ヨガの効果を最大化する「残心」とは?ポーズの後の静寂が人生を変える理由

自己啓発

ヨガを推奨しております。
それは、ヨガが単なるエクササイズではなく、私たちの「在り方」そのものを整える、静かなる儀式だからです。
ヨガのクラスが終わった後、あなたはどのようにマットを降りているでしょうか?
「終わったー!」とすぐにスマホをチェックしたり、「次は買い物に行かなきゃ」と慌ただしく着替え始めたりしていないでしょうか。

もしそうだとしたら、大変にもったいないことをしています。
ヨガの果実は、ポーズ(アーサナ)の最中ではなく、その直後の「余韻」の中にこそ実るからです。
今日は、武道や茶道にも通じる日本の美しい精神性「残心(ざんしん)」をキーワードに、ヨガの終わらせ方、そして日常への戻り方について、深く静かにお話ししてみたいと思います。

 

「残心」とは何か?途切れない意識の美学

「残心」という言葉をご存じでしょうか。
剣道や弓道などの武道において、技を繰り出した後も油断せず、相手の反撃に備えて身構える姿勢や、心のありようを指します。
文字通り、「心を残す」「心を途切れさせない」ということです。

矢を放った後、弓道家はその矢が的に当たるのを見届けるまで、あるいはその後も、凛とした姿勢を崩しません。
茶道においても、客人が帰った後、その姿が見えなくなるまで見送り、一人静かに茶室に戻って湯を沸かす音を聞く時間を大切にします。
行為が終わったからといって、プツリと意識を切らないこと。
動作と動作の間、あるいは動作が終わった後の「余白」にこそ、その人の品格や精神性が宿るという考え方です。

これをヨガに置き換えてみましょう。
シャヴァーサナ(屍のポーズ)から起き上がり、「ナマステ」と挨拶をした直後。
その瞬間のあなたの心は、どこにあるでしょうか。
まだマットの上に「残って」いるでしょうか。それとも、もうスタジオの外の喧騒へと飛び去ってしまっているでしょうか。

 

現代社会は「切り替え」を強要しすぎる

現代社会は、私たちに過剰なまでの「切り替え」を求めます。
仕事が終われば即座に家庭モードへ、移動中もスマホで情報収集、隙間時間があればタスク処理。
「次、次、次」と、常に意識を未来へと放り投げ続けることを強要されます。
これでは、心(マインド)が休まる暇がありません。
常にオンとオフを激しく行き来することで、自律神経は疲弊し、「今、ここ」を味わう感性が摩耗していきます。

ヨガスタジオに来ている時でさえ、「はい、終わりました。お疲れ様でした!」という号令と共に、魔法が解けたかのように現実に引き戻される感覚を持ったことはないでしょうか。
これは、消費社会的なヨガの弊害とも言えます。
ヨガを「1時間のパッケージ商品」として消費し、終わったら「はい、次」と切り捨てる。
しかし、ヨガの本質は、マットの上で養った静けさを、いかにしてマットの外(日常)へと持ち運ぶかという点にあります。
その架け橋となるのが、「残心」なのです。

 

シャヴァーサナ後の「5分間」がすべてを決める

ヨガの練習において、最も重要なポーズはシャヴァーサナだと言われます。
全ての動きを止め、死体のようにただ横たわる時間。
ここで私たちは、アーサナによって高まったプラーナ(生命エネルギー)を全身に行き渡らせ、肉体、呼吸、精神を統合させます。

そして、ゆっくりと起き上がった後の数分間。
ここが「残心」の実践の場です。
身体はまだ温かく、呼吸は深く穏やかで、頭の中のおしゃべり(思考)は静まっています。
この、世界と自分との境界線が曖昧になっているような、透明な感覚。
この感覚を、すぐに「日常の雑事」で上書きしないでください。
急いでスマホを見ないこと。
大きな声でおしゃべりを始めないこと。
ただ、その静寂を、壊れやすいガラス細工を扱うように、大切に味わうのです。

この「余韻」の中に留まる時間こそが、脳の可塑性(変化する性質)に働きかけ、新しい神経回路を定着させます。
「私は穏やかである」「私は満たされている」という感覚を、細胞レベルで記憶させるのです。
残心のないヨガは、せっかく炊きあがったご飯を、蒸らさずにすぐにかき混ぜてしまうようなものです。
美味しさ(効果)を味わうには、「待つ」時間が必要なのです。

 

スピリチュアルな視点:エネルギーの「漏れ」を防ぐ

エネルギー的な観点からも、残心は重要です。
ヨガの直後、私たちのチャクラ(エネルギーセンター)やナーディ(エネルギーの通り道)は大きく開いています。
非常に感受性が高く、無防備な状態とも言えます。
この状態で、いきなりネガティブなニュースを見たり、騒がしい場所に飛び込んだりすることは、開いた扉から泥足で他人が入ってくるようなものです。
せっかく蓄えたプラーナが漏れ出し(プラナ・リーク)、逆に疲労感や不安定さを招く原因にもなります。

「残心」を持つことは、自分のオーラやエネルギーフィールドの扉を、自分の意志で静かに、丁寧に閉じる作業でもあります。
「私はこれから日常に戻りますが、内側の静けさは失いません」という意図(サンカルパ)を持つこと。
そうすることで、ヨガのエネルギーを内側に密閉し、日常生活の動力源として保つことができるのです。

 

日常生活における「残心」の実践

ヨガマットの上で練習した「残心」は、日常生活のあらゆる場面に応用できます。

メールを送信した後、すぐにブラウザを閉じるのではなく、一呼吸置いて相手に想いを馳せる。

食事を終えた後、すぐに食器を片付けるのではなく、「ごちそうさま」の余韻を味わう。

人と別れた後、すぐにスマホを見るのではなく、その人との会話の温もりを反芻する。

靴を脱いだ後、そのままにするのではなく、向きを揃える(脚下照顧)。

これら一つひとつの「丁寧な終わり方」が、あなたの人生の質を高めます。
雑に終わらせれば、雑な人生になります。
丁寧に終わらせれば、丁寧な人生になります。
とてもシンプルな法則です。

 

終わりに:静寂を持ち運ぶ人へ

私たちは、ヨガをするために生きているのではありません。
より良く生きるために、ヨガをしています。
だからこそ、ヨガと日常を分断せず、その間にある「橋」を大切にしてください。
その橋の名前が「残心」です。

静寂を、香水のように身に纏(まと)って帰るのです。
そうすれば、満員電車の中でも、忙しいオフィスの中でも、あなたは「動く聖域」として存在することができるでしょう。

ヨガは、ポーズが終わったところから、本当のヨガが始まります。
どうか、最後の一呼吸まで、心を残して。

ではまた。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。