「結果への執着」があなたを苦しめる。バガヴァッド・ギータに学ぶ「行為の放棄」と真の自由

自己啓発

ヨガを推奨しております。
それは、ヨガが単なる健康体操ではなく、私たちがこの複雑な社会で正気を保ち、軽やかに生きていくための「心の羅針盤」だからです。

皆さんは日々、何かを成し遂げようと懸命に努力されていることでしょう。
仕事での成功、温かい家庭の構築、健康な身体の維持、あるいはSNSでの評価。
「頑張れば、報われる」
私たちは幼い頃からそう教わり、その言葉を信じて歯を食いしばってきました。
しかし、大人になった今、ふと立ち止まって考えてみてください。
その「報われるはず」という期待が、実はあなたを最も苦しめている鎖になっているとしたらどうでしょうか。

今日は、ヨガ哲学の中でも最も重要で、かつ現代人が最も受け入れがたい教えについて、静かにお話ししたいと思います。
それは、「行為の結果を手放す」という教えです。

 

努力と報酬のリンクを断ち切る

インドの古い聖典『バガヴァッド・ギータ』の中に、ヨガを学ぶ者であれば誰もが一度は耳にする、あまりにも有名な一節があります。

「あなたの職務は行為そのものにある。決してその結果にはない。行為の結果を動機としてはいけない。また、無為に執着してはならない」(第2章47節)

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現代社会の常識からすれば、これは暴論に聞こえるかもしれません。
私たちは「結果」のために「行為」をしているからです。
給料をもらうために働き、痩せるために運動し、愛されるために優しくする。
資本主義社会は、この「投資とリターン(ROI)」の概念で回っています。
「これだけやったのだから、これだけの見返りがあって然るべきだ」という交換条件の精神です。

しかし、ヨガはこの因果関係の鎖を断ち切れと言います。
なぜなら、結果を期待した瞬間に、あなたの心は「今、ここ」から離れ、まだ来ぬ未来への不安と、期待通りにならなかった時の恐怖に支配されるからです。
「もし失敗したらどうしよう」「評価されなかったらどうしよう」
その恐れが、純粋な行為のエネルギーを濁らせてしまいます。
手が震え、呼吸が浅くなり、本来のパフォーマンスが発揮できなくなるのです。

 

コントロールできる領域とできない領域

少し冷静に、事実を見てみましょう。
私たちがコントロールできるのは、「何をするか」「どれくらいの熱量でやるか」という「行為(カルマ)」の部分だけです。
その行為がどのような「結果(パラ)」を生むかは、実は私たちの手の及ばない領域にあります。

例えば、農夫が種を撒くとします。
最高の種を選び、土を耕し、水をやる。ここまでは農夫の仕事(行為)です。
しかし、その種が芽吹くかどうか、日照りが続くか、嵐が来るか、あるいはイナゴの大群が来るか。
これらはすべて「自然の領域」であり、農夫にはどうすることもできません。

現代社会の問題点は、この「自然の領域」までをもコントロールできると錯覚しているところにあります。
マーケティングを駆使すれば売れるはずだ、健康法を実践すれば長生きできるはずだ。
もちろん確率は上がるでしょう。しかし、絶対ではありません。
それなのに、期待通りの結果が出ないと「私の努力が足りなかったのか」「やり方が間違っていたのか」と自分を責めたり、「社会が悪い」「運が悪い」と他者を呪ったりします。

これが苦しみ(ドゥッカ)の正体です。
自分の領域外のことをコントロールしようとする傲慢さが、苦しみを生んでいるのです。
結果は、天候やタイミング、他者の感情、社会情勢など、無数の要因が複雑に絡み合って現れるものです。
それは「神の領域」と言ってもいいかもしれませんし、「宇宙の法則」と言ってもいいでしょう。
結果はあなたのものではなく、宇宙からの「贈り物(プラサード)」なのです。

 

カルマ・ヨガという生き方

では、結果を気にしないのなら、私たちは怠惰になってもいいのでしょうか?
いいえ、そうではありません。
ギータは「無為(何もしないこと)に執着してはならない」とも釘を刺しています。
ここが非常に繊細で、かつ重要なポイントです。

結果を期待しないからこそ、目の前の行為そのものに100%没入するのです。
見返りを求めず、ただ「なすべきこと」として、淡々と、しかし情熱を持って行うこと。
これを「カルマ・ヨガ(行為のヨガ)」と呼びます。

報酬のために描かれた絵と、描くことの歓びのために描かれた絵。
どちらが人の心を打つでしょうか。
「いいね」をもらうために撮った写真と、その瞬間の美しさに感動して切ったシャッター。
どちらが輝いているでしょうか。

結果への執着を手放したとき、私たちの行為は「労働」から「奉仕」へ、あるいは「祈り」へと昇華されます。
エゴ(自我)が欲しがる報酬のためではなく、もっと大きな目的、あるいは純粋な表現として行為がなされるとき、私たちは「ゾーン」に入ります。
その時、行為者である「私」という感覚すら消え去り、ただ行為だけが存在する透明な状態になります。
これこそが、ヨガが目指す自由の境地です。

 

現代社会で「結果を手放す」ための実践

そうは言っても、明日からの仕事で成果を求められるのが現実です。
どうすれば、この哲学を現代の生活に落とし込めるでしょうか。
いくつかのスピリチュアルなアドバイスを、現実的な視点で提案します。

まず、「行為を捧げる」という意識を持つことです。
メールを一通送る、料理を作る、会議資料を作る。
その一つひとつの行為を、誰かへの、あるいは世界への「捧げ物」だと思って丁寧に行ってみてください。
「これをやったらどう思われるか」ではなく、「今の私にできる最高の捧げ物は何か」に意識を向けるのです。
投げたボールの行方を目で追うのではなく、投げる瞬間の指先の感覚に全神経を注ぐイメージです。

次に、結果が出た時の反応を変えることです。
成功しても「私が凄かったからだ」と驕らないこと。
失敗しても「私がダメだったからだ」と腐らないこと。
成功も失敗も、ただ「そういう現象が起きた」という事実に過ぎません。
「ああ、今回はこういう結果として返ってきたのだな」と、科学者が実験結果を見るように、淡々と受け止める練習をします。
一喜一憂しない静かな心(サマッ・トワン)を養うことこそが、ヨガの修練です。

そして、自分を「パイプ」だとイメージすることです。
エネルギーや才能は、あなた個人の所有物ではありません。
あなたは宇宙のエネルギーが流れるための管(パイプ)であり、道具です。
素晴らしい成果が出たとしても、それはあなたを通って何かが表現されただけであり、手柄を独り占めしてはいけません。
「行為は私のものだが、結果は神(全体)のもの」
そうやって手柄を天に返したとき、私たちは重たいプレッシャーから解放されます。

 

終わりに:ただ、踊るように生きる

人生を深刻な「テスト」だと思わないでください。
結果を出さなければ落第する、厳しい試験会場ではありません。
人生は、壮大な「遊び(リーラ)」であり、ダンスです。

ダンスを踊っているとき、私たちは「踊り終わること」を目的にしているわけではありません。
踊っているその一瞬一瞬のステップ、音楽との調和を楽しんでいるはずです。
音楽が終わればダンスは終わりますが、そこに「結果」はありません。
ただ、素晴らしい時間が流れたという事実が残るだけです。

結果への執着を手放すということは、未来という幻想を捨てて、今この瞬間のダンスに熱狂することです。
成功するかどうかは、あとのお楽しみ。
運命という風に任せてしまえばいいのです。
あなたがコントロールできるのは、今、その足を踏み出す一歩の質だけなのですから。

肩の力を抜いて、結果という重荷を地面に置き、この縁側で一息つきましょう。
あなたが今日一日、誠実に生きたこと。
誰かのために微笑んだこと。
その行為の美しさは、結果がどうあれ、決して消えることはないのです。

ではまた。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。