身体的リズムを、自分の心身が最も快適だと感じるパターンへと具体的に調律し直す、地道な実践の積み重ねから生まれるものです。そして、そのチューニングの基点、一日を始めるための音叉の役割を果たすのが、早朝の静寂の中で行われるヨガなのです。

モノを減らした空間で、社会的な時間の束縛からも自由になる。そうして初めて私たちは、自らの身体感覚と生命のリズムという、誰にも奪うことのできない「究極の所有物」に立ち返ることができるのです。それは、世界をどう経験し、どう意味づけるかを、自分自身で再定義していくための、深遠な修練と言えるでしょう。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。