愛と繋がりの中心であるアナーハタ・チャクラで開かれた心が、いよいよ世界に向けて「表現」される時が来ました。そのためのゲートとなるのが、喉に位置する第五のエネルギーセンター、ヴィシュッダ・チャクラです。
「ヴィシュッダ」はサンスクリット語で「極めて純粋な」あるいは「浄化された」という意味を持ちます。これは、このチャクラが、私たちの思考や感情、そして魂の真実が、一切の不純物なく、純粋な形で外の世界へと表現される場所であることを示しています。元素は「アーカーシャ」、すなわち空間、虚空、エーテル。アーカーシャは、他のすべての元素(地、水、火、風)が存在するための「場」であり、あらゆる可能性を内包する媒体です。音が伝わるのも、このアーカーシャという媒体があるからこそ。ヴィシュッダは、この微細な振動である「音」と「言葉」を司ります。その色は、広大な空や海を思わせる、澄み切った青色です。
このチャクラの主要なテーマは、「自己表現」と「コミュニケーション」です。それは単に雄弁に話す能力だけを指すのではありません。むしろ、胸にある心(アナーハタ)の声に耳を澄まし、それを誠実に、偽りなく、言葉や行動、芸術、あるいは沈黙を通して世界に伝える能力です。あなたの内なる真実、あなたのユニークな視点や才能を、恐れずに世界と分かち合うこと。それがヴィシュッダの働きです。
同時に、ヴィシュッダは「聞く」力も司ります。真のコミュニケーションは、一方的な発信では成り立ちません。相手の言葉の奥にある真意を、沈黙の中に含まれる意味を、批判や判断を挟まずに、深く、共感をもって「傾聴」する能力。これもまた、ヴィシュッダの重要な機能なのです。このチャクラが活性化している人は、話すことと聞くことのバランスが取れており、そのコミュニケーションは、誤解や対立ではなく、理解と繋がりを生み出します。
ヴィシュッダは、下位のチャクラで育まれたエネルギーの、最終的な創造的アウトプットの場でもあります。第二チャクラの創造的な衝動や、第三チャクラの意志の力が、この喉のチャクラを通して、詩や歌、デザイン、あるいはリーダーシップといった具体的な形となって世界に現れるのです。
このチャクラのバランスが崩れると、コミュニケーションに歪みが生じます。エネルギーが過剰な場合、おしゃべりになりすぎたり、他人の話を遮ったり、ゴシップや批判的な言葉でエネルギーを浪費してしまいます。自分の意見を他者に押し付けようとすることもあるでしょう。逆にエネルギーが不足すると、内気になり、自分の意見や感情を表現することを恐れます。言いたいことが喉まで出かかっているのに、飲み込んでしまう。その結果、創造性がブロックされ、他者から誤解され、孤立感を深めることになります。
ヴィシュッダを健やかに保つための稽古は、日常の意識的な実践の中にあります。まず、自分が使う「言葉」に注意を向けること。それは真実か? 親切か? 必要か? アヒンサー(非暴力)は、行動だけでなく言葉にも適用されます。誰かを傷つける言葉、自分自身を貶める言葉を使っていないか、内省してみましょう。
ヨガのアーサナでは、首や肩周りの緊張を解放するポーズが効果的です。魚のポーズ(マツヤアーサナ)や、鋤のポーズ(ハラーサナ)、肩立ちのポーズ(サルヴァーンガーサナ)は、喉のエリアを物理的に刺激し、エネルギーの流れを促進します。また、ライオンのポーズ(シンハーサナ)は、顔の筋肉を解放し、表現への恐れを取り除くのに役立ちます。そして何より、マントラを唱えること(チャンティング)は、ヴィシュッダを直接的に活性化させる最もパワフルな方法の一つです。音の振動が喉をマッサージし、エネルギーセンターを浄化してくれます。歌を歌うこと、日記を書くこと、信頼できる友人に心の内を話すことも、素晴らしい実践となるでしょう。
引き寄せの法則の観点から見れば、ヴィシュッダは「宣言の力」を司ります。アファメーション(肯定的自己暗示)がまさにこれです。あなたの望む現実を、明確な「言葉」にして宇宙に発信すること。言葉は、単なる記号ではなく、創造の力を持つ振動(ヴァイブレーション)です。「私は豊かである」「私は愛されている」という言葉は、その周波数に共鳴する現実を引き寄せるための、宇宙への注文書なのです。
あなたの内なる真実を語ることを、どうか恐れないでください。あなたの声は、この世界が聞くのを待っている、唯一無二のメロディです。ヴィシュッダを開くことは、あなた自身が、あなたという存在の最も純粋な表現者となるための、神聖なプロセスに他なりません。


