私たちは日々の生活の中で、様々なものを「引き寄せたい」と願います。より良い仕事、より豊かな経済状況、理想的なパートナー、健康な身体。これらの願いは、人生をより良く生きようとする自然な欲求であり、決して否定されるべきものではありません。しかし、この一年間の旅の終わりに、私たちは、最も根源的で、最も見過ごされがちな、一つの偉大な事実に立ち返る必要があります。それは、私たちが引き寄せたいと願うどんなものよりも、はるかに壮大で、はるかに価値のある奇跡を、すでに手にしているという事実です。その奇跡の名は、「生命」です。
少しだけ、科学の視点から、あなたが今ここに「在る」という事実を眺めてみましょう。約138億年前に起こったとされるビッグバンから、星々が生まれ、元素が作られ、奇跡的な条件の重なりの中で地球という惑星が誕生しました。そして、気の遠くなるような時間をかけて、最初の生命が生まれ、進化の複雑なプロセスを経て、あなたの両親が出会い、そしてあなたが、この世に生を受けたのです。この一連の出来事の中で、たった一つでも歯車が狂っていたら、今のあなたが存在する確率はゼロでした。その天文学的な確率を乗り越えて、あなたは今、ここに生きています。
さらに、あなたの内側で起こっている奇跡に意識を向けてみてください。あなたは、意識的に命令しなくても、心臓が正確なリズムで鼓動し、全身に血液を送り届けてくれていることに気づいていますか。一日に約2万回以上も繰り返される呼吸が、宇宙からプラーナ(生命エネルギー)を取り込み、あなたのすべての細胞を生かしてくれていることを、深く感じたことがあるでしょうか。この精緻で完璧な生命維持システムは、人間の知性を遥かに超えた、大いなる叡智によって動かされています。
ヨガの伝統では、この人間の身体を、宇宙全体の縮図(ミクロコスモス)であると捉えます。私たちの内側には、太陽と月のエネルギーが流れ、五大元素(地、水、火、風、空)が調和し、一つの小宇宙を形成しているのです。
この「生きていること、そのものが奇跡である」という視点に深く根ざす時、私たちの人生観は一変します。日常の中で起こる問題や悩み事が、この生命という壮大な奇跡の前に、いかに些細なことであるかに気づかされます。失敗や困難すらも、この奇跡的な生命を味わうための、一つのスパイスのように感じられるかもしれません。
この奇跡を実感するための、最もシンプルな実践は、朝、目覚めた瞬間にあります。新たな一日を始める前に、ただ数分間、ベッドの中で、自分の身体が温かいこと、心臓が鼓動していること、そして、新しい呼吸が与えられていることに、意識を集中させるのです。そして、心の底から、ただ「生きている、ありがとう」と呟いてみてください。
この根源的な感謝の感覚こそが、すべての豊かさの源泉です。私たちは、何かを得ることで幸せになるのではありません。すでに与えられている最大の奇跡に気づくことで、幸せになるのです。この気づきと共に生きる時、私たちはもはや何かを必死に「引き寄せ」ようとする必要がなくなります。なぜなら、自分自身の存在そのものが、宇宙が生んだ最高の奇跡であり、祝福そのものであることを、知っているからです。


