いろんな流派のヨガがありますが、どのように選べばいいですか

Q&A・自己探求

「ヨガを始めてみたいけれど、種類が多すぎて何を選べばいいのかわからない」

ヨガスタジオの受付やカウンセリングで、このような戸惑いの声を耳にすることは珍しくありません。ハタヨガ、アシュタンガ、陰ヨガ、パワーヨガなど、まるでおまじないのようなカタカナの名称が並んでいるのを見ると、途方に暮れてしまう気持ちはよくわかります。

現代のヨガシーンは、例えるなら「ラーメン屋さん」のような状態と言えるでしょう。醤油や味噌といった伝統的な王道から、家系、二郎系、はたまたトマトラーメンまで、あまりにも多彩なメニューが存在するからです。どれが最も美味しく、自分に合っているのかを迷うのは当然のことかもしれません。

しかし、一見複雑に見える流派の森も、シンプルな地図を手にすれば、迷うことなく歩き出すことができます。今回は、伝統的な東洋思想の背景を紐解きながら、あなたにとって最適なヨガの選び方を分かりやすく解説していきましょう。

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すべての源流はひとつ。ハタヨガというお母さん

今、世界中で広く行われている「ポーズ(アーサナ)をとるヨガ」は、そのほぼすべてがひとつの源流にたどり着きます。それが「ハタヨガ(Hatha Yoga)」です。

ハタヨガの「ハ(Ha)」は太陽を意味し、吸う息や「陽」の活発なエネルギーを象徴しています。一方で「タ(Tha)」は月を意味し、吐く息や「陰」の静かなエネルギーを象徴する言葉です。この対極にある二つのエネルギーを調和させ、身体を通して心と気のバランスを整えることこそがハタヨガの本質なのです。

古代インドの聖者パタンジャリが編纂した『ヨーガ・スートラ』が説く瞑想中心の「ラージャヨガ(王様のヨガ)」を、肉体的なアプローチから実践しやすく発展させた歴史的経緯があります。つまり、どの流派を選んだとしても、それはハタヨガという大きなお母さんから枝分かれした親戚のようなものと言えるでしょう。まずはこの基本を知るだけで、流派選びのハードルはぐっと下がるはずです。

 

現代ヨガを構成する3つの大きな流れ

複雑に枝分かれした現代のヨガですが、基本的には「動」「静」「整」という3つの方向に分類すると、頭の中がすっきりと整理されます。ご自身の今の気分や目的に合わせて、どの川に飛び込んでみるかをイメージしてみましょう。

まず、しっかり動いて汗をかきたい「陽」のグループです。ここには、ポーズの順番が厳格に決まっており「動く瞑想」とも呼ばれる「アシュタンガヨガ」や、それを現代的かつ自由にアレンジした「パワーヨガ」が含まれます。また、呼吸と動きを滑らかに連動させて流れるように動く「ヴィンヤサヨガ」も人気を博している流派です。身体をアクティブに動かしてリフレッシュしたい方や、適度な疲労感と高い達成感を得たい方にはこのグループが適しているでしょう。

次に、心を穏やかに落ち着かせたい「陰」のグループが挙げられます。一つのポーズを数分間キープし、筋肉の奥にある関節や結合組織をじっくりと伸ばしていく「陰ヨガ」や、クッションなどの補助具を使い、身体を完全に脱力させる「リストラティブヨガ」がこれに該当するでしょう。日々忙しく、頭も身体も休まる時間がない都会人にとって、こうした静的なヨガは究極の回復ツールとなるはずです。

最後は、身体の正しい骨格ラインを意識する「整」のグループになります。解剖学的な正しさを追求し、ベルトやブロックなどの道具を多用しながらポーズを緻密に整えていく「アイアンガーヨガ」がその代表例です。怪我のリスクを最小限に抑えながら、自分の身体の癖を丁寧に見つめ直したい人に非常に向いています。

 

記号の消費に騙されないために。エゴを削ぎ落とすヨガの選び方

ヨガの流派を選ぶ際、現代の私たちは知らず知らずのうちに「記号の消費」に巻き込まれてしまいがちです。

「おしゃれなヨガをやっている自分」や「最新のトレンド流派に通っている私」といった、外側のイメージを消費してエゴ(アスミター)を満たそうとしてはいないでしょうか。東洋思想では、このような精神的探求を自らのエゴの肥大化に利用してしまう現象を、古くから厳しく戒めてきました。

ヨガの流派を選ぶことは、自分のアイデンティティを着飾るための行為ではありません。本当に大切なのは、その流派の実践を通じて「今ここにある身体感覚」に深く戻り、エゴをいかに減らしていけるかという点にあります。

どれだけ難易度の高いアクロバティックなポーズができる流派であっても、それが他者との競争や、自己満足の道具になってしまっては本末転倒でしょう。ヨガには、与えられた環境や今ここに満足する「サントーシャ(足るを知る)」という重要な教えが存在します。あれこれと新しいトレンドを追い求め、頭の中の価値観や考え方を増やすのではなく、不要なこだわりを手放していく「引き算の視点」を持ってクラスを眺めてみてください。

 

流派の名前よりも大切な、誰から学ぶかという真実

多くの人が「どの流派が良いか」をインターネットや本で一生懸命に調べ、頭の中で比較検討しようとします。しかし、ここでヨガ哲学の最も現実的で実用的な真実をひとつ共有させてください。

それは、「流派の名前よりも、目の前にいるインストラクター(先生)との相性の方が、クラスの質を圧倒的に左右する」という事実です。

同じ「ハタヨガ」や「ヴィンヤサヨガ」という看板を掲げていても、教える先生の立ち振る舞いや、まとう空気感によって、クラスの体験は全くの別物になります。ヨガは、理論を頭で覚える学習ではなく、その先生の生き様やエネルギーを身体を通じて受け取る「直接の体験」そのものです。

ですから、パソコンの画面の前で「この流派は自分に合うだろうか」と何時間も悩み続けるのは、あまりにも時間がもったいないと言えます。どんなに中身を詳しく読んだところで、実際にその空間に足を運び、先生の声を聞き、身体を動かしてみるまでは、何一つ本当のことは分からないのです。伝統的なヨガの学びにおいても、直感を信じて即座に行動を起こすことが何より重んじられてきました。

 

まずは一歩踏み出し、身体で感じてみるというミニマリズム

もしあなたが今、どれを選べばいいか迷っているのなら、まずは直感的に気になったクラスの体験予約を申し込んでみることをお勧めします。行動を起こして初めて、自分にとって本当に必要なものと、そうでないものが明確に見えてくるからです。

私たちは、何もしない状態であれこれと考えを巡らせることで、脳のエネルギーを浪費しがちだと言えます。身体をユルユルに解きほぐし、ただ呼吸に意識を向けるシンプルな瞑想(SIQAN)のように、まずは余計な思考のガラクタを手放してみましょう。

頭で組み立てた完璧な理論よりも、実際に体験して「なんだか心地よかったな」「身体が軽くなったな」と感じる身体感覚こそが、あなたにとっての唯一の正解となります。

ヨガは自分を飾る道具ではなく、自分の内なる静けさと繋がり、人生をシンプルに軽やかにしていくための引き算の智恵です。ぜひ、目の前の小さな一歩から、あなただけの心地よいヨガの旅を始めてみてください。



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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、ENQAN(ヨガ)、JIQAN(内観)、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。