身体をリラックスさせることは、ヨガで大切なこと

自己啓発

ヨガを推奨しております。
それは、ヨガが現代人が失ってしまった「真のリラックス」を取り戻すための、最もシンプルで強力なツールだからです。

「ヨガで大切なことは何ですか?」と聞かれたら、私は迷わずこう答えます。
「身体をリラックスさせること。まずは、そこからです」と。
難しいポーズをとることでも、神秘的な体験をすることでもありません。
ただ、あなたのその強張った肩を、食いしばった奥歯を、ふっと緩めること。
そりゃもちろん、それが一番大切なのです。

今日は、なぜヨガにおいてリラックスがこれほどまでに重要なのか、そして現代社会で「緩む」ことの本当の意味について、全方位的に、そして少し深いところまでお話ししてみたいと思います。

 

「リラックス」を勘違いしている現代人

まず、少し厳しいことを言いますと、現代人の多くは「リラックスの仕方」を忘れてしまっています。
ソファに寝転がってスマホを見ることや、お酒を飲んで憂さを晴らすこと、あるいは休日にテーマパークで遊び疲れること。
これらをリラックスだと思っている人が多いのですが、ヨガの視点から見ると、これらは本当のリラックスではありません。
これらは単なる「気晴らし」や「感覚への刺激」であり、脳や神経はずっと興奮状態にあるからです。

本当のリラックスとは、「シャヴァーサナ(屍のポーズ)」の状態です。
身体の重みを完全に大地に預け、筋肉の緊張を手放し、交感神経(戦うモード)から副交感神経(休むモード)へとスイッチが完全に切り替わった状態。
「何もしない」「何も生み出さない」ことを、自分に許している状態。
この「能動的な休息」こそが、枯渇したエネルギーを回復させる唯一の方法なのです。

 

なぜ、身体を緩める必要があるのか?(身体論)

ヨガのポーズ(アーサナ)をとるとき、「力を抜け」とよく言われます。
なぜでしょうか?
筋肉が緊張していると、血流が滞り、呼吸が浅くなるからです。
そして何より、「感覚」が鈍くなるからです。

ガチガチに力んでいると、自分の身体の微細な声(痛みや違和感、あるいは心地よさ)が聞こえなくなります。
リラックスして筋肉が緩んだとき初めて、私たちは「自分の内側で何が起きているか」を観察できるようになります。
身体を緩めることは、自分の身体と対話するための受信感度を上げる作業なのです。

また、身体の緊張は心の緊張と直結しています(心身一如)。
肩が上がっているときは、心も警戒しています。
逆に、身体が深くリラックスして、お腹の底から呼吸ができたとき、心は自然と「まあ、なんとかなるか」という安心感に包まれます。
心を緩めようと頑張るよりも、身体を緩めてしまった方が、手っ取り早いのです。

 

現代社会という「緊張の培養装置」

私たちは今、常に「緊張」を強いられる社会に生きています。
満員電車、絶え間ない通知音、成果を求められる仕事、SNSでの他者との比較。
これらはすべて、私たちの自律神経を「闘争・逃走反応(戦うか逃げるか)」の状態に釘付けにします。
つまり、24時間、猛獣に狙われているシマウマのような状態で生きているのです。

この慢性的な緊張は、私たちの生命エネルギー(プラーナ)を恐ろしい勢いで浪費させます。
「何もしていないのに疲れる」のは、身体の奥底でずっと緊張スイッチが入りっぱなしだからです。
だからこそ、意識的に「スイッチを切る」練習が必要なのです。
それがヨガです。
ヨガスタジオに来るということは、「社会という戦場」から離れ、「安全な洞窟」に戻ってくるようなものです。
ここで鎧を脱ぎ、武器を置き、ただの柔らかい生き物に戻る時間を持つのです。

 

リラックスの先にある、スピリチュアルな扉

そして、ここからがヨガの真骨頂です。
身体が極限までリラックスしたとき、何が起こるのでしょうか。

身体の感覚が薄れ、まるで肉体の輪郭が溶けていくような感覚になったことはありませんか?
ヨガの経典では、この肉体(アンナマヤ・コーシャ)の緊張が解けたとき、その奥にあるエネルギー体(プラーナマヤ・コーシャ)や、精神体(マノマヤ・コーシャ)へのアクセスが可能になると説いています。

リラックスとは、単なる休息ではありません。
それは「エゴ(自我)のガードを下げる」行為でもあります。
普段、「私が、私が」と頑張っているエゴが、リラックスによって静かになると、その隙間から、もっと大きな存在(大いなる意識、宇宙、ハイヤーセルフ、呼び方は何でも構いません)との繋がりが回復します。

深い瞑想状態で得られるインスピレーションや至福感は、緊張した状態では決して訪れません。
神聖なものは、リラックスした隙間に降りてくるのです。
「手放す(Let go)」という言葉がありますが、何を一番手放すべきかと言えば、それは「身体の力み」であり、「コントロールしようとする意思」です。
完全に委ねた(サレンダーした)とき、私たちは個人の限界を超えて、大きな流れに乗ることができるようになります。

 

結論:緩むことは、最強の生きる技術

「そりゃもちろん、リラックスは大切ですよ」
この言葉の意味が、少し深まったでしょうか。

頑張ることが美徳とされる世の中で、力を抜くことには勇気がいります。
「サボっているのではないか」「置いていかれるのではないか」という不安がよぎるかもしれません。
でも、思い出してください。
弓矢は、弦をギリギリまで引いて緊張させるからこそ遠くへ飛びますが、ずっと引きっ放しでは弦が切れてしまいます。
緩めることは、次に進むための活力を養う、最も生産的な行為です。

まずは、今この瞬間。
奥歯の噛み締めを解いてみてください。
肩を耳から遠ざけるようにストンと落としてみてください。
そして、ため息をつくように、長く、深く吐いてみてください。

その緩んだスペースに、あなたの本来の生命力が、そして幸運が、流れ込んでくるはずです。
ただ「ぼんやり」する時間を持ちましょう。
それこそが、現代における最高の贅沢であり、修行なのですから。

ではまた。

 


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。