先日、縁側でお茶を飲みながら(嘘です)、ある方からとても興味深いお話を聞きました。
その方はずっと引っ越しを考えていて、ようやく「これだ!」という物件に出会ったそうです。
駅からの距離、広さ、家賃、そして何より憧れていた南向きの大きな窓。
条件だけを見れば、これ以上ないというほどの掘り出し物。
いわゆる「好条件の物件」です。
胸を躍らせて内見に行ったその日、天気は快晴でした。
南向きの二つの窓からは、たっぷりと陽の光が差し込んでいる……はずでした。
「でもね、不思議なんです。部屋に入った瞬間、信じられないくらい暗かったんです。物理的には明るいはずなのに、なぜかドヨーンと重くて、暗い。だから、やめました」
私はその話を聞いて、深く頷きました。
「それは、正解でしたね。絶対にやめたほうがいい部屋です」と。
データには映らない「気」の重さ
私たちは普段、物事を判断するときに「条件」や「スペック」を重視しがちです。
南向きだから日当たりが良いはずだ。
駅近だから便利に違いない。
これだけの条件でこの家賃ならお得だ。
これらはすべて、頭(マインド)の判断です。
しかし、私たちの身体や本能は、もっと微細な情報をキャッチしています。
ヨガの視点で言えば、それはその場所が持つ「プラーナ(気)」の質です。
どんなに条件が良くても、前の住人の重い感情が残っていたり、土地そのもののエネルギーが淀んでいたりする場所は存在します。
「物理的には明るいのに、なぜか暗く感じる」「風も通って気持ちがいいのに、なぜか重く感じる」というのは、視覚情報と感覚情報の不一致が起きているサイン。
そして、この不一致が起きたとき、信じるべきなのは間違いなく「感覚」の方です。
頭は「もったいない」と囁くでしょう。
「こんな好条件、もう二度と出てこないよ」と焦らせるでしょう。
しかし、その声に従って契約してしまったら、きっとその場所で原因不明の体調不良や、気分の落ち込みに悩まされることになったかもしれません。
自分の感覚を信じて「やめる」という決断をしたその方は、素晴らしいヨガの実践者だと言えます。
「絶対にここじゃなきゃ嫌だ!」という執着の罠
もう一つ、物件探しにおいて注意すべき危険なサインがあります。
それは、異常なほどの「執着」です。
「この部屋がいい!絶対にこの部屋じゃなきゃ嫌だ!」
「ここを逃したら私の人生は終わりだ!」
もし物件を見て、恋に落ちたようにこう感じてしまったら、一度深呼吸をして冷静になったほうがいいかもしれません。
なぜなら、その強烈な感情は、あなたの健全な直感ではなく、別の何かに「引き寄せられている」可能性があるからです。
スピリチュアルな言い方をするなら、波長が合ってしまった、ということ。
もし自分の状態が不安定だったり、何か欠乏感を抱えていたりするとき、同じような「欠乏」や「不安定さ」を持つ物件に強烈に惹かれ合うことがあります。
それは「運命の出会い」のように見えて、実は「共依存的な引き合い」なのです。
本当に良いご縁(物件であれ、人であれ)というものは、もっと静かで、穏やかなものです。
「ああ、ここなら自然体でいられそうだな」
「なんとなく、心地いいな」
熱狂的な興奮ではなく、じんわりとした温かさや、静かな納得感があるもの。
それが、あなたの魂(アートマン)が求めている場所です。
身体は最高のセンサー
ヨガの練習を続けていくと、この「場所のエネルギー」に対する感度が上がっていきます。
アーサナや瞑想を通して、自分の内側のノイズを取り除いていくと、外側のノイズにも敏感になるからです。
お店に入った瞬間、「あ、ここは長居しないほうがいいな」と感じたり。
逆に、何でもない道端で「ここは空気が澄んでいるな」と足が止まったり。
現代社会は、スペックや数値、他人の評価(口コミ)で溢れています。
「食べログ3.0だからやめよう」ではなく、「なんとなく美味しそうな匂いがするから入ってみよう」。
「南向きだから良い」ではなく、「入った瞬間に深呼吸したくなるから良い」。
そんなふうに、自分の身体を最高のセンサーとして生きていくこと。
それは物件探しに限らず、仕事選びや人間関係においても、あなたを正しい方向へと導いてくれるはずです。
もし今、何かを選択しようとして迷っているなら、条件リストを一度脇に置いてみてください。
そして、その選択をしたときに、自分の呼吸が深くなるか、それとも浅くなるか。
身体が軽くなるか、重くなるか。
ただそれだけを観察してみてください。
あなたの身体は、頭よりもずっと賢いのですから。
ではまた。


