「待つこと」の復権。効率化の果てに見失った、人生の熟成期間について

365days

ヨガを推奨しております。
それは、ヨガが「急ぐこと」の対極にある、「待つこと」の美学を教えてくれるからです。
前回は「時間がない」という幻想についてお話ししました。
今回は、その続きとして、私たちが現代社会で失ってしまった「待つ能力」について、静かに掘り下げてみたいと思います。

現代において、「待つ」ことは「無駄」と同義語になってしまいました。
ウェブサイトの表示が1秒遅れればイライラし、レジに行列ができていれば舌打ちをし、返信が数分来ないだけで不安になる。
私たちは「即時性(Instant)」の奴隷になっています。
すぐに結果が欲しい。すぐに答えが欲しい。すぐに変化したい。

しかし、ヨガのマットの上で、あるいは人生という長い旅路において、本当に大切なものは「即席」では手に入りません。
今日は、この「待つ」という行為に秘められた、積極的で創造的な力についてお話しします。

 

効率化の罠:早送りされた人生

私たちは文明の利器を使って、あらゆる時間を短縮してきました。
洗濯板で洗っていた時間は洗濯機へ、移動時間は新幹線や飛行機へ。
そうやって浮いた膨大な時間を、私たちは何に使っているのでしょうか?
皮肉なことに、浮いた時間で「さらに多くの仕事」を詰め込み、以前よりも忙しくなっているのが現実です。

効率化は、プロセス(過程)を省略することです。
しかし、人生の喜びの多くは、結果ではなくプロセスの中にあります。
美味しい料理は、煮込む「待ち時間」に味が染み込みます。
美しい花は、土の中で種が眠る「待ち時間」にエネルギーを蓄えます。
人間関係の信頼も、共に過ごした「待ち時間」によって醸成されます。

すべてを早送りして、結果だけを求める生き方は、あらすじだけを読んで映画を見た気になるようなものです。
それでは、人生の「味」がしません。
私たちは、待つことを排除することで、人生の豊かさそのものを排除してしまっているのかもしれません。

 

ヨガにおける「待つ」練習

ヨガのアーサナ(ポーズ)の練習は、まさに「待つ」ことの連続です。
身体が硬い人が、無理やり前屈をして手をつこうとしても、怪我をするだけです。
筋肉や筋膜が緩むには、時間が必要です。
呼吸を送り、緊張が解けるのを、ただ静かに待つ。
「早く柔らかくなりたい」というエゴの焦りを手放し、身体のペースを信頼して待つ。

この時、「待つ」という行為は、単なる受動的な停止ではありません。
そこには、深い観察(Observing)と、受容(Acceptance)があります。
「今はまだ、その時ではないのだな」と認め、その不完全な状態と共に居続けること。
これは非常に高度な精神的修養です。
ヨガマットの上でこの「待つ力」を養うと、日常生活での「待てないイライラ」が不思議と減っていきます。
信号待ちの時間さえ、自分自身の呼吸を整えるための貴重なギフトに変わるのです。

 

「熟成」には時間がかかる

スピリチュアルな成長や、人生の転機においても同じことが言えます。
私たちは悩みを抱えた時、「すぐに解決策が欲しい」と思います。
しかし、解決策は外から持ってくるものではなく、自分の内側で「熟成」されて生まれてくるものです。

ワインや味噌が時間をかけて発酵するように、私たちの魂も、闇の中や停滞期(プラトー)を経て、変容していきます。
何もしないで待っているように見える時期も、水面下では大きな変化が起きています。
この「潜伏期間」を省略しようとすると、薄っぺらな悟りや、表面的な変化しか得られません。

「果報は寝て待て」という言葉がありますが、これは怠惰を勧めているのではありません。
「やるべきことをやり(種を蒔き)、あとは宇宙のタイミング(天候)を信頼して委ねなさい」という、究極のサレンダー(明け渡し)の教えです。
私たちは種を蒔くことはできますが、芽を引っ張り出して無理やり伸ばすことはできません。

 

不確実性(カオス)に耐える力

「待つ」ことができないのは、不確実な状態(Uncertainty)に耐えられないからです。
白黒つかないグレーな状態、答えの出ないモヤモヤした状態。
これを心理学では「ネガティブ・ケイパビリティ(答えの出ない事態に耐えうる能力)」と呼びます。

現代人は、すぐに白黒つけたがり、すぐにレッテルを貼りたがります。
しかし、本当の創造性や、深い人間理解は、この「分からないまま持ちこたえる」時間から生まれます。
ヨガや瞑想は、このネガティブ・ケイパビリティを鍛える最高のトレーニングです。
ポーズのキープ中、あるいは瞑想の静寂の中で、私たちは「判断を保留し、ただそこに在る」練習を繰り返します。

 

終わりに:人生の余白を取り戻す

「待つ」ということは、人生に「余白」を作ることです。
ぎちぎちに詰まったスケジュール帳には、奇跡が入り込む隙間がありません。
しかし、あえて空白の時間を作り、何かを待ってみる。
バスが来るのを、お湯が沸くのを、季節が変わるのを、自分の心が決まるのを。
スマホを見ずに、ただ待ってみる。

その空白の時間に、ふと素晴らしいアイデアが降りてきたり、忘れていた大切な記憶が蘇ったりするものです。
効率化という病から回復し、人生の熟成期間を楽しむ余裕を持つこと。
それが、大人のヨガの嗜み方なのかもしれません。

ヨガスタジオは、まさに「待つ」ための特等席です。
何かが起こるのを期待せず、ただお茶を飲みながら、光が変わるのを待つ。
そんな贅沢な「待ち時間」をご一緒しませんか。

ではまた。

 



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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、ENQAN(ヨガ)、JIQAN(内観)、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。