ヨガを推奨しております。
前回は「ミニマリストゲーム」を通して、モノを手放すことが人生のパラレルシフトに繋がるというお話をしました。
その中で触れた「外側の景色が変わると、内側の景色も変わる」という法則。
今日はここをもう少し深く、ヨガ的な視点と、現代の脳科学的な視点も交えながら掘り下げてみたいと思います。
「部屋の乱れは心の乱れ」と昔からよく言われますが、これは単なる精神論ではありません。
私たちの視覚情報と脳の処理、そして「プラーナ(気)」の流れには、密接な関係があるのです。
もくじ.
脳は「景色」を処理し続けている
私たちの脳は、起きている間中、目から入ってくる情報を絶えず処理しています。
散らかった部屋、山積みの書類、脱ぎっぱなしの服、統一感のないインテリア…。
これら一つひとつが、脳にとっては「処理すべきノイズ」です。
「あ、片付けなきゃ」「これどこに置こう」「色がうるさいな」
意識していなくても、脳のバックグラウンドでは常にタスクが走り、エネルギー(グルコース)を消費し続けています。
つまり、視界がごちゃごちゃしているだけで、私たちは「脳疲労」を起こしやすくなるのです。
脳が疲れていると、感情のコントロールが効かなくなり、イライラしたり、不安になったりしやすくなります。
これが「外側の景色」が「内側の景色(心理状態)」を荒れさせるメカニズムです。
環境を変えることは、強制的に「内観」を変えること
逆に言えば、外側の環境を整えることは、脳への負荷を減らし、内面の静けさを取り戻すための「最短ルート」でもあります。
ヨガスタジオや神社仏閣に行くと、スッと心が落ち着くのはなぜでしょうか?
それは、視覚的なノイズが極限まで削ぎ落とされているからです。
整えられた空間(外側)に身を置くことで、脳が休息モードに入り、自然と呼吸が深くなり、心(内側)が静まっていく。
これを「環境による強制的な瞑想」と呼んでもいいかもしれません。
意志の力で心を静めようとするのは、実はとても難しいことです。
「イライラしないようにしよう」と思っても、なかなかできません。
しかし、「机の上を片付ける」「花を一輪飾る」「カーテンを開けて光を入れる」といった物理的な行動は、誰にでもすぐにできます。
心を変えるのが難しければ、まずは景色を変えればいいのです。
サウチャ(清浄)の実践としての空間作り
ヨガの八支則には「サウチャ(清浄)」という教えがあります。
これは、身体や心を清潔に保つだけでなく、身の回りの環境を清浄に保つことも含みます。
埃が溜まった部屋、換気されていない部屋には、重たく淀んだエネルギー(タマス)が滞留します。
そんな場所でいくらアーサナ(ポーズ)や瞑想をしても、プラーナの循環は良くなりません。
窓を開けて風を通し、床を磨き、不要なものを手放す。
この空間作りのプロセスそのものが、強力なヨガの実践です。
空間が整うと、そこに流れるプラーナの質が変わります。
清らかなプラーナに満ちた空間にいるだけで、私たちの内側のプラーナも共鳴し、浄化されていくのです。
「ときめく」景色を自分で作る
さらに一歩進んで、あなたの部屋を「自分自身をもてなすための聖域」にしてみましょう。
高価な家具を買う必要はありません。
ただ、自分が本当に「心地よい」「美しい」と感じる景色を、意図的に作ることです。
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お気に入りのマグカップを目につく場所に置く。
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肌触りの良いリネンの布をかける。
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朝、きれいにベッドメイキングをする。
ふとした瞬間に目に入る景色が、自分のお気に入りのものであれば、脳は「快」の信号を出します。
「ああ、幸せだな」「心地よいな」というポジティブな感情が、1日に何度も刷り込まれていきます。
これは、自分自身への無言の肯定であり、自己愛(セルフラブ)を育む行為です。
内と外はシームレスに繋がっている
結局のところ、ヨガの視点では「内」と「外」に境界線はありません。
あなたの部屋は、あなたの心の延長であり、あなたの心は、部屋という空間に染み出しています。
鏡を見るように、部屋を見てみてください。
そこには、今のあなたの心の状態が映し出されているはずです。
もし、心がざわついて落ち着かない時は、まずは靴を揃えるところから始めてみてください。
あるいは、机の上を拭くだけでも構いません。
外側の景色を少しだけ整える。
その小さな変化が、波紋のように内側へと広がり、やがて大きな静寂となってあなたを包み込むことでしょう。
ではまた。


